まだ村にて・・・
第一ゴブリン村人に話を聞いたところ、
この世界のゴブリンはメスの数も、それなりに居て、
人族の女性を襲うことは無いとの事だった。
それどころか、畑で作った野菜や、
森で狩った魔獣などで、
人族の村と、物々交換したりしているそうだ。
(危ない、危ない、人族の村と交流がある、
ゴブリン村を殲滅なんてしたら、
俺の方が討伐対象にされたかも知れないぜ。
くわばら、くわばら・・・)
とりあえず、自分がどこに居るかもわからない俺は、
第一ゴブリン村人に村長を紹介してもらって、
話を聞かせてもらうこととなった。
「ソレデ、アナタサマハ冒険者様デスカ?」
「この、ぼろぼろの衣服を纏った俺が、
冒険者に見えると?」
「イエ、遭難者ニ見エマス。」
「正解!・・・じゃなくて、
じつは、冒険者になろうと思って、
あの森を越えて来たんだけど、
人族の村の場所が分からなくて困っていたんだ。」
「ナ、ナント神代ノ森ヲ越エテ来ラレタノデスカ!?」
「あの、やたらデカい魔獣ばかりの森って、
神代の森って言うのか?」
「ハイ、ソウデス、神様ガ力無キ者ガ、
近ヅカナイヨウニ、強イ魔獣ヲ飼ッテイルト言ワレテマス。」
「へ~、俺は全部、倒しながら来たけどな。」
「アノ森ノ魔獣ヲ普通ニ狩レル、
ライ様ハ、有名ナ冒険者ニ、ナラレル事デショウ!」
「え~、そうか~。」
褒められて気持ちよくなった俺は、
森で狩った巨兎 (グレートラビッツ)や、
巨猪 (マッドボア)の肉をゴブリン村に分けてあげる事にした。
「コ、コンナニ戴イテ宜シイノデスカ?」
「おう、肉は、まだ一杯あるから、遠慮するな。」
「デハ、私ドモモ、コレカラ冒険者ニナラレル、
ライ様ニ、武器ヤ防具ヲ送ラセテイタダキマス。」
村長に案内されて行った小屋には、
たくさんの武器や防具が積み上げられていた。
「コレハ、神代ノ森ニ挑戦シテ、
返リ討チトナッタ、騎士様ヤ冒険者様ノ物デス。
ゴ遺体ヲ荼毘ニフシタ場合、
身ニ付ケテイタ物ハ、発見者ノ物トナリマス。」
「なるほどな、兵どもが夢の後って訳か・・・
そういう事なら、ありがたく戴くとしよう。」
俺は、鑑定を使いながら装備品を整えることにした。
その結果、
冒険者の服×3着・・・汚れにくく、破れにくい。
鋼殻トカゲの鎧・・・魔力を纏うと硬くなる。
風兎の靴・・・魔力を纏うと速さ倍増。
ミスリルソード・・・魔力を纏うと切れ味倍増。
となった。
はっきり言って、
新人冒険者には、過ぎた装備だが、
俺なら、問題なく使いこなせるだろう。
人族の村の場所を教えてもらって、
そろそろ出発しようかと思った俺は、
第一ゴブリン村人にも、お礼を言おうかと思って、
村長に聞いたところで、
ゴブリン村には、名前を付ける習慣が無いことに気付いた。
村長以外は、あの家の父とか、何番目の子供とか呼ばれているそうだ、
それでは不便なので、名前を付けたほうが便利だと教えたところ、
将来、有名な冒険者になると思われる、
俺に、ぜひ名付けて欲しいとのことになった。
豪華な装備品を貰った手前、
イヤとも言えない俺は、
村人たちに、名前を付けていった。
何しろ、ゴブリンだけあって、
名付けている間にも、ポコポコ増えていくので、
名前付けは熾烈を極めたが、
何とか、次の日の朝に、
ゴブ門ノ丞景虎を最後に、
終えることができた。
第一ゴブリン村人 改めゴブ太郎や、
村長 改めゴブリーン3世に見送られて、
いよいよ、俺は人族の村を目指して出発した。