まだ森にて・・・
建物の中に入ると、大きな姿見の鏡がいくつも置いてあった。
「なんで鏡が、こんなに置いてあるんだ?」
「ワープゲート。」
「何ですってパサラ!
これはワープゲートですの!?」
「フローラ、知ってるのか?」
「ええ、300年前の戦争で全て破壊されたと聞いていたのですが、
世界中に一瞬で移動できる魔導具らしいですわ。」
「おおっ、そりゃスゲエな。」
「パサラちゃんは使った事あるの?」
「城にあった。」
どうやら、魔王城にもあったらしい。
「まだ使えるのかな?」
「相手側が残っていれば大丈夫だと思いますわ。」
「これ、気になる。」
パサラちゃんは、いくつかあるワープゲートの一つが気になるらしい。
「よっしゃ、行ってみるか!」
「面白そうね!」
「まあ、私たちなら、何所に出ても大丈夫ですわ。」
パサラちゃんがコクリと頷いてから、鏡のような所に手を触れると、
そのままスルリと入り込んだので、俺たちも後に続く事にする。
ワープゲートを抜けた先は、古びた建物の中だった。
自分が出て来た場所を振り返って見ると、
同じような姿見が置いてあった。
「帰る時は、また、ここから入れば良いのかな?」
パサラちゃんがコクリと頷く。
「ここって、どこなのかな?」
「魔王城。」
「ええ!?魔族が住む島にあったっていう?」
「そう。」
「すごい!アタイたち、
誰も来た事が無い、伝説の島に居るんだ!」
「へ~、そうなのか。」
「実在していましたのね・・・」
「こっち。」
パサラちゃんは、行きたい場所があるようだ。
パサラちゃんに付いて城の中を歩いて行くが、
長らく人が居なかったらしく風化が激しいようだ、
パサラちゃんは階段を上って、
最上階のひと際大きな部屋へと入って行く。
「パサラちゃん、ここは?」
「魔王の間。」
「魔王の間って、
パサラちゃんのお父さんと、勇者イチローが戦ったっていう?」
「そう。」
パサラちゃんの父親である魔王は、ここで命を落としたらしい。
「勇者イチローを憎んでいるかい?」
パサラちゃんは首を振って、
「父が、この島だけでは満足出来なかった所為。」と、
珍しく長い文章で話した。
「そうか。」
パサラちゃんはコクリと頷いた。
「そこに居るのは誰じゃ!
ここを魔王ケセーラ様の城と知って、足を踏み入れたか!」
突然の大声にビックリして振り返ると、そこには骸骨が立っていた。
(スケルトン?いや、知性があるみたいだからリッチーかな?)
「じい?」
「ん?まさか・・・パサラーナ様ですか!?」
「そう。」
「生きておられたのですか!」
「封印。」
「そうなのですか、人族に捕まって処刑されたと伺っていたものですから。」
「隠蔽。」
「なるほど、我々が探さないように、人族が情報操作していたのですね。」
(よく、あれだけで分かるな・・・)
「して、この者たちは?」
「ライが解いた。」
「なるほど、ライ殿と申されるのか、
パサラーナ様を助けていただき、ありがとうございます。」
「いえ、たまたま封印を見つけたものですから。」
「しかし、再び、
こうして生きて、お会いできる日が来るとは、
長生きはしてみるものですな。」
(リッチーって、生きてるのか?)
「爺やさんは、ずっと、この城に居たのですか?」
「ええ、主のケセーラ様が逝かれてからは、
ずっと、こうして城をお守りしてきました。」
「ここには、お一人で?」
「ええ、仲間はみんな死んで逝くか、島を出て行きました。」
「そうなんですか、それは寂しいですね。」
「はい、でも、こうしてパサラーナ様にお逢いする事が出来たので、
もう思い残す事は御座いません。」
「じい、居なくなる?」
「ええ、もう長い事こうして暮らしてきましたが、
そろそろ寿命が来たようです、
あと500年もすれば私も逝くでしょう。」
「十分だろ!」
「ホッホッホッ、パサラーナ様、
私はいつもここに居ますから、またいらしていただけますか?」
「また来る。」
「ありがとうございます。
そうでした!ケセーラ様の形見の品がありますので、
持って行って下さいませ。」
「分かった。」
爺やさんは、黒い杖を持ってきてパサラちゃんに渡した。
「爺やさん、それでは失礼します。」
「じい、また来る。」
「みなさま、お気を付けて、お帰り下さいませ。」
俺たちは魔王城を後にした。




