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 視界が白くぼんやりと開けるのと同時に、鋭い機械音が耳を刺激する。

 その音に驚き、薄かった視界がハッキリと広がり、それと同時に頭に衝撃が走る。

 目の前の白い天井に、これもまた白い蛍光灯が烈良く並んでいる所など、今まで生きていた中で学校しかないが、こんな機械音がする学校など、工業化ですらあり得ないわけで、ここが学校ではないことは、痛む頭でも考えられた。

 ここがどこだか辺りを見渡そうとすると、頭の痛みに伴って、身体全体に激痛が走った。どこがどう痛いのかさえ、自分では理解できないほど、ただ、全身に電気が通ったように痛いのだ。まあ、実際電気の痛みなど知らないのだが……とにかく、気を失ってしまうのではないかというほどだ。辛うじて気を失わなかったのは、未だに慣れないこの機械音のせいだろう。

「お姉様〜! 彼、目を覚ましましたよぉ!」

 機械音と同じに鋭いような、それでいて甘いような女性の声が聞こえる。

 誰かを呼びに行き、数分もしないうちにもう一人の女性を連れて戻って来る。

「大丈夫ですかぁ?」

「…………」

 見知らぬ年上だろう女性に、覗き込まれる形で聞かれ、少年は言葉がでなかった。

 ぱくぱくと口を動かしていると、

「こらこら。そんなんじゃ彼がびっくりするだろう」

 半ば呆れたような、からかっているような声音で、彼女よりもさらに年上だと思われる女性が少年の額に手の平を当てる。

 自分に害を与えるわけではないと悟った少年は、警戒することもなく、目の前にいる女性二人をただぼんやりと見ているだけだった。

 一人は二十代前半くらいの軽い感じの女性で、もう一人は医者なのか、白衣を着ていて、しかしそれがさまになっている二十代後半くらいの女性だ。どうして自分はこんなことになっているのだろうと、思わず考えてしまう。

「安心して。私たちはここ、保護センターのただの社員だから」

 怖がっているわけではなかったが、建前としてなのだろうか、白衣の女性はそう言った。

「保護……センター?」

「そう、身内の居ない人や捨てられた子供を保護している所よ!」

「君、名前は?」

 ここがどういう場所なのか、まだはっきりと理解する前に、名前を聞かれて、少年はとっさに、

「……のぞ……む……」

 頭に浮かんだ言葉を口にした。

 何故だろう、どうしてここにいるのか、何故こんなにも身体が痛いのか、思い出そうとしても、出てくるのは『のぞむ』という自分の名前と、

「洋っ!」

 とっさに頭に思い浮かんだたった二つの名前のもう一つの方を、飛び上がると同時に叫んでいた。しかし、痛みに阻まれて置きあげれずに背中を再びベッドに預ける。

 何故、思い出そうとしても思い出せないのだろう。不思議と彼の瞳からは涙が溢れていた。

 白衣の女性が、しばらく寝ていろと言って、少年は目を閉じた。


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