旅にて・・・
「お~う、お前ら!馬車と金目の物を置いていきやがれ!」
「おお、盗賊だ!行きに出なかったんで物足りなかったんだよ。」
「ライ、馬車が停まったみたいだけど、どうしたの?」
「ああ、盗賊が出たからサクッと倒してくるぜ。」
「了解よ。」
「お~う、おめえら何ゴチャゴチャ言ってやがんだ!
とっととしないと皆殺しだぞコラ!」
「ライ、悪い人たち?」
「そうだぞパサラちゃん、今から俺が行って『煉獄』えっ!?」
盗賊たちの足元にタールのような黒い粘液が広がって行き、
中から黒いタコ足のような触手が出て来て、
盗賊たちを引きずり込んでいった。
「ぎゃ~~~っ!助けてくれ~!」
「体が沈む~!」
「死にたくね~!」
「許してくれ~!」
盗賊たちが全員沈むと、粘液も消え去った。
「・・・・・・」
その光景を目撃した御者のヨシェアはドン引きしている。
「え~と、今のは暗黒魔導かな?」
パサラちゃんがコクリと頷く。
「俺たちだけの時は良いけど、
他の人が居る時は炎魔導を使うようにしてくれるかな?」
パサラちゃんが、またコクリと頷く。
「よしよし、
さて、ヨシェアくん、今見た事は誰にも話さない方が良いと思うぞ、
もし外部に漏れたらヨシェアくんも沈む事になるからね。」
「・・・・・・」
ヨシェアくんは、無言でコクコクコクと思い切り頷いている。
(ヨシェアくん、むち打ち症になるぞ。)
ふたたび馬車の旅が再開して、その後は大した事件も無く、
行きと同じくフェルナリア皇国の首都にある、
レストラン『山賊の親方』でランチを食べる事にした。
フェルナリア皇国に着くと、
何やらお祭りを開いているようだったので、
ライが街の人に尋ねると、
勇者サブローが騎士団と共に魔獣を討伐したので、
皇帝がパレードと式典を開催したとの事だった。
ステージの上で勇者サブローが、
皇帝らしき人物から、
見た目がカナリ派手な、恐らくミスリル製らしい剣を貰っていた。
パサラちゃんが袖をクイクイと引いたので、
「何?」と聞くと、
ステージを指差して「魔族。」と言った。
確かに、皇帝の側近らしい人たちの中に魔族が居た。
(へ~、フローラはフェルナリア皇国は亜人差別があるって言ってたけど、
魔族を側近に起用するぐらいなら意外と実力主義なのかな?)
この時俺は、
勇者の眼を持つ俺と、魔王の娘のパサラちゃん以外には、
ヤツが人族に見えている事に気付かなかった・・・
サブちゃんには特別興味が無い俺たちは、
予定通りにランチを食べてから、首都を後にした。
長い旅を終えて、
懐かしのタナーカの街へと着くと、
またアルビナ王が、龍籠に乗ってルクア様を迎えに来ていた。
(王さま、仕事しろよ・・・)
「ただ今戻りました。お父様。」
「おお!ルクア良く帰ったな、
ライたちも護衛の任、ご苦労であった。」
「「「ありがとうございます。王様。」」」
「うん?その娘は?」
「ラメール国にて捨てられていたので、
ライさんたちが保護したそうです。」
「そうであったか、それは可哀想に、
手厚く労わってあげるんだぞ。」
「はい、承りました王様。」
労いの言葉と、別れの挨拶を残して、
ルクアさまは王様と一緒に龍籠で王都へと帰って行った。
「さて、取り敢えず、冒険者ギルドでクエストの精算と、
パサラちゃんの登録を済ませるか。」
「そうね。」
「わかりましたわ。」
「ただいま~!」
「あら、ライくん達、今帰ったの?」
「ああ、ルクアさまを見送って来た。」
「これが、今回のクエスト用紙ですわ、
ルクアのサインも記入済みですわ。」
「はい、少々お待ちを・・・・・確かに受領しました。
それでは、こちらが報酬となりますので、ご確認下さい。」
「・・・・・はい、問題ありませんわ。」
「ロザリア、
あと、この子の冒険者登録をお願いしたいんだけど。」
「まだ幼いようですけど、大丈夫ですか?」
「ああ、俺たちなら十分に守れるし、
パサラちゃんは炎魔導が使えるから、自分の身ぐらい軽く守れるぜ。」
「その年で炎魔導を!?
じゃあ、ライくんのパーティーは、また戦力アップするわね。」
「ああ、即戦力のゴールデンルーキーさ。」




