皇国にて・・・
そして、いよいよ勇者サブローとミルキィ姫の、
婚約記念式典が始まった。
ルクアは、アルビナ国王と共に招待席に座っているのだが、
パサラちゃんと、ポラリちゃんもお揃いのドレスを着て、
家族扱いのようにルクアと並んで座っている。
俺とフローラとリーナは護衛なので、
ルクアたちの近くで壁際に立っている。
エルザはザドス王と、やはり招待席に座っており、
ブラッディー・ベア夫妻も近くの壁際に控えている。
そして、式典会場に皇帝陛下とミルキィ姫と勇者サブローが、
入場してきた。
「なあ、俺の気のせいかな、
勇者サブローの強さが、
前に会った時から、いくらも上がって無い様にしか、
見えないんだが・・・」
「魔王の軍勢に気付かれないように、
強さを隠蔽する魔導具でも、
使っているんじゃありませんの。」
「そうだよ、
いくらなんでも、あれから結構経っているんだから、
それなりに上がっているでしょう。」
「だよな。」
その時、席に付いていたパサラちゃんがトコトコと歩いて来て、
「あれ。」と指差した。
「ああ、この前の・・・まさか!?
そうなのか、パサラちゃん?」
パサラちゃんはコクコクと頷いている。
一応、フローラたちにも確かめてみるか、
「なあ、フローラ、
あの檀上で皇帝陛下の近くに、『本日お集まりの皆さん、
私は皇国宰相のバケテール侯爵であります。』
始まっちまったか。」
突然、前に見た皇帝陛下の側近らしい魔族が話し始めた、
皇帝も「何を言っておるのだ!」と怒鳴っているから、
予定外の行動なのだろう。
「本日は、勇者サブロー殿とミルキー姫の婚約記念式典とご連絡をして、
皆さんにご足労戴きましたが、それは誤報でありました。
正確には、皆さまには新たな魔王の誕生に立ち会って頂きます。」
会場から異様な、どよめきが上がった。
「宰相、何を申しておるのだ!」
「皇帝陛下、フェルナリア皇国宰相は私の仮の姿であります。
私の真実の姿は悪魔貴族バケテール男爵である!」
(やっぱり、皇国の連中は、
魔族だって気付いていなかったのか、
ってか侯爵から男爵って身分下がってるだろ!)
バケテール侯爵がバフン!という煙と共に、
魔族の姿を現した。
「おのれ、魔族が化けておったのか!」
「そう通りでありますぞ皇帝陛下、
勇者召喚と偽って、魔王の憑代となる、
サブロー殿を異世界より招いて戴いたのですよ、
サブロー殿には既に『魔王の素2000』から始まり、
『魔王の素GT』を経て、
そして先日ついに『魔王の素GTR』をお飲み戴きました。」
(どっかで聞いた事があるような、無いような・・・)
「後は、この『魔王召喚の短剣』に、
聖なるお方の血を捧げれば、新たな魔王さまが誕生されます。」
「聖なるお方だと・・・まさか!」
「その通りですぞ、アルビナ王国の『聖女』ルクレツェア姫が、
この儀式には不可欠でありましたが、
ミルキィ姫のご友人との事で、まんまとご参加戴きましたな、
それでは、ルクレツェア姫ご覚悟を!」
バケテールがルクアに向かって『魔王召喚の短剣』と投擲した。
「危ないルクア!」
「きゃああああ~・・・あ?」
短剣はルクアとは全然違う方向に飛んで行き、
廊下を掃除していた掃除婦のオバンタリアンさん(68歳)の尻に、
サクッと刺さった。
「何するんだい!」
オバンタリアンさんはドスドスと、バケテールの方に歩いて行って、
スモウレスラーもかくやたる張り手をかました。
バケテールはゴロゴロと床を転がって行き、
うつ伏せのままピクピクと痙攣している。
オバンタリアンさんはドスドスと近づいて、
うつ伏せに倒れているバケテールの尻に短剣をサクッと刺したが、
一瞬ビクッとなったが意識は戻らなかったようだ、
オバンタリアンさんは「ふんっ!」と鼻息を漏らして、
短剣が刺さったお尻をポリポリ掻きながら掃除へと戻って行った。
「うおおおおおっ!」
叫び声に檀上を見ると、勇者サブローが体を掻き毟るようにして、
苦しんでいた。




