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星の御使い。

 二話目。ホタテ視点なので言い回しが独特なところがあります。



(side ホタテ)



 キャイキャイと(わらし)たちが騒ぎ、井戸の周りを走り回っておる。


 今年のカイバシラ集落は水トカゲやワニ、陸鮫や水牛が大猟で、木の実やキノコの出来も近年では一番良かった。故に百才に満たぬ子供たちも無理をせずに遊んでおれるのだ。よいことではあるが。


 ヒバシラやシモバシラのような大集落はそれでも飢える者が多く、小角の癒しが通じぬ風土病に犯されている者も増えておるらしい。今年のように豊かな年でも小角族の雰囲気は暗い。


 豊かな年は神の思し召し、星のお導きのゆえなれば占星(せんせい)の御技も冴え渡り、ふと未来を視たりできるのだが、予感がしてテントの外に出ると遥か南に星が雲を引きながら降ってきておる。数分で地上に激突したらしい星の衝撃で地が(かす)かに揺れた。これは……神子や御使いが訪れたのか?


「星が雲を引いてる」


「……で、あるか」


「ホタテ酋長、あの雲はなんだ?」


「流星雲、かの。アジ。ブリのばあ様を呼ぶのだ」


「分かった」


 テントの外で仕事をしていたアジ少年に小角族の最長老、八百才のブリばあ様を呼ばせる。ブリばあ様は錬金の御技持ちの大賢者だ。本来開拓を担うカイバシラ集落についてくるのは体力的に心配なのだが、無理を押してでも新しい土地を見たいとか弾けたことをいうてついてきた。


 ばあ様は老化が始まっているのでそこから百年も生きられないはずなのだがまだまだ現役だ。我もそこまでゆるゆる生きたいものなのだ。


 暫くしてブリばあ様は風の加護で空を舞ってきた。元気なばあ様よな。


「ホタテ、星が雲を引いてきたか」


「うむ、御使いか、神子か」


「使いであろうな。すぐに迎えよ」


「で、あるか。では参る。アジ、伝えは任せる」


「分かった」


 アジは僅か二十五才の(わらし)だが、よく働く。大工のエボシの兄、カツオノなどは二百も過ぎているのに一日中酒を食らって遊んでおるというのにな。エボシの妻のアカがよう愚痴を吐いておる。


 アジは槍の技前も魔法の技前も達人で、同年代のシバとはよきライバルなのだ。シバやアジの年なら遊んでいるのが普通なのだがな。我の孫たちなど百を過ぎているが遊んでおる。まだ子供だからそれが普通なのだが。


 アジが我の息子のカラスに我の留守にするを伝えに行ったので、ゆるりと歩いて集落を離れる。角に風を巻き、遠く地平の先に当たるものがないを確かめ進む。足下は湿地、緩いので魔力で足場を張り、それを蹴り進む。旅の者、冒険者がステップと呼んでおる技なのだが、魔法使いの上位者は必ず使える。


 これで急げば一時も要らぬのだが、ゆるりと歩くことにした。集落の安全のために周囲の陸鮫やワニを狩るためだ。そのうち日もくれたのでその辺りの陸鮫を風の刃で狩って、塩で焼き、食う。陸鮫は日持ちせぬので残りは埋める。こう言う時は土の加護の有り難さよ。地はやがて死体を溶かし地に返すが、埋め方が悪いと生ける死体になり徘徊する。小角は聖なる加護を角に持つので生ける死体などは生まれぬが。


 小角族は他に水や風の加護を受けやすいが、年を取るとさらに火や土にも加護を受ける。姥捨山ではないのだがその頃になると火山であるチャバシラ集落に移り住むようになるのだ。ブリばあ様のように開拓に参加してしまう剛のばあ様もおるのだがな。小角族最長老なのだが行動が若々しい。見た目はもうしわくちゃだが。


 水と風の精霊任せで縄張りを張り、寝る。湿地の中にも乾いた丘は有るのでそこでゆるりと火に当たり寝た。(しば)があるので森際を行っておるが、どうやら星の子は森際におるようだ。南に真っ直ぐ進めばいいので楽である。最近は南の大陸も寒くなっておるらしい。夏も近いのに火がないと眠れぬ。


 二日と少し歩くと、どうやら塀に囲まれた人族の屋敷があるようだ。塀の向こうは見えぬ。このような高い塀があればこれまでにも狩りに出た者が気づくはず。御使い殿が作ったのか? 早くないか?


 目的の人物らしき者に見つかったらしいので走り向かう。とてつもなく目がよいようだが、邪気は孕んでおらぬし、占星にも悪い星は見えぬ。しかし、なんたる巨人よ。幅はスッキリと痩せており(なり)は益荒男のそれにも見えたが、黒髪に黒目の若い娘である。髪は短く少し焼けておるな。しかし、普通の人族にしても大きい。飯の食えぬ人族なら小角とあまり変わらぬ大きさだが、この巨体は巨人の一つのオーガやヒルジャイアントやトロールのようである。まあ流石にそこまで幅もないので失礼か。豹のようにしなりそうな肢体で、誉めてもよい美しさよ。


 我も一人ごちてしまったがそれに相手も返してきた。堅いか、まあ我も小角を導き長いゆえにな。しかし気さくに秘密を話す星人よ。やはり星々の神、天神様の御使い殿のようであるが。納得のゆく美しさ。しかしなにゆえか東や北の王国で貴族の上に立つ王子と呼ばれる者のような風格もある。女なのに。


 言わぬが花ということもあろう。と、こちらは遠慮したが向こうは遠慮無く子供扱いしてくるな!


 まあ確かに御使い殿の作った屋敷やおんせん?とかいう風呂にはこの身に従って興奮してしまったが。そこは仕方なかろう。ブリばあ様でもこのような未知の作りの家には興奮したはずなのだ。むしろあのばあ様はこういう新しいのが好きな性格なのだ。


 風呂で冷たくも旨い酒を頂き機嫌もよくなり、てーぶるとやらに備え付けの椅子に座る。この二百年ほどで他国でもこのような物が流行っておるが、なんとなくであるがこれらの作りの方が斬新にみえるのだ。


 椅子で脚をぶらぶら揺すり座る。なんとのう、こうするのが作法な気がしたのだが、また可愛がりに頭を撫でられた。あまり子供扱いされるのも歯痒いので伝家の宝刀、小角グリグリを食らわせる。躾なのだが喜んでおるな。小角グリグリは疲れも癒えるゆえか。


 出された飯はヒラメの皮付きの(さく)に返しタレとやらを塗りながら、炭火で炙った物らしい。非常に香ばしく、旨い。酒はちゅうはいとか言う、柑橘の味のするしゅわしゅわ口の中で弾ける酒であった。これもまた冷たく、珍しい。


 御使い様が使う箸は小角族は普通に使っておる。だが食器の作りは美しいな。匙も出されておるが普通に箸を使って見せるとユーミは目を丸くしておるな。しかしつまみも酒も美味いのう。


「うむううう、まるで神世の宴よな!」


「あはは、そこまででもないけど」


「これも旨いのだ!」


「白身を炙ってから崩して野菜と和えて酢の物にしてみたよ」


「ヒラメ尽くしとは豪勢よな~。その緑の透き通った酒も飲みたい!」


「白ワインだよー。私はこれロックとかスプリッツァーで飲むのが好きなんだー」


 うむ、冷たいのが旨いな。この御使い殿、ユーミは酒もスキルで作れるようだ。鍛冶師のドワーフ、ドロタの一家が歓喜しそうなのだ。是非この御使い殿、ユーミを我が集落に連れて帰らねばな!


 仕上げとばかり用意されたベッドに入る。暖かい。最近は野宿の寒さに辟易としておったがこれはよいものだ。


 あー、我が家にも一つ用意して欲しい……いや、カイバシラをこちらに移設するべき! ここを集落(キャンプ地)とするのだ!


 カイバシラ集落はまだ数百人しかおらんからな、すぐにも移ろうではないか! 我はユーミと住む! おんせん! ちゅうはい!






 ご、合法ロリ……。

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