王都にて・・・
俺たちは、
サクラとバサシが引く馬車に乗って王都へ向けて出発した。
エルザたちは顔が売れているので、
直接、王都に行くのではなくて、
王都近くの、国王派領主が居るタワバの街を、
取り敢えずの目的地とする事にする。
例によって、
道中は魔獣や盗賊が出て来たが、
今回は相手をしている時間も惜しいから、
パサラちゃんの『煉獄』で、
みなさんには謎空間へとご退場願った。
俺も沈めかけられた経験があるので、
同じ恐怖感を味わっている盗賊のみなさんには、
「アディオス、アミーゴ!」(じゃあな、兄弟!)
の言葉を送って見送っておく。
パサラちゃんの暗黒魔導のお蔭で、
馬車は順調に進んで、
目的地のタワバの街には2日で到着する事が出来た。
反乱軍に顔が知られている怒れがある、
エルザさんとルクアとフローラは、この街で待機して、
俺とリーナとパサラちゃんで王都へ情報を集めに行く事にする。
「ライ殿、ここに私が懇意にしていた人たちを書いておいたので、
何か話してくれると思うから尋ねてみてくれ。」
エルザさんがメモを差し出したので受け取る。
「でも、初対面の俺を信用してくれますかね?」
「ああ、合言葉を決めてあるから大丈夫だ。」
「なる程・・・それで、合言葉は?」
「そ、それは・・・」
エルザさんは周囲を気にする素振りを見せると、
「い、一応、最善の注意を払うために人気の無い場所で教えるから、
ライ殿来て貰えるか。」
「?・・・分かりました。」
エルザさんは俺を他の部屋に連れていって、
合言葉を教えてくれた。
「なる程、これは絶対に知られる訳にはいかないですね。」
「ああ、ライ殿も十分に注意してくれ。」
俺とリーナとパサラちゃんは王都へと向かった。
王都の入り口で、
国境警備隊の隊長さんに貰った通行許可証を出して、
無事に王都入りした俺たちは、
取り敢えず宿を取ってから、宿の食堂で食事しながら、
今後の予定を打ち合わせる事にした。
「今日は日が暮れてしまったから、
リーナとパサラちゃんは、明日から情報集めして貰う事にして、
俺は酒場で聞き込んでみるよ。」
「おっけ~。」
「分かった。」
食事を終えた俺は、リーナたちと別れて酒場を目指した。
エルザさんの馴染の店らしいので、
反乱軍の監視の目があるかも知れないが、
俺の顔は知られていないから大丈夫だろう。
店の入り口を入ると、
客たちの視線が集まるが、見知らぬ者と判断すると、
すぐに離れていく、
何人か視線を離さない者は要注意だろう。
俺はカウンターへと歩いて行ってマスターに注文する。
「オヤジ、ミルクをダブルで・・・」
「ぼうず、冷やかしなら帰りな。」
「つれない事言うなよ、俺は女獅子の友達だぜ。」
「なに!?『フローラは?』」
「『無い乳』」
「うむ、どうやら本当らしいな。」
「ここに監視の目は?」
「今日は、見掛けないヤツは居ないから大丈夫だ。」
「そりゃ良かった。」
「で、何が知りたいんだ?」
「まずは、ブラッティー・ベアの事かな。」
「ああ、あの夫婦の事は俺も良く知ってるが、
反乱に加担するような連中じゃ無いから、
何か弱みを握られているんだろうな、
関係ありそうな話と言うと、
ヘナチョーコ侯爵の腰巾着に、
ヒョローン男爵ってヤツが居るんだが、
ヤツの屋敷の周りを、
侯爵の子飼いの傭兵が見張ってるらしいぜ。」
「そりゃ、有力情報だな・・・
城の警備はどうなんだ?」
「城務めの衛兵の話じゃ、
王様の部屋の周りは侯爵が連れて来た傭兵が守っていて、
近づけないらしいぜ。」
「逆を言えば、王様の部屋の周りの連中は、
叩きのめしても良いって事だろ?」
「まさか、行くつもりなのか?」
「ああ、こう見えてもA級冒険者なんでな。」
「ほう、その若さで大したもんだな。」
「そう言えば、侯爵の周辺で何か変わった人物って居ないかな?」
「変わった人物か・・・
そう言えば、侯爵は愛妻家・・・と言うか恐妻家で知られているんだが、
最近、凄く美人の愛人を連れ歩いているらしいぜ。」
「そうか、それも気になる情報だな・・・
取り敢えず、オヤジさんに聞いた情報から当たってみるようかな。」
「そうか・・・
そうだ、ミルクでも良いから飲んで行けよ。」
「おお、じゃ貰うかな。」
オヤジがミルクを入れてくれたので、
一気に飲み干した。
「う~い、
んじゃ~、おやじ~、またくるぜ~い。」
「おい、まさかお前、
香り付けに入れただけのブランダーに酔ったのか?」
「ぶわ~か言うにゃよ、おりぇのどこが酔ってるんにゃ?」
その後、俺はオヤジに連れられて宿まで帰ったらしいが、
全然、記憶に無かった。




