淡水鱒釣り。
ブクマ77件になりました。有り難う御座います! 減ってたらどうしよう……。
ヒバシラとシモバシラで何やら揉めごとがありそうだとホタテさんが占い、それを回避する方法と食料の確保を兼ねてヒバシラ、シモバシラの間にある湖に釣りに来た、のだが、そこは難所と言っていい釣り場だった。
とても透明、クリアな水質のオープンウォーターで水中の障害物が少なく、魚がこちらを認識しやすいさえぎる物が少ないポイント。この状況で魚が釣りに慣れてしまうと餌をなかなか食わなくなってしまう。ルアー釣りならさらに厳しい。一日粘るくらいなら視界が悪い朝の太陽が上る直前、朝マズメを狙うか、太陽が沈んだ直後、夕マズメを狙うのがいいくらいだ。
それくらい難しい条件なのである。
「まあ釣れないわけじゃないけど。はい、ホタテさん、これが今回の竿と仕掛けね」
「むむ? またずいぶん可愛らしい……ルアーというやつか?」
「正確にはスプーンだね。魚が見えていても釣れないようなら餌に変更するけど」
鱒釣りで餌を使う釣りから始めるのは昔から王道ではあるんだけど、やっぱりまずは手返しのいいルアー釣りがスポーツとして楽しめる。
ただ、凄くスレやすいという危険はあるんだけど、逆に言えばチャンスが少なくて楽しめる釣りなのだ。
今回は鯵を狙ったときと同じくナイロンラインは大物に対応して太めの1・5号で行くよ。150メートル巻きのスピニングで。いや、魔力で糸が強化されるといってもそれを魚が察知するので太めのラインがいいんだよね。この世界の魚はことごとく大物の魔物魚だし。
そしてルアーは虹鱒釣り用小型スプーンだ。小さくて丸く、色もピンクや黄色と可愛らしく女の子向きで、魚の食い付きもいい。これとクランクという玉のような形のルアーをいろいろ変えながら使ってみる。
せっかく難易度が高い釣りなのであの手この手を試してみたいところだ。駄目なら餌釣りにも逃げられる。虫餌とかだけどね。
淡水で釣りをするなら練り餌の釣りも楽しいけど、浮きを出してひたすら待つのが苦手な人は長い渓流竿で手返し良く虫餌で釣りすると楽しめるよ。
まあまずはルアーや毛針から試してみたいよね。餌に触らなくていいし、純粋にテクニックで釣るのが楽しいからね。
さて、竿を軽く横に振りかぶりサイドスローで低空をはうようにスプーンを投げ込む。竿の振り方はいろいろあるんだよね。斜め上からとか下からのキャスト方法もあるよ。
狙いは数少ないストラクチャーである岩場の後ろの影を縦に横切るように通す。隠れている奴がしめしめとかぶりついてくるのを狙う。
低空から緩やかに着水させ、少し沈ませて棚の真ん中辺り、つまり魚のいる層のだいたい真ん中辺りを狙って通す、と、来た! ぐぐんと竿先が引き込まれ、一気に根本近くまでしなる!
「うおっほ、いきなりなのだ、流石なのだ!」
「たまたまだけど有り難う! やっぱり大物!」
本当にこの世界は私を飽きさせないね! 大物来たよー! 2メートルはあるね。伝説の魚タキタロウみたいなサイズだよ。魚の種類としては……トラウト系なのは間違いないね。
タキタロウは未だに存在が正式には確認されていない幻の魚だよ。大きなイワナのような形をしているという。イワナは淡水魚の中でもよく釣りのターゲットにされる黄色っぽい黒色で斑点がある鮭の仲間の小魚だよ。30センチくらいのが釣れてくることもある楽しい渓流のターゲットだ。
今回釣れたのはブラウントラウトの系統だね。ブラウントラウトは湖などで釣れる虹鱒の仲間だよ。大きな魚で珍しい魚だけど釣りのターゲットとしては憧れがある。鮭のように海に戻るのはシートラウトというらしい。
鱒の仲間の魚は陸封型と呼ばれる物とこの降海型と呼ばれる物がいる。湖などにいるのはこの陸封型が多いよ。海まで帰っていってまた川に戻るのが降海型だよ。
さて、綺麗なクリアウォーターを魚が水を割るように飛ぶ。エラ洗いだね。魚がルアーを外そうと水の上に飛び出してきて大迫力、だけど油断していたら逃げていくよ!
浅瀬を走るように泳ぐ魚の姿と水しぶき、空中を踊る魚が美しい!
糸のテンションを緩めないようにロッドでコントロールしてやるのが外されないコツだよ。ピーンと張って力も入りすぎない状態を保ってやるんだ。
さあ、観念してね~。はい、ホタテさんお願いします!
「タモさんタモさんなのだ! 大きいのだー!」
「よおーし、大きいね。2メートル数十センチで100キロくらいはあるかな?」
異世界ヒャッホーだね。日本じゃまず釣れない大物が当たり前のように釣れてくるよ! 人間より大きい淡水魚はなかなかいないからね。全くいないわけじゃないのが凄いけど。アリゲーターガーとかピラルクーだけどね。
日本の淡水で釣れる魚で2メートルを超える可能性があるのはイトウとかソウギョ、アオウオと呼ばれる魚だね。イトウは鮭の仲間でソウギョ、アオウオは鯉の仲間だよ。海は繋がってるからわりとなんでも釣れる(釣れない)。
こう言う大型魚が大きくなるまでには何年かかかるので釣り人が増えると大型の物に出会いづらくなるんだよね……。本来はそれだけ難しいってこと。いやあ、感動するね。
「わ、我も釣るのだー!」
「頑張ってね。岩とか藻の影に隠れてるみたいだよ」
「ユーミは大物を釣って余裕なのだー」
実際一匹揚げて余裕が出てくると続けて釣れたりするよね。大きいのが釣れると他の魚は逃げるから一旦場所を変えよう。暫くすると戻ってくるよ。
ウィードで魚がかかっても水草に巻き込まれると危険なので手早くロッドを倒して一息に糸を巻き、魚を手前に引きずりだそう。戦うのはそれからだ。
次に私がそのウィードから六十センチサイズをゲット。なかなかにいい引きだった。
そしてホタテさんが大物をかけた! 竿がぐぐん、としなってるよ! 大丈夫? ホタテさん体重25キロもなさそうなんだけど、引っ張り込まれない?
しっかり踏ん張って身体強化とか風魔法で体を支えているらしい。釣りをしながらなのに凄いね!
「おっと、タモさん!」
「南無三!」
おおっと、これもまたメーター級だ! 1メートル80センチはある、ホタテさんの方がミニチュアにみえる大型だよ!
「あがった!」
「やったのだー! 大物なのだー!!」
釣り上がった大物を前に二人で大喜びした。大きいのは嬉しいよ! 引き込まれそうになるけどね!
「ホタテ様……?」
んおっと、誰か来たようだ。本来の目的を忘れるとこだったよ。いや、釣りも本来の目的だけど!
鮭とほうれん草のパスタを食べたいですね。鮭って炭水化物と合いますよね。カマは臭いに気をつけて。