奴隷。
正直奴隷とか好きじゃないんだよね。なんでこの世界には奴隷制が残ってるのかな。でもそれが奴隷を無くすために苦労した人たちの上に立っている現代社会の人間の価値観なんだと言うのは分かる。そもそも世界全体から無くなってるわけじゃないけどね。
田舎の飢えて食えなくて痩せきった人たちにしてみればご飯を食べる為の労働さえ得られないんだ。そうじゃなきゃ皆が飢えるようにはならないはずだよね。
そもそもお金は食べられない。木の実を採るにしても山菜や茸を採るにしても、そんなに簡単なはずがないし、田畑で十分な食料が得られないのだからその人たち皆がそれらを採るために山に登り、刈り尽くしてしまえば、知識の有る無しではご飯は食べられない。そして飢えた人が仕事に群がれば、田舎で仕事なんて無くなる。牛や馬を潰せば次の収穫は更に減るだろう。
そんな痩せ細った人が獣を狩るのはなお難しい。そして飢えて死ぬのは子供からだ。その頃には木の皮さえ食べられて木が枯れたりする。
辛うじて人の食べ物を食べられるなら奴隷でも良いから生き残って欲しいと考える人がいても仕方がない。そんなだから奴隷制が無くならない。
でも、そもそも私が彼らを全員助けられるかって言ったら無理なんだよね。小角族を助けるので精一杯だよ。今、田畑に蒔く種は美味しさより収穫量が多い方を選んでいる。
流石に二万人養うのは無理だし。まあ一度に来るんじゃなくて徐々に増えてるからまだ回るんだけど。森の食べ物は夏なのでまだ増えてるし海産物や湖の魚もたくさんいる。元々採ってた山の食べ物や湿原の魔物はそのままあるし、畑を引き上げる人は野菜を持ち寄っている。
小角湿原の経済は南の開拓のお陰で収穫を増している。都市部から食料を持ち込むと町の物価が上がってそこにいる人たちは苦しむだろう。それは皺寄せしてるだけで問題は解決しない。
せっかくの広い小角湿原でしっかり野菜や米を育てていかないと駄目なんだよねえ。しかしそっちの知識が少ない。悩ましい。
釣りして魚を得るんじゃなくて漁をする。それは最後の手段かな。近海なら他の人たちも獲れるからね。私がそれをする意味がない。それこそ漁の仕方を教えて私は沖合いで魚を捕まえてくるだろう。そして私が漁をして助けていても、私が死んだ時にそれは終わる。
だから長期的に畑や森の資源を増やす方法を見つけて伝えていかないと駄目なんだろう。釣りは繋ぎにはちょうど良いけどね。
日本の食料自給率の低さは貿易で輸入した方が災害や飢饉なんかに陥りにくいからだろう。でもそれは売る物が無くなったらたちまち飢えるよね。小角族に売れる物は、有るんだよね……。でもそれは選べないでしょ。やっぱり湿原の自給率は上げないと駄目だ。輸出できるレベルで。
小魚をまとめて漁で獲るのは提案しても良いかと思ったんだけど、小角族の大きさだと近海の漁でも逆に鮫とかに食べられるだろうね。
現在小角族が減ってる理由の一つに空を飛ぶ魚が存在する事も有るらしい。強い人はそう言った魔物も狩れるが、被害は出てしまう。
したがって海の小魚の乱獲も怖い。私が釣るしかないね！ 釣れなきゃそれは流石にクーラーに入れる。これも対策を作らないとね。
とりあえず考えながら埋め立てた田畑は物凄い面積になっているけど、植える種があんまり無いんだよ。今年の分は仕方ないけど来年の分は収穫量も味もアップさせたい。
連作障害が出る野菜か出にくい野菜かをテストするために畝ごとに何種類か種を植え、収穫が終わったら畝に横向きに何種類か種を植え、相性の良い野菜を探ったり、実際に連作する畑を作ってみたりしてテストはする予定。それは数年掛かるかもね。
こればっかりはインフォメーションさんに頼ってみたんだけど教えてもらえなかった。どうも土の状態が一定じゃないので作物による相性も断定できず、相性の良い所に片っ端から植えると最終的に周りの栄養を吸って育たず適切なバランスとなると今度は全体の収穫が減る。つまりランダムに野菜を埋める手は使えない。どの野菜か決めて植える方がバランスよく作れて、そうなると今度はどれを植えても栄養価が片寄って障害が起こり、それを解消する為に適切な栄養をばら蒔くと、そこまで行くと私しかできなくなるので後の人に残せる技術ではなくなる。
そもそもこのクーラーをくれた神様は私と同じように考えているんだと思う。
助けられなきゃ助からないなら、結局はそこまでの運命なんだ。それでも全く無視する事がない、できない。でも自分を犠牲にする事は許されない。それでは共倒れだしね。
なので地道な研究から見せているのだ。種の良いのを選ぶのは後に残せるもんね。栄養が少なくても勝手に光合成で増えてくれるような野菜を植えるのが一番だ。
そもそも火山噴火とか小氷河期で日照が減って光合成が減り、気温が下がってるから化学変化が鈍足になって収穫は更に減っているのが今の状態なんだろうけどね。
日本だと北の方が食料採れるけど品種改良や温暖化の影響もあるし、本当は暖かい方が良いんだよね。だから温室とか有るんだし。
温室かあ。更に研究する量を増やすのが無理。そもそも私の時間が無くなるしそれは嫌だ。
さて、あんまり気分の良くない事は一度に済ませてしまおう。家を買う為にリート子爵領に行くよ。この小角南の家で出してテレポート……何人テレポートするのか。
テレポート先が人で埋まっちゃうよね。しかも犯罪者。なので安くて広い家を買って犯罪者を出して隷属させてギルドまで歩かせるよ。
犯罪者の隷属は別に。懲役より良いと思う。外を歩けるし。
盾にしてダンジョンはないみたいだ。そんなに強い敵は逃げられずに自分も死んでしまうし、弱い奴隷は意味が無いしね。稼がないと安くないんだから。
さて、家はどこで買えば良いの？ リンヤに聞いてみた。
「冒険者ギルドにも有るけどね。罰金を払えなくて押収した家とか。でも良いのを買うなら商業ギルドに行かないと駄目かな」
「ギルドで土地取引なんてできるんだねえ」
個人で土地を持てない国も有るんだよね。この国はそこまで管理できないのかも知れない。税金は買う時に取られるようだ。冒険者も多いし国境も曖昧で人口管理とかできないか。入った時点で取ってあとはお店とかの売り上げとかで取るのかな？
税金取らないで国家運営もできないだろうし、そもそも魔物とか出たら困るから騎士が必要だし、道も整備が難しい。流通がそもそも厳しいよね。だから商人も売れる所に収納持ちを派遣するし、財産だから守らないと駄目だから冒険者とかに依頼してそこで税金をまた取って、ギルドにそれを委託してるみたいになってるのかな。関所で税金を取ると言うのも有る。山賊が関所を設けたりもするらしい。それを討伐するのに騎士や冒険者が動いたらまたお金が掛かる。
……領主も大変だね。その上に食料を確保しないと駄目なんだよね。腐らせたら駄目だから物納も難しいのかな。いや、領主も収納持ちは確保してるよね。
さて、家を買ったら犯罪者を突き出して奴隷を買って連れて帰るかな。
