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宰相様。

 リッタ王子様はいきなり小角湿原までの領有権を持ち出してきた。


 これは困っちゃうよな~。リンヤはどう出るのかね?


「一当てしないとダメかしらね」


「(確かにそう言う手もありますが)他にも手段はあると思われますが?」


 ん? ちょっぴり戦争する、とリンヤが言ったのに対してリッタ王子はするりと無視して、手段?


「……僕としては大軍が入れもしない小角湿原の領有(それ)を認めたところで経済的損失はほぼないわけですが、領地としては面積が広大ですし国家としての面子はありますからね」


 まあそりゃそうだ。でもなんか認めてくれる方向で言ってる気がするな。どういうことだろ? 気配だけ見るとガツンと利益を上げて見せるって姿勢なんだけど、これは王子様だから?


 外交で損失だけ出すとか無能もいいとこだしそれで私たちに敵対するかといえばそれも損失と考えてるわけね。


 そうして見ると双方の要求はいきなりガツンと踏み込んでる感じなのか。ここから譲歩して、みたいな思惑があるんだろうね。


 こちらとしては侵略がなくなる以上の要求は本来ないけど、いきなりそこから要求すると話が進むうちに、そこからさらに譲歩しなくちゃならなくなるからね。強気でいくのが外交交渉の基本ってわけね。


 龍鱗川沿岸は(リート)側の開発は全くされてなかったからむこうとしたら私が開発するなら貿易もできるだろうし良しって感じのはずだよね。私の開発力も切り札になるかも。


 ついでにリンヤは武力行使もあるよと言ってる。Sランクは一軍に匹敵するというのがこの国での正しい感覚なんだろうか。個人の武力格差が大きいんだろうね。小角族も今まで領地を守ってきた戦力はあるだろうし、その上で私たちが二人して敵対すれば十分に一当てはできるのか。


「実力を示す方法は戦争ばかりではないでしょう。そもそも貧しい我が国の望んでいるのは食料の自給ができる広大な領土ではありますが小角湿原はそういった意味での旨味が少ないですからね」


 彼らとしても私たちは敵にするより今の体制で、冒険してダンジョン資産をガッツリ持ち帰ってもらった方が美味しい。なので積極的に敵対はしたくないし彼個人としてはむしろ協力したいという姿勢が見える。


 その上で彼には最終的な決定権がないので、多少不利な条件を国に持ち帰って一旦蹴ることでこちらの譲歩を引き出そうとするだろう。なのでこちらが多少欲張る形で相手にもメリットがある形で終わらすのが今回は双方にメリットがあるね。ウィンウィンってやつだ。こちらが狙うのはヒキワケだね。


 負けてるとこでヒキワケてもメリットないね。外交でメリットありませんでしたなんて言って帰ってきたら怒られそうだ。姿勢だけでもノーは言うよね。こうしてみると外交って面白いな。リンヤ宰相も頑張って最初に見得を切ったわけで、なかなかにやりおる。


 でもこの少しのやり取りで分かるけどこの美ショタは典型的な腹黒王子様だね。この世界は実は乙女ゲーで、ヒロインとかがいるのかしらん? 私はヒロインでも悪役令嬢でもなくて、どう見ても攻略対象だ。泣いてなんかいない。


「ダンジョン資産ももちろんありますがこちらは小角族との交渉権、そして小角族の持つ取引ができる商品の提示もできます。食料品もありますよ。米などを中心に数年で貿易に当てられる用意があります」


 お、逆にリンヤが小角湿原をこちらが領有するメリットを出した。これは私の開発力を当てにした提案だけどね。


 むこうにへそを曲げて侵略されても私たちが逃げたら手に入らない大きなメリットだ。上手い手だな。こちらも貿易なら損失がない。ウェルテクス大陸では共通通貨を使ってるから為替による貿易不均衡も起こらないし。小角族の商品(・・・・・・)という切り札もあるよと。


「それほど大きな力がありますか……」


「こちらは御使い様ですので、オープンにできない力をお持ちなのですわ」


 お、私を推してきたね。この段階、私が生きてここにいるうちに最大限力を引き出せばウェルテクス大陸全体のメリットとなる。そうなれば北のノーゼリアとの戦争に一応の決着の形をつけることもできるだろうね。


 うーん、チートパワーで侵略成功とか考えてる私よりよっぽど穏やかにいろいろまとめてくれそうだぞ。外交面白い。この狭いテーブルの上で凄いパワーが動くんだね。


 もちろん結果は私のやる気にもかかってきた。この引きは私に当てているのかも。リンヤ宰相も切れてるな。そうなると私が発言しないと駄目か。


「開発は当方がやりますが、面倒なのでやる気が出ないと大した結果は出ないですよー」


「あら?」


「ほえー」


 ん? リンヤさんリッタさん、その反応はなんですか? 脳筋ぽい私は話についてきてないだろとか思ってました? ちょっとは考えるよ?


「私のスキルには貿易や開発に使える莫大なメリットがあります。ですが私はこの世界で遊び倒したい。積極的に仕事をする気はありませんので(あらかじ)めご了承を」


(あら、上手いわね陛下)


(気分次第と上から来ましたね。しかもこの話を躱すのもこちらにメリットがない。上手いというか彼女のメリットが予想より大きいんだな)


 ん? 二人してなんか考えてるぞ。これはいい手を打ったかな。実際私は好きなことしかしないよ。責任? 知るか。最悪小角族を切っても私は悪くないしなんもデメリットないからね。そういうスタンスは見せておこうかな? あ、もちろん切る気はないけどね。


「どちらにしても私がこの地に来たメリットがないなら去りますよ。追ってきても殺してもそちらにメリットはないですけど逃がすと困ると思いまーす」


「言い過ぎよ陛下」


「いや、ごもっとも。しかしその開発力とやらは見せていただかないといけませんね。こちらから外交官を二名派遣してもよろしいでしょうか」


「その二名とは?」


「僕と、兄の一人を」


 うわあ、踏み込んで来たあ。いや、私が言い過ぎたのか。リンヤさんとしては私のメリットを控えめに言って相手方を混乱させたかったのね。それを私が踏み込んだ結果向こうも踏み込んで来たよと。まあでも外交官受け入れくらいならメリットの方が大きいよ。私のスキルって対処できないレベルの最強スキルなんだしね。


 なんかそれを背景にしてると思うと茶番ではあるんだけど、このやり取りの面白さよ。あんまり私は踏み込まないのが正解だったかも。


 リッタ王子様の出方が気になるね。彼の方を向くとなんか顔が赤いよ?


「僕と、兄の一人をと申しましたが、僕一人が……(お嫁に、じゃなかったお婿に)」


「それは飲めませんので」


「ですよね。うん、これは僕が言い過ぎました」


「ですが外交官受け入れは許可します。陛下の力を一部お見せすることもできますよ」


 ん? なんか今不穏な台詞が聞こえたような。リンヤが止めたけど。


 それにしてもリンヤ宰相、私に力を見せるなとか言いながらガンガンその力で殴る気満々ですがな。






 釣りの話はもうすぐです。




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