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小角湿原。

 たしか三話目。



 小角族が暮らす小角湿原は、東に大河川の龍鱗川とグリフ丘陵地帯、西に水牛草原と大蜜蜂の森、南に小角浜と南海、北にノーゼリア火山帯がある、大湿原地帯だ。上流に当たる北が水捌けのよい火山灰の土壌である上に下流の土が水捌けの悪い粘土質の土であるために一度に流れた水があちこちに自然の湖沼を作り、湿地帯を形成している。


 江戸時代より前の関東平野に近いんだろうか? あんまり歴史は詳しくないなあ。まあ治水と埋め立てで土地を変えていかないと駄目なのは間違いないか。水路をたくさん作れば防衛にも向くしね。


 小角族は戦乱になれば狩られることもあるという。それは許せない。今一番に怪しいのは東のイストワール王国のラグラ男爵家だそうだ。大河と丘陵地帯を挟んでいるが小角湿原に接しており、過去にも小角族狩りをおこなっている。


 そのときはラグラの南のリート子爵家が小角族との取引を理由に介入したようだ。その際にラグラ男爵家の北、マーティス伯爵家がさらにそれを止めようとしたが当時の伯爵が死亡したらしい。百年ほど前の話らしいけど、その頃からリート家とマーティス家は睨みあっている。小角族にはいい迷惑である。


 なので防衛は北東側が大事らしい。相手は南の伯爵家だけど位置的には小角湿原北東側がマーティス領、ラグラ領に近いようだ。イストワール王国はかなり大きい国みたいだね。そのさらに北で辺境伯家を挟んでノーゼリア王国と戦争しているらしい。


 民はどこも飢えているよ。だから戦争しているんだけどね。経済や農業改革でどうにかできるならしているってレベルらしい。流通は魔物に遮られるし、とにかく寒い。長寒期とかいう、小氷河期に入ってるようだ。食べる物を領民のレベルで奪い合ってるものだからどうしようもない。足元で喧嘩される貴族たちも実はいい迷惑なんだろうね。


 領民が戦する時代じゃあ平和を訴える人がいないわな。戦わず食べなくても争って食べてもどちらにしても死んでしまうんだから、生き残れる方を選ぶ。そりゃそうだ。


 品種改良なんて簡単なはずもなく、農地改革もまずは領民が飢えて働けない。ない袖は振れない。それこそチート主人公でも現れないと駄目なんだろう。


 私が戦争を止める? なんで? 戦争を止めるために命を賭けろ、とか言われるなら一人で生きてくよ。普通の判断だと思うけど。他人のために生きていく理由なんてないでしょ。そういうのは自分だけ綺麗な綺麗事だと思う。関わった人は私だって助けるけど。安全圏からご飯を送って戦争を止めろといってもたぶんその軍隊はこちらが豊かな土地だと思ったら攻めてくるよ? その食料を兵糧にして。


 時代が現代日本とは違いすぎる。法整備もできてないし。私がこの時代のイストワール貴族に転生してたら逃げ出してたね。それで小角族とスローライフする。今と変わらないや。


 まあそんな周辺状況をお酒を飲みながらブリ婆ちゃんとホタテさんに聞いてる。


「梅酒、美味いのう」


「魚の骨せんべいに合うのだ」


「なんと、しゅわしゅわ梅酒もあるのか!」


「小角族は平和だねえ」


 思わず呟いてしまう。まあ狙われてるんだから平和でもないだろうけど。ちなみに冒険者は肉を獲ってきてくれるからどこでも人気の職業らしい。地球だと大抵の宗教で狩人は命を奪う職業だと嫌われてたけど、この星では天神様が狩りの神様らしい。狩り推奨世界。


 だいたい草食動物を狩った方が人間の食べる物は増えるんだから老いた草食動物をガンガン狩る方が絶対豊かになるんだけどね。子供も生まなくなった草食動物が食べてしまう木の実とかを人間が食べれば、お肉も食べられるしかなりお腹ふくれるのに。保護すべき動物と間伐するように狩るべき動物はいるんだよ。現実問題として、平和じゃ食えないんだよね。


「鹿のはんばあぐ美味いのだ! 甘いソースがいいのだ!」


「にんにくが効いてるからカサゴの唐揚げも美味いのじゃ。酸っぱいしゅわしゅわな酒がスッキリしていいのう」


 小角族は平和だね。まあ美味しい物を食べられたら幸せだよね。それができないのが今のこの世界なんだけど。さっきから小角族の皆さんが二人を恨めしそうに見ているよ。複製で作ると品質が少し落ちるんだよね。冷たいし。クーラーだと熱を加える調理ができないや。一度揚げないと。落としてそのエネルギーを熱量に変えればいいか。


 ほかにも何人か女の子(私より年上)に調理してもらおう。植物油もなかなか手に入らないよね。ラードとか牛脂は採れるけど臭そう。濾すなりしないとね。他に道具がないならこの脂は灯りに使うんじゃないかな。鯨の脂とかいい燃料だから昔アメリカが鯨を狩りまくったんだよね。鯨保護とかその時代じゃ笑い話だよ。


 何故かアジくんとしらない人がテーブルに座ってホタテさんたちの唐揚げとか横取りし始めた。


「こりゃ、カツオノ! 仕事もせんくせに食うな! 飲むな!」


「婆ちゃんもしてないじゃん」


「儂は薬とか作って売っとるわ! 無職と一緒にするでない!」


「ニートだって生きてるんだ!」


 ニートって……。『翻訳しています』やっぱりね。まあ無職なんだろう。転生したら本気出すかな? たぶん出さないだろうね。私も前世からニートっちゃニートだし、今もやりたいことしかやってない。釣りしたりは完全に趣味だし、街作りも半分ゲーム感覚だし。ニートは生まれ変わってもニートだよ。


 これを仕事って言えるなら幸せなんだけどね。結局ほかの人にメリットがあると仕事と言われるんだろう。私は好きなことしかしない。小角族を愛でたいから防衛とか考えてるだけだし。


「お義兄様、帰りますわよ」


「うげえ、アカ! まだオレあのしゅわしゅわな酒を飲んでな……ギャアアアアッ!!」


「グッサリグッサリ……」


 なんかアカさんと呼ばれた女の子(推定年上)が凄い威力で小角グリグリしている。こ、これは小角グリグリを上回る必殺技?!


 名付けて小角グッサリ。いや、カツオノ少年(推定年上)が頭から凄い出血してるんだけど大丈夫? あの丸い角でも出血するほどダメージを出せるのか。ブリ婆ちゃんとホタテさんが白目を剥いてガタガタ震えている。……アカさんは怒らせない。私覚えた! 危機回避のために唐揚げとライムチューハイを生け贄に捧げる。


「ま、まあまあ、アカさんもどうですか?」


「申し訳有りませんいただきます」


 アカさん、自分も興味あったのね。その後、アカさんの旦那さんだというエボシさんも来た。まあ皆年上。てか180才とか200才。エボシさんは大工さんらしくて今は開拓について相談されている。そもそも大工っていっても小角族の場合は柱を一本建ててテントを作る以外は高床式の蔵を作るくらいしかしていないらしい。なので私の建ててる家が珍しいみたいだね。


 この辺りは洪水があるので高床式の蔵や建て替えやすいテントが中心になるらしい。原始時代に近いのかなぁ。


 この辺りで一番大きな川、龍鱗川が氾濫するらしいのでそちらに堤防を設けた方がいいのかもしれない。


 その川で何が釣れるのか興味ある。亀とかワニじゃないといいけど。……食えるけど?






 読んでくださり有り難う御座います。


 昨日異世界転生ファンタジーランキング二百話に載る夢をみました。今は圏外ですが皆さん有り難う御座います。




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