まだ旅にて・・・
「ほう小僧、元気が良いな、
見たところ冒険者のようだが、
その荷車は、お主が起こしたのか?」
「そうだよ、こう見えてもA級冒険者なんでね。」
「ガハハハハッ!なかなか吹かしよるな、
お前の年で、A級とは話を盛りすぎであろう。」
「本当なんだけどな・・・
そう言えば、こういう時の為にって王様に貰ったメダルがあったっけ、
伯爵さま、このメダルって分かるかな?」
ライは、首から下げていたメダルを出した。
「うん?・・・そのメダルは!?
お主、そのメダルを何処で手に入れたのだ!」
「王城で、王様に戴いたんだけど。」
「伯爵さま、あのメダルが何か・・・」
騎馬兵が聞いている。
「あのメダルは、『友愛のメダル』と言って、
王と懇意にしている人物に渡されている物なのだ、
王からは、王国の貴族たちに、
『このメダルを持つ者は、我と同じ扱いをするように。』
と申し遣っているのだ。」
「あの、小僧がですか?」
「うむ、我も俄かには信じられんのだが・・・待てよ!?
その姿形、もしや、貴殿は準男爵にて冒険者のライ殿か?」
「ああ、俺はライだ。」
「おおっ!貴殿がルクレツェア王女を助け、
王の命を救ったというライ殿か!?」
「俺は、冒険者としてクエストを熟しただけなんだけどな。」
「王都付近に現れたメタルドラゴンを討伐されたと小耳に挿んだが、
あれは真か?」
「ああ、確かに倒したぜ。」
「なんと!メタルドラゴンと言えば、
S級冒険者でも追い払うのがやっとと聞くぞ、
それを倒したとは!」
「何か、そうらしいな。」
騎馬兵たちは、
自分らが、どんな相手に喧嘩を売っていたかを分かって来て、
顔色を悪くしている。
「素晴らしい!我がブユーデン家も武勇によって、
この地位まで昇り詰めた故に、
貴殿の様な強き者は尊敬するのだ!」
「そうなんですか。」
「うむ、我が領は王国北部のザドス王国との国境付近にあるゆえ、
近くに来た折は、是非お寄り下され。」
「分かりました。
その際は寄らせて頂きます。」
伯爵を丁重に見送って、荷馬車の老人に礼を言われてから、
ライは自分の馬車へと戻った。
「遅かったけど、何だったの?」
「ああ、ちょっとした事故があったんで、
片付けを手伝ってきたんだよ。」
「ライさま、また何か揉め事を起こされたんじゃ無いですわよね?」
「ま、まさかぁ、
そう何時も何時も問題起こしてるみたいな言い方は、
心外だなぁ・・・」
「視線を逸らされてるのが気になりますが、
まあ、今の私たちなら大概の事は解決できますわね。」
その後は、大した問題も無く、
無事にフェルナリア皇国へと入国できてから10日が過ぎて、
ライたちは、皇国の皇都付近を移動していたのだが、
通り過ぎるだけでは勿体ないので、昼食を取る事にした。
「ここが最近、
首都で一番、美味しいと評判の店か。」
ライたちは首都にある冒険者ギルドに顔を出して、
美味しい店の聞き込みをしたのだ。
「へ~、レストラン『山賊の親方』か、
そう言えば、俺が生まれ育った国には『領主の館』って店があったな。」
「店に、そんな名前を付けたら、不敬罪になるんじゃないの?」
「俺の国は、その辺は大らかだったんだよ。」
「へえ、そうなんだ、良い国だね。」
店名に躊躇したものの、料理の方は評判になるだけあって、
どの料理も凝った造りと絶妙な味付けがされていて、
みんな大満足だった。
食後のティーを楽しんでいると、
ルクアたちに話し掛けて来る者が居た。
「そちらの、お美しいお嬢様方、
少し私と、お話していただけませんか。」
声の方を見ると、黒髪、黒目で、鼻の穴が大きいサル顔の青年が立っていた。
(あれ、コイツって・・・)
「お初に、お目に掛かります。
私は、フェルナリア皇国に勇者として召喚された、
サブロー・タナカと申します。」
「まあ!それでは、あなたがお噂の勇者様ですか!
それに、タナカという名字は、
もしかして勇者イチローさまの、ご子孫ですか!?」
「はい、私には良く分からないのですが、
周りの者は、皆そう言ってますね。」
(日本から召喚したら、結構タナカ率高いと思うがな・・・)
「さすが勇者様!装備品も一級品ばかりだね。」
「分かりますか、腕利きの鍛冶師たちが『是非に!』と言うので、
頂いておきました。
それで、お嬢様方、お酒でも飲みながら楽しいお話がしたいのですが、
如何でしょうか?」
「勇者様には申し訳ありませんが、
急ぎの旅の途中ですので、お付き合いできません。」
「そうですか・・・それは、とても残念です。
せっかくなので、私のサインをプレゼントいたしましょう、
このサインを城に持って来れば、
いつでも私の所へ案内するように、申し伝えて置きます。」
勇者サブローはアイテムボックスから色紙を取り出すと、
サラサラとサインしてルクアたちに渡した。
(こいつ、いつも色紙を持ち歩いているのか。)
「サブロー・イタジマ?」
「あっ、間違えた。」
勇者サブローはルクア達から色紙を返してもらうと、
イタジマにXをして、上にタナカと書いた。
(こいつ、絶対タナカじゃねえだろ!)
「では、お嬢様方、期待してお待ちして居りますので、
いつでも、お出で下さいませ。」
勇者サブローは、ヘラヘラと愛想笑いしながら去って行った。
「あの、勇者さん装備は一級品だけど、
あまり強そうじゃなかったね。」
「まだ、召喚されて間もないからでは、ありませんの。」
「いや、もしかすると隠された力があるかも知れないぜ。」
「そうですね、
勇者イチローも、最初は普通の冒険者だったそうですから、
これから、力を付けていかれるのかも知れませんね。」




