またギルドにて・・・
ギルドの、入り口の扉を開けて中に入ると、
さすがに、朝は大勢の冒険者たちが、
受付の前に並んでクエストの申請待ちをしている。
俺は、ケモ耳嬢こと、ロザリアの前の列に並んで、
順番を待つことにした。
装備品が、そこそこ良い物を身に付けているせいか、
テンプレとも言える先輩冒険者による洗礼は無いようだ、
まあ、俺も初日から暴れたくはないので、
その辺は良かったといえる。
少しすると、俺の順番となった。
「おはよう、ロザリアさん。」
「おはようございます、ライ様。」
「俺は、様って柄じゃないからライで良いぜ。」
「では、ライ君て呼ばせてもらうわね。」
「ああ、それでいい。」
「それで、ライ君、今日はクエストの受付?」
「いや、今日はクエストじゃなくて、
俺は、田舎生まれの田舎育ちなもんで、
社会の一般常識ってもんが分からないから、
その辺が分かる物って、何か無いか?」
ロザリアは、
昨日の、俺とギルドマスターとの、やり取りを思い出したようで、
「ああ、なるほど、それだったらギルドの2階にある資料室に、
その手の本が何冊かあるから利用すると良いわ。」
「それって、俺が読んでも良いのか?」
「ええ、ギルドに所属していれば、
自由に閲覧できるわよ。」
「じゃあ、利用させてもらうよ。」
俺は、資料室の場所を聞いて行ってみる事にした。
資料室には、さまざまなジャンルの本が置いてあって、
前世で読書が趣味だった俺には宝の山だった。
(まずは、この世界から調べてみるか・・・)
この世界はシエラザードといって、
昔は種族ごとに国を作っていたらしい、
しかし、300年前に勇者イチローによって統一されて、
種族が混在して暮らす、現在の国が出来たとの事だった。
現在の、国の数は5つ有って、
中央に一番面積が広く、人口も多いフェルナリア皇国。
西に、俺が居るタナーカの街がある、森の国、アルビナ王国。
南に、海洋の国、ルクシア共和国。
東に、魔法の国、ラメール国。
北に、傭兵の国、ザドス王国が有るそうだ。
人口比率としては、
フェルナリア皇国は、人族が一番多くて、次いでエルフで、
後の獣人、ドワーフ、魔族は同じくらいらしい。
アルビナ王国は、エルフと獣人が一番多くて、次いで人族で、
後のドワーフ、魔族は同じくらい。
ルクシア共和国は、人族が一番多くて、次いで獣人で、
後のエルフ、ドワーフ、魔族は同じくらい。
ラメール国は、エルフが一番多くて、次いで魔族から人族と続き、
最後にドワーフだそうで、
魔法の国だけあって、魔法が使えない獣人は暮らしていないらしい。
最後にザドス王国は、獣人が一番多くて、次いでドワーフで、
後の人族、エルフ、魔族は同じくらい。
全体的に見て、魔族が少ないと感じたが、
300年前の戦争で魔王に組したため、
勇者一行に、かなりの人数が討伐されてしまったらしい、
また、伝説では、魔族だけが暮らす島があると言われているが、
確認されていないとのことだ。
世界観は何となく分かったので、
あとは簡単な地理や魔獣の本を呼んでおいた。
昼食をギルド内の休憩室で済ませて、
午後の予定が空いていたので、簡単なクエストを行うことにしてみる。
掲示板を見ると、俺の靴にも使われている、
風兎を10匹取ってくるというクエストが有ったので、
剥がしてからロザリアさんの所に持って行った。
「この、クエストを頼む。」
「風兎の採取ね、
風兎は、とても動きが素早いから、
普通はパーティーで受けて、
多人数で追い込みながら捕まえるんだけど、
ライ君、一人で大丈夫?」
「ああ、俺は、風兎の靴を履いてるし、
スキルで身体強化があるから問題ない。」
「そういう事なら登録するわね・・・
はい、完了したわ。」
「じゃあ、行ってくる。」
「気を付けてね。」
ロザリアに送り出されて、
ギルドを後にした俺は、
街の入り口を出て、風兎が居る草原を目指している、
街の近くで、
野兎に、返り討ちに遭っている冒険者を見かけたが、
彼に関わると、なろうの先輩からクレームが付く恐れがあるので、
スルーすることにする。
草原に到着してから、
気配察知を働かせると複数の反応があった。
俺は、魔力を纏って気配を殺して、
片っ端に風兎を狩って行く、
クエストのノルマである10匹は1時間ほどで集まってしまい、
これで、10万ギルの報酬とギルドポイントを5ポイント入手となる、
俺は、後から、「冒険者って儲かるんだな。」とロザリアに聞いたが、
実際には4~5人のパーティーで2日掛かりのクエストなので、
それほど、儲からないらしい、
俺が、規格外過ぎるんだとの事だった。
ちなみに、パーティーで受けた場合、
お金は山分けとなるが、
ギルドポイントは各自に5ポイントとの事だ。
俺は、クエストに参加していたことにして、
不正が出来るんじゃないかと聞いてみたが、
ギルドカードに日付と討伐記録が、
自動に記されるので不正は出来ないとのことだった。
ノルマを達成したので、
俺は、狩りの最中に気になった問題を解決するとした。
それというのも、魔法を纏う際に、
体からパチパチと放電しているので、
他の冒険者などに見られると、
雷魔法がバレる恐れがあるのだ、
ギルドマスターと昨日話したように、
用心するに越したことはないだろう。
俺は、人目に付かない林に移動して、
気配察知で付近に人が居ないのを確かめてから、
練習を開始した。
「え~と、体の表面に、
うす~く雷を纏うイメージをして・・・あっ!」
ビリビリビリ・・・
「あばばばばばっ!」
うっかり、皮膚の下に入り込んでしまい感電した。
スキルがあるので、死ぬことは無いものの結構な衝撃だった。
「怖ェ~、電気怖ェ~、
ごめんよ、勇者イチロー、ビビリなんて言って、
確かに電気怖いわ。」
それから、ビクビクしながら練習を再開したのだが、
少しすると、魔力操作のスキルが働いてくれたのか、
上手く雷を纏えるようになった。
良く見ると、体の表面が、うっすらと光っているんだが、
たぶん昼間なら分からないだろう。




