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釣りニート爆誕。

「ぬおおおおっ、めちゃくちゃ引くううううぬぬぬ!」


「やったなニート」


「ニート言うなし!」


「やったねニート!」


「お前も言うなし!」


 この世界だと魚を釣ったり魔物を獲ったりできればニートも立派な働き者になるのかな。食べ物を確保できる人なんてこの飢えで荒れているような大陸では優秀なうちに入るんじゃないだろうか?


 実際遊んでるだけだけどね。しかし、カツオノさんはずいぶん大物をかけたようだ。ビギナーズラックは本当にあるんだよ、釣りの世界って。プロとか上手い人は魚がいる所を狙うから魚がスレてる。初心者はその辺り適当だから魚も油断してしまったりするんだよね。


「おっと、タモさんと偏光グラスセット。竿を使ってこっちに頭を向けるんだよ」


「ぐぬぬぬぬぬっ!!」


 そう言えばこの人も一応身体強化や道具まで強化するように魔力を使っているね。ニートだけど無能ではないな。偏光グラスかけてあげよう。見た目はちびっ子ギャングだ。アジさんにもかけてギャング三人組。(ねえ)さんとか呼ばれそう。


 おお、立派なナマズだ。名前鑑定、腹黄黒大鯰(ハラキクロオオナマズ)だって。背黄青鸚哥(セキセイインコ)みたいな? 1メートル50センチ超えてるから50キロくらいありそうだ。二百人で食べてもおかず一品になるかも。二匹も釣れたら十分なサイズだ。なかなか釣れないとは思うけどね。この世界ならけっこう釣れるからなあ。


 よし、タモに入った。重いしギリギリだったけど。


「お、おお、釣れたのか?」


「ナイスフィッシュ。しまっとく?」


「あ、ちょっと! もっと見せてくれよ」


 分かる。初めて大きいの釣るとめちゃ感動するよね。魚の顔って怖いけどじっくり見てしまうんだよね。鱗とか見すぎて夢に見てしまったりするし。あれは怖い。


 でもまた釣ってしまうんだなあ。コイに落ちたように。これはナマズだけど。釣り人のお約束である。


「オレよりでけえな」


「これでカツオノも英雄」


「流石にそりゃねえだろ。まあこれで働いたな!」


「ただの釣りニートだよ?」


「ええー。働いたことにしようぜ」


 まあなかなかいい食糧だよ。もう少し釣れば立派に漁師だね。


 その後、どうも釣りにハマったようでカツオノさんは川を睨みながら北上していく。私は堤防を斜めに設置して川の西側に水が流れて来づらい構造にしていく。日本の大きな川で見られるやつだ。霞堤とか信玄堤って言うらしい。歴史に詳しくないからあれだけど、武田信玄が考案したらしい。洪水になったときに堤が二重になっててさらに水が逃げる仕組みになっていて、逆に洪水が終わると速やかに水が逃げる。デメリットは土地をかなり使うとこかな。対岸は人が住んでないようなので勝手に小角湿原側だけ塞がせてもらう。


 水害が起こって攻めてきたりはしないよね。まあこんな人工物見たら逃げるかもしれないけど。


「あいつのスキルどうなってんだ……?」


「カツオノと同じこともできる」


「あん?!」


「ユーミはスキルを恐れない」


「……けっ、昔のことなんか知らねえだろ。ガキのくせに」


「カツオノはニート」


「やかましい! 今日から漁師だ」


 なんかフンフン鼻息を出しながらカツオノさんがずんずん進んでいく。あ、落ちた。流されてるな。こっちまできた。踏んでみよう。


「助けろよ!」


「いや、足着いてるし」


 まあ水気だけ抜いてあげよう。お、驚いてるな。


「……いいスキルだな」


「私の力じゃないけど」


「……。そうともいうか」


 ん? よく分からないがなにか納得しているようだ。まあニートにはニートの事情があるのかもな。私にはどうでもいいけど。私もニートだしね。


「ビール飲む?」


「お、いいな。……んぐっ、うめぇ」


「竿を離さなかったのは立派だよ」


「あん? お、本当だ。ちょっと釣りにハマっちゃったかな!」


 離さなかったのは別の理由な気がするけどね。自分でもなんとかしたいとは思ってるんだろう。……なにもしないのは暇だからね。


「よし、じゃあ私も一匹揚げとくかな」


「そんな狙って釣れるもんかよ?」


「もちろん狙うけど、釣りは運も大きいからね。魚が好きな場所だから魚がいるとは限らないし」


「そういうもんか」


 そう、実力だけで上手くいくことなんてないからね。実力がないなら尚更だけど。さて。


 深い川で水の流れる量が多く、魚は大きくても流されるだろう。こういう川では魚は底や岸に近い場所、流れを遮る岩などの影に潜んでいることが多い。……多いってだけだけどね。魚がいる保証はない。


 さっきカツオノさんが釣ったのはたぶん川の中の地形が少し盛り上がっているか逆に深くなっているか、要するに坂になっているところに着いていた魚だ。小さい魚が流れてくるのを待っていたのかもしれない。遠投はしなくていいようだ。


 流れがまあまあ速いんだよね。大きな川は緩やかに流れてるイメージだけどここは流れが速い。雨が上流では降ってるのかもしれない。そういう雨の前後は魚の食いがいいんだよね。岸辺に餌が多くなるし集まるから。


 岸ギリギリは浅いし泳いでないだろう。少し沖からゆっくり流してみよう。手前から下流に流す感じで。水は濁ってるから魚影は見えないな。風が強い。少し寒いから魚もあまり動かないかもな。


「一流の猟師の目をしている」


「おう、こいつは本物だな」


 釣れないと本物もないんだけど。来ないな。スレてなくても魚がいないと釣れない。ポイントを変えるか、なっ!


「来た! さかな!」


「おおっ」


「やったか!?」


 まだやってない。デカいの来た! 重い! ドラグ締めないと、よし。


 うお、それでもギリギリとドラグを鳴らして魚が走る! 川での釣りも流れに逆らうと糸の負担が増す。そして川魚は流れに逆らって生活しているので小さくても力が強くサイズ以上に引いてくる!


 重い!


「くうう……よくこれを揚げたねカツオノさん!」


「いやいや、オレの釣ったのよりデカくね?」


「タモ、タモさん持つ」


「お願い! うおー!」


 めちゃくちゃ引くぞ! わかってたけど川魚で大物ってめちゃ強い!


 草魚とか鯉がこんな引きするよね。昔、川でルアー釣りしてたら鯉に糸を切られたことあったけどそんな感じ! 重い!


「寄ってきた」


「ってそのタモで入るか? 何メートルあるんだよ! でけえ!」


 うおー、小角族くらい飲み込みそうな怪魚だ。この世界では普通サイズだったり? 5メートルはあるよ? サメ?


 川でもサメが釣れることはあるけどこれは鮫肌じゃなくて鱗がハッキリしてるから鯉の仲間っぽい。草魚とかピラルクーのたぐいかもしれないけど。寄ってこない。重いし。うーんうーん。


「なんか引っかけるもんないのか? アジの網じゃあがらんぞ!」


「なんとかあげてみる。手前に向けて流れに任せたらいけるはず……。最悪堤まで引っ張る。糸が切れなかったら」


「もっと魔力込めろ! お前ならできるぜ! アジ、素手だ、素手でいけ!」


「分かった」


 スキルで回収したら終わりな距離だけどそれは負けた気がする。釣り理論だね。楽しまないと、この苦戦を!


「よし、こっちこい」


「うおっ、暴れるな!! ブハッ!!」


「もう少し、掴まえた!」


 おお、アジさんが口を掴まえて引き上げてくれたよ。なんか食べられてるように見えるサイズ差だわ。


 よっしゃ、大物!






 読んでくださり有り難う御座います。ブックマークや評価をお待ちしています。




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