確認。
まあなんにもなくても大丈夫だけどこのクーラーについては確認しておかないとね。さすがに私もそんなに頭は飛んでないので、この奇跡を、墜落してもノーダメージな状態を作ったのがこのクーラーなのは分かってるんだから、確認しないとね。
ちなみに重力は……分からないね。体が頑丈になってたりするし魔法的なパワーが働いていたりするかも知れない。
と、いうのも、さっきからやたら体が軽い。ただ重力が低いならそもそも気圧が保たれないと思う。そこも地球と変わらない。こんな地球そっくりな科学条件の惑星、地球のある世界でもそうはないと思う。異世界に地球を用意しましたって言われた方が納得するね。もちろん私のためじゃないだろうけど。そこまで自惚れてない。
さて、……このクーラーか。確かさっきインフォメーションとか言ってたよね。案内所とか受付とか情報とか色々意味がある。日本語で言ってくれたらいいのにね。まあ全部日本語だと気分が出なさそうだけど。サービスいいよね。神様が絡んでない方が不自然だわ。
いや、だから神様が出てこないかなと期待してるんだけど、出てこないね。うーん、このクーラーひとつでなんとでもなるということかも。神様も奴隷じゃあるまいしそんなに一人の人間に至れり尽くせりするはずないってね。
私が神様なら、私が死んだら放置するね。だって神様だし、人間のいうことを聞いたり人間に頭を下げるとか意味が分からない。むしろ消して無かったことにした方が楽だ。ただの人間なんだし。神様はサービス業じゃない。そもそもサービス業は奴隷じゃない。
とりあえずこのクーラーさんに話しかけてみるか。早く面倒を片付けて水やトイレを確保しないと。それにこのクーラーさんが私のチートみたいだし。
「クーラーさん、インフォメーションさんだっけ。もしできるならこの状況を説明して欲しいな。あと、貴女の能力も知りたい」
女の子扱いしてるのはさっき聞こえた声が小さな女の子の声だったからだね。子供の声は男女が分かりにくいけど、明らかに高音だったので女の子と判断した。
反応あるかな、と思いつつ腰に手を当ててクーラーを眺めながらぼんやりと立つ。魔物とか野生の動物とかいたらあんまりボーッともしてられないんだけどね……。
まあすぐに反応はあった。
『スキル:クーラーボックス、こちらはインフォメーションです。現在の状況説明、この星の基礎的な環境、物理条件、そしてクーラーボックスの持つスキルの説明を開始します』
お、サービスいいな。そして私を生き残らせたスキルは私のスキルじゃなくてこのクーラーのスキルらしい。忘れると大変なことになりそうだ。
『この惑星はこの宇宙に存在する幾つかの地球型惑星から選ばれ、主神と呼ばれる管理者が派遣された惑星です。この惑星の全管理権限はその主神に存在します。主神にはスキルの生成や生命の絶滅から恒星や惑星の破壊まで自由権を与えられています』
いきなりとんでもない説明が出たな。その主神さんを怒らせたら世界が滅びるのか。恒星を破壊できる神様に勝てる気はしないな。宇宙に放り出されるだけで人は死ぬからね。
そこからインフォメーションさんの怒涛の説明が始まった。初回サービスでだいたいのことは教えてくれるらしい。今後は必要にならない限り喋らないと言われた。まあけっこうなお喋りみたいだからまた話し相手になってくれそうだけれども。
インフォメーションさんの説明は以下の通りだ。
この世界は宇宙全体を管理する神と、その下に銀河、地球型惑星を管理する神が、人間の中から生まれたデミゴッドと呼ばれる存在から選ばれ、この惑星もその一つであると言うこと。この惑星や恒星を指し示す言語はこの世界にもある無数の言語でそれぞれ存在するので、恒星を太陽、惑星を地球と翻訳する、と言われた。どうやらこのクーラーには翻訳能力があるらしい。このクーラーがないと私はこの世界の言語も分からないようだ。ヤバいな。引きこもってサバイバルスローライフしよ。
よく考えたら言葉が分からなくても私なら平気だわ。物理条件は地球に近いし生物の毒性も地球と変わらないレベルのようだし、適当に木の実とか魚とか食べれるでしょ。毒のある木の実も淡水魚もいるけどね。まあ水も飲めない環境ならそこで死ぬから毒とか寄生虫とか気にしてたら始まらない。食える物を探して安定して食わないとどの道死ぬ。サバイバルは死ぬの前提でないとできない。だから楽しいんだけどね。
これだけ優しい世界ならたぶん行ける。
『それでは、スキル:クーラーボックスの説明を致します』
お、来たな。私のスキルじゃないらしいけどこのクーラー私のだし使えるなら助かる。
……ちょっと聞いただけで半端じゃないチートだと分かったけど。どれくらい半端じゃないかと言うと、死ぬ可能性がほぼ消えた。
ここから下がスキル:クーラーボックスの機能。長いので飛ばしても構わない。むしろ私が覚えきれなかった。
一つ目、インフォメーション。
使用者の求めに応じて機能の案内をし、使用者の命令のファジーな部分を自動的に計算する。自動的に収納、合成や取り出し等が可能か判断し、状況により助言を出す。
二つ目、翻訳。
言語を、書き文字も含め全て日本語に自動翻訳する。逆もあらゆる言語で可能。
三つ目、不壊。
このクーラーは壊れない。汚れない。なお、クーラー使用者(ユーミ)が死亡した場合、このクーラーは自動的に消滅する。健闘を祈る。
四つ目、使用許可。
使用者がこのクーラーを使用できる人を許可、許可する機能の内容を制限可能。
五つ目、召喚、送還。
このクーラーはどこからでも呼び出せ、元有った場所に送り返すこともできる。クーラーボックスが使用者の周囲25メートル以内にない場合、召喚スキル以外は使用できない。
六つ目、収納。
クーラーを中心に半径25メートル以内の物を何でも収納できる。収納した物は情報を記録され、魔力に変換し蓄積される。そのため、クーラーボックスの容量は無限であり、魔力には質量がないため、重さは変わらない。情報は劣化しないため収納した物の時間も停止する。調味料や水以外の食料や生物は収納してある物しか取り出せない。エネルギーの収納も可能だがそのエネルギーを持っていた物質にしか還元できない。エネルギーの方向は変換できる。魔力単体は収納不可能だが魔法、術式は収納可能。ほかの物質の魔力、エネルギーの流用は不可能。使用者が死亡する可能性が高い収納は不可能。危険な収納はインフォメーションにより警告がある。情報だけを収納することもできる。エネルギーの実態がない真空や低温、空間、無を収納することはできない。
七つ目、複製、合成、取り出し。
収納してある物を取り出す。または収納してある素材を合成したものや、クーラー自体の魔力と引き換えに複製した物を取り出せる。生物、食料は魔力で複製できない。食料は調味料と判断される量なら魔力により合成可能。道具などの拡大、縮小、密度調整、改造、調理が可能。ただし、構造のイメージや構成素材の知識に正確さを要する。一度収納してあればそのデータから複雑な分子構成の素材や機械や薬剤や料理などでも情報を参照し、合成できる。その際に素材や調味料を除き、材木や食材などの原材料が必要となる。拾得してない材料も基本は魔力1ポイントで1グラムまで合成できるが、魔力のあるものや高エネルギーの物は別に魔力がかかる。
八つ目、計量。
収納した物の重さや全長を計れる。物質を収納しなくてもその物が持つ情報のすべてを収納できる。
九つ目、分解、抽出。
収納したことのある物をクーラーボックスの魔力により分解できる。既知の場合、特定の成分の抽出ができる。生きている物を殺すこともできる。適宜分割もできる。不要部分のみを削除できる。
十、魔力注入・抽出。
使用者、使用権者からクーラーボックスに魔力を注入でき、クーラーボックスから抽出して他者の魔力を回復する事もできる。ただし収納物の魔力を除いたクーラーボックス自体の最大魔力(一万ポイント)までしか回復できない。収納物の魔力、空間魔力はクーラーボックスにチャージ出来ない。クーラーボックスの魔力は一分に最大値の0・2%が自動回復する。
十一、名前鑑定、ラベリング。
人類が発見して命名していれば微分子であれ収納した物の名前が分かる。その際前世にも存在した物も鑑定され日本語に翻訳される。収納してある未知の物、設定のセットには名前をラベリングできる。その名前の物を合成するように指定できる。
十二、削除。
収納した物の情報を削除する。
十三、ごみ箱。
削除した物を200種まで記憶。取り出せる。完全に削除もできる。
十四、自動設定。
事前に条件を指定し、自動的に収納、取り出しを行うように設定できる。一度使った設定はセットとして登録でき、他の物に適用できる。例えば重力や遠心力、運動能力を奪い対象を空間に固定すると言う設定で石などを固定して、その設定をセットとして記録しておけば、次に別の鉱物や人間や動物にもそのセットを適用して瞬時に空間に固定できる。
十五、表示。
作製可能アイテム、収納物、クーラーボックスの残魔力量、現在の自動設定、セットの内容等をウィンドウを開き表示させられる。
……以上だ。凄い複雑なスキルだな。簡単に言うとほぼ万能の収納ができて加工ができて、事前に設定をプログラミングできる感じ?
これはゆっくり使いながら覚えていくしかないな。
ちなみに前世でこのクーラーボックスに入れたことのある物はデータが存在するらしい。作れるってことだ。
つまり、釣具も分子構成から想像が及ぶか、このクーラーに入れた事がある範囲なら分子単位で素材があれば作れると言うことだ! 有能!
詳しい設定はまとめていますので後程。