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磯へ。

 頑張りますのでよろしくお願いします。



 翌朝、ユーミ暦四日。カイバシラの位置を高空に飛んで確認する。【セット:飛行スキル】はよく機能している。思うままに飛べるな。鳥の魔物とか飛んできたら片っ端から収納した。座標を取ってホタテさんとテレポートすることにしたのだ。細かい調整はインフォさん任せだが大まかなセットは作らないとね。


 ほー、あそこが集落ね。遠くに川とか大きいのがあるなあ。湖や池もたくさんあるね。いつか釣りに行こう。


 じゃあ【設定】自分と同行者にかかる重力と空気抵抗、摩擦を完全にカットし、周辺の生物や建物、山などの障害物を回避する軌道で、インフォメーションのガイドにより光速で移動。その際人命に係わる状態は回避。余剰なエネルギーは収納。危険があれば停止。この設定を【セット:テレポートスキル】でラベリング。


 さて、準備はできたしインフォさんも座標が取れたそうなので。


 釣りに行こう! 今回はチヌかグレかイシダイかその辺りの鯛科の魚を釣るぞ! いるかな?


 お昼からはカイバシラにテレポートなので今のうちにお酒は作れるだけ作って収納しておく。素材は木とかで作ってるからバイオエタノールのお酒みたいだな。まあ成分を抽出してデータ通り整えているんで普通に醸造した物と変わらないんだけどね。


 さて、磯だ。磯釣りと言えば近場に撒き餌を撒いて釣るのだが、……オキアミ作れないやーん。


 仕方ないのでプランクトンを道々回収する。思ったより量が取れたのですぐにやめた。プランクトンで指定すると幅が大きすぎるんだね。貝の幼生とか烏賊とかシラスとか様々な微小浮游生物が取れたのであっという間にブロック一つ分採れた。うっかり環境破壊する所だったよ。危ないよねこのスキルは。まあ餌が取れたので良かった。


 あ、針に付ける餌も採らないとね。環境破壊しない範囲で500グラムだけ磯で鯛などの釣り餌になる海老などの生物を収納。


 真鯛は深海魚だから陸から釣るのは難しいんだけど、その分黒鯛(チヌ)メジナ(グレ)、石鯛、ブダイ等が陸から釣れてくる。鯛やアジやスズキは仲間が多い魚だね。


 浮き釣りの仕掛けに竿はテレスコの6フィート(180センチほど)、オモリはカミツブシでヨリモドシを付けたらハリスは取り敢えず細い二号(3・6キロまで耐えられる)で試してみる。流石にこれより細いと怖いな。まあ一号までならなんとかなるかも知れないけど。リールはスピニング、二号150メートル巻きだ。


 魔力を込めてやれば強くなるのかな? 殺気が糸にこもると釣れなくなる説ってあるんだよね。


「ほほう、神世の釣具なのだ。我も使ってみたいのだ」


「いいよ」


 一度作ってるし材料もあるので複製するだけだ。小角族にスピニングロッドが流行りそうだね。ドワーフに作ってもらおうか。楽しそうだ。材質がないからミスリルで作った、とか言われたら面白そうだよね。


 さて、撒き餌はインフォさんに適当にプランクトンを撒いてもらう。この撒き餌だけど実は土でも寄せられる土とかあるんだよね。まあ普通はオキアミや練り餌の団子を使うけど。黒鯛とかは意外と悪食で西瓜も食べるし海藻や烏賊も虫も食べる。ほんと何でも食べるんだよね。


 味は、釣り場によっては肉は泥臭い臭いがするけど、焼いてもお刺身でも美味しいと私は思うな。クーラーで泥抜きできるし楽しみだ。またメートル級が釣れてくるかも……。ドキドキするね!


 磯は波が高いと潮風がダイレクトに鼻孔をくすぐる。冷たいのに気分は熱く高揚してくるよ。空も青く、ところどころに大きな雲も浮かぶ。


 やっぱり釣りはこれだよ。撒き餌のプランクトンの臭さすら自然を体感する喜びを与えてくれる。


 と、やっぱりスレてないから反応が速い! 透明な水の下にメーター超えの魚が複数、その黒い魚体を現して悠然と泳いでいるよ。針が小さすぎて皮膚を貫通しないかも! クーラーで大きい針も作らないとね。


 まあ、かかるなら釣り上げるよ! 私ゃ釣りガールだからね! ガール! そこ大事!


 ヒット! 竿がぐぐんと沈む!


「ふいっしゅ~っ!」


「おお、来たのか!」


「タモ網出しとくね。タモさんタモさん」


 ホタテさんにも偏光グラス(光のちらつきを抑えて水中を見えやすくするサングラス)は貸してあるよ。意味は特にない。


「タモさんタモさんなのだ」


「引き上げたら掬ってね~。重~い!」


 ぐんぐんと引き込む強い引き。鯛は縦に沈む動きをするね。アジだと横に走るけど。一気に根に引き込まれてラインを切られることがあるから気を付けなくてはいけない。


 根と言うのは海底の岩場や海藻などの魚が巣を作る場所で、引っかかりやすい場所だ。鋭い亀の手やフジツボなどの貝も生えているために磯の根は非常に危ない。そこに引き込まれたらほぼ釣り人の負けである。


 少しラインを細くしてる分心配だが、もはや殺気とかの心配も要らないので魔力を込めて一気に力で引っ張りあげる。予想通りのメーター級。


 黒い魚体がぬぼっ、と抜き上がる。


「今なのだ! 必殺タモさん! 南無三!」


「南無三!」


 南無三! って現地語だと何を表すんだろう。相変わらずインフォさんの翻訳が謎である。『女神三柱に願う、と言う意味です』あ、そうなんだ。実際は失敗した時に使われるけど本来の意味としては仏法僧の三つに願うって意味になるらしい。この世界だと「お願いします!」みたいなニュアンスのようだ。


 無事に黒い魚はタモさんに収まった。うーん、鯛の仲間なのは分かるけどやはり元の世界の魚とは違うね。名前を鑑定すると小角磯鯛となっている。大きなグレのような魚だ。ふふふ、元気な魚でびちびちと跳ねている。鱗が大きいな。ヒレはトゲトゲでなかなか危なそうだ。


「やったのだー! 大物なのだー!」


「いいね、この場で刺身にして食べてしまおう」


「しゅわしゅわの酒も飲むのだー!」


 ホタテさんは見た目は幼女なのに大酒飲みである。はしゃぎ方が完全に幼女だけど。まあ飲めるんなら用意するけど。


 今回はマスカットのチューハイと行こう。わさびと醤油をセット。あー、大根のつまが欲しいね。まあ紙皿でいいかな。


 では、実食です。ちなみに小角磯鯛はクーラーで泥抜きと熟成をしてもらったよ。便利。


「あんまいのだー! 酒にも合うのだー!」


「うんうん、魚が甘いからスッキリしたお酒でも良かったな。ビールで良かったかも」


「ビールも飲むのだ!」


 見た目は幼女なのに大酒飲みである。大事な事なので二回言ってしまうのだ。しゃべり方移ったのだ。


 しかし、なかなか美味い魚だ。この様子ならまだ何匹と釣れそうである。ホタテさんも自分でも釣り上げたいと竿を振る。まあスレてない上にビギナーズラックとか女の子は釣り運が高いとかもあるのか、あっさり大物を釣りあげるホタテさん。


 この世界の魚は魔物なので魔力で成長するため、やたらと大きいらしい。人間は普通サイズ……やや小さめなのになあ。


 まあ小さい魔物は自然の中で駆逐されるのかもしれないな。食べる物が確保されるなら獲物が大きいのは悪いことじゃないよね。


「また来たのだー! おお、さっきより大物なのだー!」


 幼女大騒ぎである。可愛いなあ。子供好きだわ。……ホタテさん280才だけど。


 そのあともカイバシラ集落へのお土産として大鯛を釣りまくった。楽しかった!


 ちなみに魚のサイズって、立体だから、単純計算すると長さが倍になると体積は8倍で重さも8倍になるんだよね。なのでこの魚も10キロから20キロ近くあったりする。食いでがあるね!


 二メートル80キロとかも揚がった。うーん、前世の魚とはサイズ感が全く違うな。小さいのもたくさん釣れたけどね。10センチくらいのが釣れた時はホタテさんも喜んで踊り出したよ。小さい魚は可愛いよね。リリースしたけど。大きくなって帰ってこいよー!





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