廃坑にて・・・
テント・毛布・着替え・手拭い、などを道具屋で購入してから、
食材を仕入れた俺は、
宿に帰って、シェフのテツジーンさんに調理を頼んでみると、
急な、お願いにも関わらず快く引き受けてくれた。
翌朝、昨日購入した荷物とテツジーンさんに作ってもらった料理を、
アイテムボックスに入れてから、オッサンの店に向かった。
「おはよう!オッサン、リーナ、
もう出掛けられるか?」
「おお、おはよう、
ライ、今日は娘を頼むぞ。」
「おはよう!ライ、準備OKだよ。」
リーナは、背中のリュックの他に、
大きな盾と、大きなウォーハンマーを持っていた、
ちょっと持たせて貰ったが、とても片手では扱えない代物だ。
「よく、こんな重い物、
片手で振り回せるな。」
「ああ、ドワーフは、身体強化の魔法に特化してるからね。」
「なるほどな・・・
そう言えば、俺はアイテムボックス持ちなんで、
必要な時には取り出すから、荷物とか武器なんかを預かるよ。」
「へ~、その年でアイテムボックスが使えるなんて、
ライは優秀なんだね。」
「おう、容量もタップリあるから、
目的のアダマンタイトも、たくさん持ち帰れるぜ。」
「そりゃ、助かるね、
ライに頼んで大正解だよ。」
「そうだろ。
んじゃ、オッサン行ってくるぜ。」
「気を付けて行ってくるんじゃぞ。」
「アイヨ、分かってるよ。」
俺たちは、街を出て廃坑に向かった。
道中は、大した魔獣も現れず、
リーナの武器を取り出すこともなく、
全部、俺のワンパンチで片付けていった。
「みんな、一発なんて、ライのパンチは凄いね。」
「ああ、特殊な魔法を使ってるから、
魔獣の体内にダメージを与えて倒してるんだ。」
「へ~、勇者イチローが使ったっていう、
気功って技みたいだね。」
「ああ、似たような物だな。」
危なげなく旅路は続いて、
暗くなって来たので、初めての野営となった。
料理はアイテムボックスに入れてあるので、
魔導ランプを使っても良いのだが、
雰囲気も味付けの一つなので、
焚火を起こして夕食にした。
「ほい、飯だぞ。」
「あれ、この料理、なんか温かいんだけど?」
「ああ、俺のアイテムボックスの中は時間が進まないから、
温かい料理を入れたら、温かいままなんだ。」
「そんな、アイテムボックス聞いた事無いんだけど?」
「しかも、獲物を入れると、解体までしてくれるっていう、
便利機能付きなんだぜ。」
「は~っ、
ライが、何かと規格外っていうのは、
良く分かったよ。」
初めての野営でテンションが上がっていた所為か、
よけいな事まで話してしまった気がする・・・
「夜番は交代で、やるかい?」
「いや、俺の気配察知は、寝てても働くから、
二人とも寝ちゃって大丈夫だ。」
「もう、ライに関しては、
何を聞いても驚かない気がするよ。」
二人ともグッスリ眠って、
次の日の朝をスッキリ迎えたので、
サンドイッチ風の朝食を済ませてから、
いよいよ、目的地の廃坑へと出発した。
旅路は順調に進んで、
昼頃には、予定通りに廃坑が見えて来た。
「やっと、着いたね。」
「ああ、特別、問題もなく、
順調に着いて良かったぜ。」
「じゃあ、さっそく、
メタルモンキーが居ない内にアダマンタイトを採取するよ。」
「了解。」
メタルモンキーの巣穴に着くと、
リーナがランプを取り出そうとしていたので、
声を掛けて止めた。
「ちょっと待った。
これを使うから、普通のランプは要らないぜ。」
俺は、懐中電灯型の魔導ランプを取り出して点けてみせた。
「それって、最近、冒険者に流行ってる魔道具よね?」
「ああ、魔道具屋に頼んで作らせたんだ。」
「作らせたって?」
「俺が考えたランプなんだよ。」
「ええ!?それって凄いじゃない!」
「ああ、たんまりと儲けさせてもらってるぜ。」
「・・・玉の輿。」
「えっ?何か言った?」
「ううん、何も言ってないよ。」
廃坑の中を進んで行くと、
メタルモンキーが運び込んだらしい、
木々の枝葉や、動物の骨が転がっている、
さらに、奥へと進むと、
オッサンに見せて貰った物と、
ソックリな金属の塊が、たくさん転がっていた。
鑑定してみると、アダマンタイトで間違いないので、
リーナに良質な物を選んで貰うとしよう。
「そんじゃ、リーナが選び出した物を、
片っ端にアイテムボックスに入れていくから、よろしく。」
「アイヨ!」




