店にて・・・
冒険者登録と、魔獣の素材などの売買が終わったので、
オッサンの武器屋に行くことにした。
「オッサン居るか?」
「おお、ライか、
冒険者登録は終わったのか?」
「ああ、ギルマスなんかと色々あったが、なんとか登録できたよ。」
「そうか、それで、何か欲しい物があるとか言っとったが、
何じゃ?」
「それなんだけど、俺って戦闘タイプが魔法拳士で、
拳に魔法を纏って近接戦闘をするんだ、
だから、拳を保護するような物がないかと思って来たんだ。」
「なるほどの・・・
拳を保護したいのか、
じゃあ、これなんかどうじゃ?」
「おおっ!ソレは!!」
そこには、黒く輝くアレが握られていた。(下ネタじゃないぞ。)
「ソレは、漢の憧れ、指ぬきグローブじゃないか!!
まさか、こんな所で出会えるとは!!」
「こんな所で悪かったのう。」
「い、いや、今のは感動の余りに口走ってしまっただけで、
オッサンの店が悪いとか言ってるんじゃないぜ。」
「それなら、良いわい。
どうやら、気に入ったようじゃな、
そのグローブは、ブラッククロウラーという、
芋虫型の魔獣にミスリルの粉を混ぜた餌を与えて、
紡いだ糸を布に織り上げて作ったものじゃ、
多少、値は張るが魔法が通りやすく強靭で、
しかも布の柔軟性もあるのじゃ。」
「値が張るって、いくら位するんだ?」
「一組で30万ギルじゃ。」
「それじゃ、これで2組貰えるか。」
俺は、アイテムボックスから金貨を6枚取り出して、
オッサンに渡した。
「おぬし、新米冒険者の割には金を持っとるの。」
「ああ、街に来るまでに狩った魔獣なんかを、
ギルドで売ってきたんだよ。」
「ほう、これだけの稼ぎがあるんじゃ、
なかなかの腕前のようじゃの。」
「おう、オッサンも何か欲しい素材があったら、
取ってきてやるぜ。」
「その時は、お願いするかの。」
「ところで、今夜、泊まる宿が決まってないんだが、
部屋が清潔で飯が美味い、良い宿ってあるか?」
「それなら、うちの店から50メートルほど行った右側にある、
『馬の骨亭』が、お奨めじゃぞ。」
「名前的に、どうかと思うが、
オッサンの、お奨めなら行ってみるか。」
「おう、一泊2食付で1万ギルと、
この街では高いほうだが、
冒険者が稼げるようになったら泊まりたい宿ナンバーワンに、
5年連続で輝いとるからな。」
「おお!何となく凄そうな気がするな。」
俺は、オッサンに別れを告げて宿を目指した。
「ここか・・・
海賊旗のシャレコウベの部分が、
馬の頭蓋骨になってる、
この看板のセンスは、どうかと思うが、
取り敢えず入ってみるか。」
「すいません。」
「へい、らっしゃい!」
「居酒屋か!!」
「泊まりですか、食事ですか?」
そこには、この宿の看板娘なのか、
10代後半ぐらいに見える、人族の可愛らしい娘が居た。
「泊まりで食事も付けてもらって、
とりあえず10日で、お願いします。」
俺は金貨を渡しながら言った。
「はい、10万ギルですね、確かに頂戴しました。
こちらが部屋の鍵になります。
夕食は、夕の鐘が鳴ってから、夜の鐘が鳴るまでの間召し上がれます。
朝食は、朝の鐘が鳴った後なら召し上がれます。」
「お風呂って、あるんですか?」
「お風呂は冒険者ギルドの近くに、街の共同浴場があります。
個人的に持ってるのは貴族様ぐらいですね。」
「分かりました。」
俺は、とりあえず部屋へと行ってみることにした。
部屋は、8畳ほどの広さで、
ベットと物入れが置かれている、
なかなか清潔で住み心地は良さそうだ、
ベットに寝転がってみると中に何が入っているのか、
絶妙な弾力を伝えてくる。
「これで、食事が美味けりゃ、1泊1万ギルでも高くないな。」
俺は、夕の鐘が鳴るまで、部屋でゴロゴロして過ごした。




