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未定  作者: 青背康庚
第一部
7/10

007

 後の世に5.27(戦闘終了時の6.1とすべきという声も存在する)と呼ばれる大災害が『最前線』から程遠い安全な筈のエリアで発生した。この出来事は多くの波乱を生み、謎と共に後世に語り継がれる事となった。




 5.27とは大規模都市アルファスポーク近郊で発生した野良機体の大氾濫の事である。今までに例の無い規模での都市近郊の戦いである事や、フリーのギルド員の衝撃的な戦闘記録が出回った事で、未だに熱く議論が交わされる。また、映像記録中で口調がコロコロ変わるG氏や当時16歳で新人であったS嬢にカルトな人気があり、熱狂的なファンが存在する。ファンのコミュニティには真偽不明な情報が多くあり、5.27に関する情報が未だに集められている(*1)。

 この戦いではシティーガードや各企業体の軍が総出撃し、2829名の死者、約700機の損害を出しながらも大量の野良機体を殲滅した。規格外1機、上級野良機体102機、中級野良機体2500機以上、下級機体3000機以上、未分類機(後に下級機体に分類)7000機以上の大部隊による攻撃であった。これほどの野良が潜伏できた理由について、数多くの説が存在する。

 規格外機は臨時連合対策本部にてシザーハンズと名付けられた。全高84m。脚を含めた横幅は300m以上。巨大な爪は左右で大きさが異なり、64mと58m。爪は武器ではなく感覚器であり、これを用いて膨大な情報を処理していたと考えられている。装甲が厚くまた他の規格外機と同様に粒子を纏っていた事から、単機になった後の戦闘時間は5時間を越え、この際の爪での攻撃や体当たりで多くの犠牲者が出ている。

 シザーハンズ率いる大部隊が現れた原因は不明ながら、餌を求めての大移動という説が有力。同年2月頃からこの一帯でのジャンク回収依頼が増加している。シザーハンズは高度なステルス機能と指揮能力を持ち合わせており、エリアT5,FHポイントに2月頃より潜伏していたと予想されている。指揮能力によって時に陽動部隊を出し、接近する機体から身を隠していたと思われ、散発的な戦闘が発生していた。

 また、ジャンク品回収の依頼では三名のギルド員が死亡していた。これを隠蔽していた事(*2)が被害を拡大させたのではと世間を騒がせた。これに関して隠蔽はしていないと否認しながらも、最終的には『鳥の羽』ギルドのヘンリー・スミス(53)がアパームド方面へ転勤、『暁の』ギルドのジェイク・オーウェン(63)が自己都合退職となっている。


 5.27の経緯は以下である。7時頃にフリーのギルド員二名がジャンクを回収しながらエリアT5,FHへ接近。活動時間は長く、19時頃にエリアT4,FIに到着する。そこでレーダーに敵影を感知した両名は長距離射撃にて無力化を試みる。5発の射撃の後に野良の勢いが衰えない事を理由に撤退を開始した(*3)。19時40分頃、アルファスポークへ向かう道中T4,FDポイントにて薄闇に浮かぶシザーハンズの姿を視認にて確認。ギルド員二名は最大速度の撤退に移行した。19時45分頃、整列していた野良機体は列を崩し、バラバラに動きだした。この際に野良は不思議な動きをしている(*4)。一部の脚の速い野良と近接戦闘となりながら実に38分生き長らえ、エリアT3,F8に到達。ここでシティガードと複数企業による連合軍により救助される。

 連合軍が組織されたのは19時50分頃である。逃走するギルド員の飛ばす途切れ途切れの通信を受け、事態を把握したシティガードが各企業へ連絡を入れ、連合軍が組織された(*5)。既に超長距離砲の射程内であったが、この時点で都市のレーダー網に敵影は映っていなかった。あまりにも都市に近い事で各企業はこの要請に懐疑的であったが、ベテランギルド員であったG氏に詳しい人物が多数おり、異例の早さで部隊が展開される事となった。

 20時40分頃より戦闘は激化し始め、連合軍は都市防壁へと退避する。22時15分に全ての機体の退避が完了するも、この時点で500名以上が死んでいたとされる。また撃破判定の機体も200機を越えていた。その後、27時を越えても互いに小競り合い程度の牽制を続けていたが、翌日6月1日1時40分頃、野良機体の総攻撃が開始された。丁度人員交代のタイミングであったとされており、連合軍は大損害を被った(*6)。この時の総攻撃により壁は全壊し、復旧される事無く別の箇所に新たな壁が建築された(*7)。

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(*3)この攻撃がシザーハンズを誘引したのではと複数企業が非難したが、それに対して両名は無編集の映像記録を開示した。リンクはこちらから。

(*4)5.27三大不思議の一つ。フリーのギルド員G氏の機体が野良に無視されたこの出来事は、他に例を見ない珍しい現象であり、三大不思議の中でも最も熱い激論が交わされている。G氏の扱うパーツが高騰したり、危険な行為に身を染めるハンターが現れたりなど、多くの社会現象を生み出した。

(*5)アルファスポークは特定企業による出資ではなく複数企業の出資によって成立しており、シティガードはいずれの企業にも所属していない為、シティガードによって連合軍は取りまとめられた。

(*6)5.27三大不思議の一つ。数々の不運が重なっており、偶然でないと考える人が多い。

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