街にて・・・
普通に歩いていくと3日ほど掛かるらしいが、
俺は、風兎の靴に魔力を纏って走ったので、
半日ほどで街が見えて来た。
さすがに街というだけあって、
周りを高い壁でグルリと囲われている。
入場門の前で並んでいる人たちが居るので、
俺も後ろに並ぶことにした。
(ここは、スムーズに街に入るために、
丁寧な話し方を心得たほうが良いか・・・)
俺の順番となり、
門番が、「ギルドカードはあるか?」と聞いてきたので、
「いいえ、私は冒険者になるために、この街を訪れたので、
まだカードはありません。」と答えると、
「じゃあ、手続きをするから、詰所まで付いてこい。」と指示された。
門番は、他の門番に声を掛けてから、俺を詰所へと導くと、
「街に入るのに補償金として、銀貨1枚掛かるが払えるか?」と尋ねる。
「はい、大丈夫です。」
俺は、金貨を渡した。
「おお、結構持ってるんだな、
釣りの大銀貨9枚と銀貨9枚だ。」
「はい、確かに頂戴しました。」
「次に、この水晶に手を乗せてくれ。」
占いに使う様な水晶の横に、白い石版が置いてある、
俺が、手を乗せると水晶がピカッと光ったが、
特別、変化は無かった。
「これは、魔道具ですか?」
「おお、真実の石版といって、
罪状があると、石版に浮かび上がってくるんだ。」
門番が何気なく水晶に手を置くとピカッと光った。
門番は慌てて手を外したが、
「今、石版に収賄って「気のせいだ!!」・・・。」
「そうですか?」
「そうだ!」
「分かりました。
私の気のせいだったようです。」
「よしよし、ところで、
お前は、ここタナーカの街の名前の由来を知っているか?」
あからさまに話を変えてきたが、
ここは合わせておく事にする、
「いえ、地方の村から出てきたばかりなので、
存じ上げておりません。」
「そうか、では物分りが良い、お前に特別に教えてあげるとしよう。
この街は昔、ハラペーニョの街という名前だったのだが、
今から300年ほど前に、
見事に魔王を倒し、バラバラだった世界を纏め上げた、
勇者イチロー・タナーカが最初に現れたのが、この街だったのだ、
それで、勇者様から名前をもらってタナーカの街と改名したのだ。」
(田中一郎って、モロ日本人だろ!)
「は~、由緒正しき街なんですね、
その後の勇者様は、どうなったんですか?」
「伝説では、勇者の国に帰られたとの事だ。」
(地球に帰る方法があるのか?
まあ俺は、向こうで死んでる可能性があるし、
この世界が嫌いじゃないから、どうでも良いか。)
俺は、門番に冒険者ギルドの場所を聞いてから、
詰所を後にした。
冒険者ギルドへと向かう道の途中、
そこかしこにある屋台で、
何かの肉串や、謎の果物を楽しみつつ進むと、
これから向かう方で、何か騒ぎが起こっているのに気付いた。
「こうるぁ~、俺様にぶつかって、服を汚しておいて、
ただで済むと思うなよ!!」
「俺様たちが、踏み潰してくれるうぁ~!!」
某世紀末伝説に登場する、
やられ役たち、みたいな服を着た巨人たちが騒いでいた。
倒れている者に向かって、足を振り下ろすのが見えたので、
俺は、風兎の靴に魔力を纏って、高速で両者の間に分け入った。
電撃を使うと殺してしまう恐れがあるので、
気の力で、はじき飛ばした。
「大丈夫ですか?お嬢さん。」
振り返った先には、ドワーフのおっさんが居た。
「普通、こういう場面は、
獣人の奴隷少女じゃねえのかよ!!」




