クッション作れない問題。
夜にも投稿します。
森にはホタテさんの付き人?アジさんが着いてきてくれることになった。皆小さいのに私より年上なのなんなの?
ホタテさんはなんかにやけてたけどさすがにこんな小さな子に手は出さないよ? 年上だけど。
森の中に入って【セット:採取スキル】を起動する。内容は環境、生態系を破壊しない範囲で植物を収納。土は道路や建物、木を荒らさないように、同じ場所では一度だけ地表から1センチを収納。鳥の卵を生態系を壊さないだけ収納。あとは……あれを収納しておこう。たぶんいるはずだ。
このセットで採取できない物もあるかなあ。キノコとか木の実は収納できてるんだけど。動物素材はどうするか。いや、釣り餌になるあれは収納してみるんだけど。
そもそもスポンジの代わりがないんだよねえ。ベッドとかソファとか作りたいのに。いや、私だけなら普通にスポンジとか化学繊維とか綿とか作るけどね? 小角の人たちが自給自足できないと駄目なんだよね。これ大事。
藁とかそば殻とか籾殻とか……紙とか?
うーん、クッション性の高い物って何があるっけ? 人工の繊維以外だと羽毛や綿しかないのかな。布とか使えなくはないだろうけどすぐにへたれそう。なんかあればいいのに、魔法のある世界なんだし。
「ふわふわモコモコした素材を大量に採れないかなぁ」
「あるぞ」
「マジで? 名前は分かる?」
「綿玉キノコ」
「キノコなの? 大丈夫なのそれ」
「服に使う」
「うーん、使えそうかも」
てかアジさんあんまり喋らないね。いいけど。森の中は静かに歩かないと獣とか出るからね。出ても倒すけど。ちなみに蛇とか虫は避けてます。30メートルの蛇とかいそうだけど。切断して調理してやる。
わりと美味しいんだよね、蛇って。臭うことあるけど。食べるとこ少ないからわざわざ狩らないけどね。
鳥とか猪でたくさん肉が取れるのは収納していこうかなぁ。魔物の猪とか普通に大きいだろうし。オークとかゴブリンは収納して削除しようかな。そう言えばまだ魔物らしい魔物には会ってないや。ほとんど魚です。トカゲは食べたけどね。
「何か美味しい動物とかいるかな?」
「たくさんいる。緑大鹿、あいつ」
「お、毛並みが緑の鹿だ!」
第一お肉発見。いや、その表現はおかしい気がする。でもまあ食べられるなら狩ろうか。アジさんが弓を構えてるけど手で制する。アジさん鉈みたいなナイフとかも装備してるし鉄の槍も持ってるね。データもらっておこう。私は硬い木の槍を使うけど、形はコピーさせてもらおう。
さて、【セット:隠密スキル】です。音、臭いを収納して消して、姿も透過するように光を収納、取り出し。ほとんど完全に姿を消して……魔力は収納できないけどね。鹿にバレなきゃいいや。私が消えたのでアジさんは驚いたようだけど、身動ぎもしなかったのは狩りに慣れてるからだろう。
私は鹿に近付いて木の槍で……仕留めたりしません。収納。血抜き。分解で部位ごとに分けたら熱も冷ましておこう。鹿の解体は爺ちゃんに教わった。
「鹿、消えた?」
「これ。さっきの鹿のモモ肉だよ」
「?!」
鹿モモ肉を足の部分を持って取りだす。お、冷静そうなアジくんもさすがにビックリですか? やってやった。あはは。
「……」
「モツもあるよ」
モツも出す。ちょっと素手で持つのはキモいので収納。汚れも残さない。
「御使い様、人が悪い」
「ユーミって呼んでね~。御使いってなんかイヤ」
「分かった」
ふふーん。アジくんビックリさせてやった~。とか思いつつニヤニヤしてたら小角グリグリされた。痛い。
「だいぶ木も伐採できたかな。おや、波の音」
「森を抜けた」
バッサバッサと木を引き抜きながら、かなりの距離を歩いていたようだ。白い砂浜が見えている。海水を少し汲んでから帰ろうか。他に採っておく物もなさそうだ。植物は薬草や山菜や野草や果物やキノコ等々、大量に採れている。
「帰るのか」
「うん。なんか食べられる動物がいたら教えてね?」
「分かった」
鳥でも鹿でも猪でも牛でもトカゲでも、何でも獲れるからね。簡単収納です。もう少し色々採らないと二百人の小角族をお腹いっぱいにできないかもなぁ。群れが食べていくのは大変なんだなぁ。私一人なら余裕なんだけど。まあ皆、自分の分は確保するか。足りなければヒラメも磯鯛も残ってるし。
「ん、大物の水牛を獲ればいい」
「湿原で狩りをすればいいのか~。釣りしたいな」
「湿地の沼で釣れる。大きい」
なるほど、なまずだかピラルクの仲間だか大物がいるんだろうね、この世界なら。淡水の釣りもいずれやってみなければ。水牛の大きいのとかだと半トンから2トンくらいあるのかなぁ。二百人が二食で二百キロも有れば足りるのかな? なら五日分は手に入る? その間色々建てたり釣りもできるな。ちなみに小角族は一日二食か三食かランダムみたいだ。食べられるときは食べる感じ。機械的じゃなくて環境に任せる感じで気楽だ。まあ必ず食べ物が確保できるか分かんないもんな。
うーん、しかし緑の森の中を歩くのもなかなかよいですなぁ。花の咲く季節や紅葉の季節もいいんだろうけど、夏は夏でいいものだ。緑が一番元気なシーズンだからね。
あ、毒虫とか寄生虫も近付かないようにしてるけど、この世界の病原体ってどんなのがいるんだろうなぁ。なんか小角族の角でも治せない病気とかあるらしい。心当たりはあるんだけどね。一応ホタテさんには話してみた。
ある程度殺菌能力がある。水が浄化できる。毒に強い。そして恐らくウィルス性の病気も治せる(風邪はほぼ引かないらしい)。それが小角族なんだって。で、そんな小角族でも対応できない病気で、命に関わる、いわゆる風土病として考えられる一番大きな可能性がある病原体は、虫だ。
魔法の病気とか言われたら流石に分からないけども。寄生虫かダニかそれ以外かは分からないけど、小角族は毒に強いらしいから物理的に臓器に穴を開ける寄生虫、しかも水からの寄生虫は水魔法で浄化できるらしいから、土の中の寄生虫だ。アジさんもだけど小角族の人は靴ではなくてワラジみたいな物を履いてる。だからうっかり足を怪我したり擦り剥いてそこから寄生虫が入った可能性が一番高いんだよね。
それを言ったらホタテさんも感心してた。ほかの集落に知らせに走らせたくらいだよ。ちなみに私の周りの人たちからは寄生虫は除去する設定にしてあるのでカイバシラの人たちはもう大丈夫だろう。ほかの病気なら分からないけど。癌とかね。それも収納できるけど、予期しないことが起こらないとは言えないからそっちは収納してない。なんか癌って普通に健康な人の体の中で発生してるらしいんだよね。それを抗体が除去してるから皆が癌にならないだけで。
収納してしまったら必要な部分の体細胞がなくなったりしそうじゃない? まあそんなときにはインフォメーションさんに任せるけどね。
「あとは動物の体毛でクッション作るかなぁ。アレルギーとか原始的な暮らししてたら起こりにくいらしいけどアレルゲンの寄生虫は対応しちゃったしなぁ。やはり謎キノコを探すしかないかな」
「綿玉キノコ」
「それそれ」
しかしキノコの綿ってどうなんだろ。菌の繊維って綿に向かなそう。一応収納されてる中にあったりするんだけどね。すぐにへたりそうだ。ってかこれ食べられるのか。白くて野球のボールくらい大きさがある。たぶん不味いやつ。
やっぱり綿花かなあ。紙とか布を流用する手もなくはないけど。へたらないクッション材って貴重だったんだね。そういえば枕とかはビーズとかストローだよねえ。布団は綿とかウレタンとかを複合的に使ってるよね。
ああ、柔らかい抱き枕でふかふかしたい。いっそのことフェンリルとか巨大生物の体毛を使ってみようかな。いたら捕まえよう。
「フェンリル……人に倒せる生き物じゃない」
「私なら大丈夫だけど小角族が狩れないなら駄目だね」
「小角族は臆病ではない」
「そんなことは言ってないよ~」
「グリグリ」
「あいたたた!」
ついつい頭を撫でてしまって怒られた。アジさんは年上だしね。小角族の一才なんてほとんど差がないけどね。
子供にしか見えないからついつい子供扱いしてしまうなぁ。可愛いし。
読んでくださり有り難う御座います!
異世界で絹の真綿とか綿花以外ではなんかクッションないかなって。ユーミはウォーターベッドは作っていますけどね。普通の異世界内政ものと順番が違う……。