003ボツ
ボツ稿内の設定や出来事は本編と一切関係ありません。
例・ゲオルグがタコ焼き大好きマンだと書かれていても、本編ではタコ自体食べた事が無いかも知れません。
「偵察? 斥候任務は追加料金になりますがねえ」
枯れた立木の多い荒野に複数の機体が展開していた。統一されたキャタピラ型の機体と、ずっしりと重装備を積んだ人型、そして丸いフォルムの胴体を鳥のような足で吊った黄色い機体だ。
「また金を取るのか! 満足に宣戦布告もできないロクデナシが!」
「ザルな警備に見付かって、満足に宣戦布告もできないロクデナシの足を引っ張ったのはどこのどなたか。記録を持ち込めば調停委員会はどちらの味方をするでしょうな? 満足に宣戦布告もできないロクデナシの腕を委員会総出で大いに褒めるのではないかと愚考いたしますが?」
「やかましい! 契約通りにやっていないのは事実だろう! その件は調停委員会に持ち込めばいい」
「ではそうさせて頂きましょう」
黄色い機体がゆっくりと旋回する。右足を前に、左足を後ろに。それを交互に繰り返す。
「待て」
一方、重装備の人型は器用にクルリと向き直り、黄色い機体を正面に捉える。
「それほどに自信があるのなら、偵察の一つや二つこなしてもらおう」
「……自信なんてありませんがね。警戒状態の敵陣に侵入、なんて事、自信を持ってできるなんて奴は信用できません」
「ふん、所詮――」
重装備の人型の声を遮るようにして、黄色い機体の主、ゲオルグが声を上げた。
「しかし、無理難題であっても金額次第で受けるのが傭兵というもの。おおよその敵部隊位置の把握で1万。敵の配置のリアルタイムチェックで2万。着弾観測で5万。いかがですかな?」
「馬鹿な。お前のポンコツが四機は買える金額だぞ。できもしない事をペラペラと。口先から産まれてきたのか、ロクデナシが」
「もし仮に、敵部隊を私が掃討してしまったとして、斥候任務として依頼を受けてしまえばその分しか貰えない。極端な言い方をするならそういう訳です。ご理解頂けましたかな、新米部隊長殿」
「……ふん、1万が望みという訳か。要求は分かったが、それでも高すぎる。戦闘が始まればおおよその位置など我々でも分かる。精々払えても2千だ」
「2千!? おお……! なんと嘆かわしい事だ! 優秀な部隊長殿は先手を打てる事の強みを理解しておられないと見える!」
「その額で嫌ならば引き受けなくても結構だ! 元々ロクデナシには期待していない」
ゲオルグの挑発が癇に障ったのか、部隊長は声を荒らげる。偵察を依頼したり、偵察を不要だと言ったり、言動が一定しないのはその感情ゆえである。
「はあ……仕方ありませんな。今回は私が折れる事に致しましょう。商売上手の部隊長殿の手腕、軍で話題になるでしょうな」
「それもお前が偵察を成功させればの話だがな」
「ご心配無く。成功させますとも」