まだ他国にて・・・
領主がオーク似だからと言って、イヤ~ンな展開になるはずもなく、
それどころか、手厚い歓待を受け、
さらに翌朝には、たくさんの土産を持たされてプアプアの街を後にした。
「良い領主様だったな。」
「うん、アタイも、あの領主様の顔を見た時は、
この小説も、いよいよノクターン行きかと思ったけど、
全然、そんな事無かったね。」
「人を顔で判断しては、いけないと言う事ですわね。」
みんな、口には出さないが、同じ事を考えていたらしい。
そんな、失礼な会話を交わしつつも旅は続き、
5日目には予定通りに、港の街ポルポートへと到着した。
例によって領主の出迎えがある。
「フゴッ、ルクレツェア王女さま、
フゴッフゴッ、ようこそポルポートの街に、いらっしゃいましたな。」
リーナたちが小声で話している。
『どうして、行く先々の領主さまがアレに似ているのかな?』
(すいません、俺のせいです・・・)
領主の案内で館を訪れた俺たちは、さっそく要件を切りだした。
「御領主殿、私たちは龍神島に船で渡りたいのですが、
お手配願えますか?」
「フゴッ、それなのですが、早馬を走らせたのですが、
フゴッフゴッ、行き違いになってしまった様ですな、
フゴッ、実は、今、龍神島付近に海賊が出没しておりまして、
フゴッフゴッ、船乗りたちが船を出さんのです。
フゴッ、つい先日も、腕の良い船乗りが、
船に乗れない体にされてしまいました。」
「そんな事が起きているのですか。」
「フゴッ、はい、海軍も警戒しているのですが、
フゴッフゴッ、捕まえられずにおります。」
「分かりました。
そういう事でしたら、何か他に手段が無いかを、
探してみます。」
俺たちは、領主の館を後にして、
龍神島に渡る手段が何か無いか、街で聞いてみる事にした。
みんなで街を歩いていると、
ドン!と、リーナに子供がぶつかった。
「アイタ!気を付けなよ、もう。」
何も言わずに走って行こうとする、子供の首根っこを、
ライがガシッと掴んで言った。
「おい、坊主、今ポケットに入れた物を出せ。」
ライが、子供のポケットから取り出した物は・・・
「あっ!アタイの財布。」
「俺の知ってる国の法では、スリは手を切り落とすんだが、
坊主はどうするかな・・・」
ライは、腰の剣に手を掛けながら凄んで見せた。
「そ、そんな、ごめんなさい許して下さい。」
子供は目に涙を溜めながら、謝りだした。
「ライさん、この子は、そんなに悪そうには見えませんわ、
何か事情があるんですよ。」
「坊主、名前は何て言うんだ。」
「チムタンです。」
「チムタンは何で、こんな事をしたんだ?」
「兄ちゃんが怪我をして仕事が出来なくなって、
うちは親が居ないから、
このままじゃ、俺と妹は施設に入れられるんだ。」
「兄貴の怪我は重いのか?」
「うん、兄ちゃんは腕利きの船乗りだったんだけど、
海賊に襲われて、腕と足に怪我をしちゃって、
街の、お医者様の話じゃ、もう船には乗れないって・・・」
(さっき、領主さまが話してたのは、チムタンの兄貴だったのか・・・)
「私は白魔法が使えるから、お兄さんの怪我を見せて貰えるかしら。」
「見ても無駄だよ、お医者様がアルビナ王国の『白の聖女』さま、
でもなきゃ治せないって言ってたもん。」
「そりゃ、ラッキーね、
ルクアさまが、その『白の聖女』だもん。」
チムタンは訝しげにルクアを見ていたが、
目の前の相手が誰か気付いたようだ。
「ルクレツェア王女さま!?
し、失礼しました!
この街に来るって噂は聞いていたんですけど、
まさかホントに会えるなんて・・・」
「そんなに、畏まらなくて良いわよ、
私なら、お兄さんの所に案内してくれるかしら?」
「はい!お願いします!」
「ただいま~!」
「チムタン、お前、今まで何処へ・・・
その方達は?」
「え~と、その~。」
「俺たちは、チムタンが街で困った様子だったんで、
事情を聞いて案内してもらったんですよ、なっ!」
「あんちゃん、ありがとう!」
「私は、白魔法が使えますので、怪我の具合を見せてもらえますか?」
「この怪我は、もう・・・」
「兄ちゃん!この方は『白の聖女』さまだよ!」
「えっ?
はっ!こ、これは、ルクレツェア王女さま、し、失礼しました!」
「良いですよ、
では、見せてくれますか?」
「はい!お願いします。」
「う~ん、見たところ多分、大丈夫だと思いますよ、
『癒しの神よ、この者に恵みの光を。』」
ルクアさまが呪文を唱えると、傷が光に包まれて消え去った。
「どうですか、動かしてみて下さい。」
「動く!動くぞ!俺の手も足もちゃんと動いてくれる!
これで、また船に乗れるぞ!
ルクレツェア様、本当にありがとうございます!」




