他国にて・・・
翌朝、俺たちはルクアさまの護衛として、
ルクシア共和国へ向かうために王城を訪れた。
「ライさま、これが龍籠ですわ。」
「ちがう!こんなの龍じゃない!」
そこには、人が10人は乗れそうな大きさの籠をぶら下げて、
フワフワと宙に浮かんでいる、
巨大なタツノオトシゴが居た。
「うお~、すげ~速ぇ~!
浮龍すげ~!」
「さっきまで、違う、違うって騒いでたのに、
ライさんて子供みたいね。」
「時々、大人みたいに説教臭い事言う割には、
変な物に拘ったりして、子供っぽいとこがあるんだよね。」
「そんなところも、ライさまの魅力の一つですわ。」
「はいはい、ごちそう様。
そう言えば、リーナさんは、ライさんの事を男性としては、
どう思っているの?」
「ライの事か・・・
出会った頃は、将来有望な冒険者だから、
結婚したら、玉の輿とか思った事があったけど、
今は手の掛かる弟って感じかな?」
「ああ、分かります。
何か放って置けない感じがしますよね。」
「でしょ!でしょ!」
そんな、ガールズ・トークをしている内に、
1日目に宿泊を予定している、
ライたちの地元である、タナーカの街へと着いた。
街の傍で龍籠を下してから、
浮龍の世話や、夜間の警備のために同行している、
王都の兵士たちを残して、ライたちは街へ入った。
「王都へ向かう時は、
馬車で、あんなに時間が掛かったのに、戻るのはアッと言う間だったな、
龍籠って凄いけど、この辺の街には無いのか?」
「ええ、浮龍は個体数が少なく貴重な魔獣なので、
緊急時にしか使えませんから、
龍籠は、各国とも首都にあるぐらいですね。」
「そうか~、残念だな。」
「そう言えば、ルクアさまは、領主さまの城に泊まるんですか?」
「いえ、ライさん達と、もっとお話しがしたいから、
同じ宿に泊まります。」
「そうですか、料理が美味くて、なかなか良い宿ですよ。」
「それは、楽しみだわ。」
「ねえ、ライ、アタイ父ちゃんに、
予定が伸びそうだって言ってくるから。」
「了解。」
その夜は、俺たちの出会った時のエピソードとか、
フローラの王都時代の話で盛り上がりながら、
久しぶりに宿の主人の料理で舌鼓を打って、
英気を養った。
翌朝、再び俺たちは、空の上の人となって、
ルクシア共和国へと向かった。
「いよいよ、今日からルクシア共和国へと入るな。」
「そうね、みんなは行った事あるの?」
「私は旅の途中で、
いくつかの街に行った事がありますわ。」
「私は、国の式典で、お父様に付いて行っただけなので、
首都にしか行った事がありません。」
「俺は、ずっと山奥暮らしだったから、
アルビナ王国から出たこと無いぜ。」
「ライも、アタイと同じか。」
「フローラ、ルクシア共和国って、どんな国なんだ?」
「ええ、海洋の国って呼ばれるだけあって、
船を使った貿易が盛んですわ、
世界中から、色々な物が流通しているので、
商人たちからは、
『思わぬ掘り出し物がある国。』と言われています。
1年を通して温暖な気候で、
その影響なのか、国民性は明るい感じですわ。」
「へ~、良さそうな国だな。」
「そうですわね、ライさまや、リーナは気に入ると思いますわ。」
「そりゃ、楽しみね!」
「龍神島には、どうやって行くんですか?」
「龍神島の周りは海風が強くて、龍籠では降りられないそうですから、
対岸にある、港の街ポルポートの近くで下りて、
そこから、船で渡るそうです。」
そうしている内に、いよいよルクシア共和国に入ってから、
最初に宿泊する街、プアプアの街へと到着した。
ここに来て、俺には一つの懸念があった。
(まさか、国を越えてまで、ゴブリンの呪いが付いては来まいな・・・)
街の入り口では、
プアプアの街を含める、この一帯の領主がルクア王女を出迎えていた。
「グフッ、これは、ルクレツェア王女さま、
グフッグフッ、ようこそプアプアの街に、お出で下さいました。」
(ルクシア共和国はオーク似か・・・)




