お受験開始
慌しい引越しも終わりとはならず、荷物は馬車に置いたまま、宿で過ごす。
10日で学術国家サイレイには着いたが、そこから一ヶ月以上も宿暮らし。
アルに聞いたら、
「試験前では止まる場所が無くなります。こういうのは早めの行動が大事なものですので。」
と言われてしまった。
まあ速めの行動に文句はないが、暇なので色々見て回った。
問題は何も起こらず平和な日々。
この国の周りに4都市あり。
その4都市は聖王国アルロイス、フルネイス王国、チェロード国、もう一つの国の名前は忘れたけど。
この4国が1都市ずつ支援している小さな領土と考えても良いくらいに。
その4都市にはギルドがあり。
そのギルドから派遣されサイレイの周りの魔物や獣は毎日狩られている。
この4都市をサイレイの領土と思う人とサイレイはサイレイのみを領土と思う人が居るが真実はわからない。
何故なら4都市から援助もされているし、サイレイは4国に人材を育ててから送り出しているからだ。
どっちも持ちつ持たれつで領土だとか小さいこだわりは学術国家サイレイ自体には無い様だ。
それにこの国には王はなく、領主も居ない居るのは学院長でこの国の財布を握っているのは経理担当の事務員だ。
まさに学園がすべてとも言える場所だ。
長かった2ヶ月弱、平和な日々、暇とも言うが、今日がやっと学園の試験日だ。
学術国家サイレイは5分割されている。
学区、住宅地区、商業地区、研究地区、特別研究学区の5個だ特別研究学区だけは開放されてないが、他の4地区はすべて開放されている。
俺はアルと試験会場のある学区へ向かっている。
「アルは俺の試験中どうするつもりだ。」
アルに聞いてみた。
俺は日本に居たときも経験がないので聞いてみた。
「そうですね、常にお傍にと言いたいのですが、そうも参りませんので会場の外で待たせていただきます。」
「そうかまあ好きにしてくれ。」
自分で聞いておいてなんだが、特に返答は用意してないので適当に返しておいた。
「ここが試験会場か、思って頼りでかいな。」
大学っぽい概観だ大学に行った事ないのに、そう思ったのは外壁が白くないからだろうか。
私立ではなく市立の学校しか見たことないせいか自分の行く学校のイメージは清潔なイメージの白い外観のはずなのに、外壁は剥がれていて、ところどころに地の色つまりコンクリ丸出しの色だった。
最初から塗ってすら居ないような建物しか想像していなかったせいで豪華に見えてしまった。
木造ではあるが柱には補強の鉄骨でも使ってそうな感じにも見える。
色は木のもともとの色か色を着けたのかわからないけど、明るい茶色ではなく濃い茶色で良い感じに見えてる。
入り口には警備の人員が居た。
門って感じでもないので現代風に言うと警備員だろが、ここではきっと門番だろうな。
門番とこれからは表記しようかな。
「おはようございます。」
門番に軽く挨拶しておいた。
アルも「おつかれさまです」と声を掛けていた。
「おはよう、受験者か、そこの先に窓口があるからそこに行ってみな。」
挨拶が気に入ったのか、親切に窓口の場所を教えてくれた
「ご親切にありがとうございます」
普段なら絶対に言わないが良い印象を与えておくのは悪いことじゃないだろう。
そう考えならが窓口に向かう。
「ネル様、心の声が黒すぎです。理由は普段と言葉遣いが違いすぎるからです。」
アルが俺の心を読んで耳元で小声で伝えてくる。
たしかに俺はなんでわかったって言おうとしたさ。
だからって先に理由を話し出すとか本気で心が読めるんじゃないかとか思っちゃうだろ。
怖いからやめて欲しいね。
「アルはなんでそんなになったんだ、俺が7歳になる間に一年で5歳くらい年取ってる感じで老けていくし。」
「そんなことはありませんとネル様私はまだ47歳ですよ。」
「いや最初のほうは20代後半に見えたのに今は60は過ぎの顔してるぞ。」
思わず本音をぶちまけてしまった。
しかも物心着く前の頃に見たアルの容姿の話までしてしまった。
「ここ何年か心労を重ねましたからね。」
アルはそれ以上言わなかった。
俺のイージスシステムの索敵にずっと敵が居なかった事を考えればわかる話だ。
アルはこれ以上の眼球蒸発事件を起こさないために細心の注意を払って生活していたのだろう。
そして俺がこのイージスシステムを展開してると気づいてるのか?
最近は索敵だけで迎撃システムのほうはとりあえず止めてある。
それに気づいて学園を勧めたかのようなタイミング。
というのもあって改めてアルの執事としての実力を感じていた。
「そんなに見つめられては困ります。」
「乙女か」
アルがボケた。
初めてのことで動揺させようとしたのだろうが甘いツッコミスキルは多少あるつもりだ。
そのせいでアルがつまらなそうな顔をしている。
きっと渾身のボケだったのだろう。
「すみません、受験の受付はここで大丈夫ですか?」
窓口にたどり着いた俺はそこにいた事務員に話しかけた。
「はい、大丈夫ですよ、受験生ですか?ここに名前を書いて頂戴。」
「わかりました。」
俺は名前を書いたが俺は苗字を名乗れないし本名も書けないので、ネフェルではなくネルだ。
「はい、ありがとうございます。試験代が10gです。
ですが総合成績で9割以上の得点を出しますと入学説明の時に10gは申請していただくと返ってきますよ。
この説明を毎年するんですがまあ総合成績で9割以上超える子は10年に1人いるか居ないかだそうよ。
私はまだあったことないわ、10g確かに受け取りました。
これ番号札ね。
この番号札の席があっちの奥の部屋にあるからそこで筆記試験があるわ。」
話が止まらないのでアルが10gを出して渡すと、話が止まるかと思ったがそのまま話を続けて、席の場所も教えてもらった。
「ありがとうございます。9割以上を目指してがんばります。」
「その番号札は無くさないでね。」
俺の言葉を無視して番号札のことを言われた番号札には324と書かれていた。
ただの木札だが無くすと受験資格とか失うかもしれないので大事に持っておこう。
「アル結構受けに来てるんだな。1時間前に来たのにこの番号だからな。」
「そうですね窓口も4箇所もあって、そんなに並んでませんでしたから早く来た人達が居るんでしょうね。では私はここで待たせて頂きます。がんばってください」
「ああ、行って来るよ。」
そう言って200~399と扉に書かれた部屋があったのでそこに入る。
長机がありそこに自分の番号を見つけたので座る。
よく考えたら窓口が4つあるんだからあらかじめあの窓口は300番台の窓口だったのかもな、それでも24なのでその前に23人は来ているのだろう。
「後30分か。」
俺は座りながら索敵をしたり、色々していたそもそも目の見えない俺は今仮面をつけている常態で極めて怪しい風貌だ。
受けうけのおばさんは気にしてなかったようだがここに居るやつらは皆俺を見ている。
だが俺は仮面を外せないし目を晒すわけにも行かない。
俺の目はアルが言うにはすべて真っ黒というか紫というか毒の影響らしく変色して居るという。
だが腐っているということでもないらしい。
自分では色の判断がそこまで正確には出来ないのだ。
俺が出来るのは光感知で色の濃さというか、上記で書いた茶色も木で出来ているという判断と色の濃さで判断している。
あくまで予想で言っているので、正解かどうかわからないがそう考えないと、自分の頭の中で想像するしか出来ないし。
白黒の世界ともあまり思いたくないからだ。
難儀な事この上ない。
仮面といってもアイマスクという感じで、逆三角形の布を二枚をヒモで結んでいる感じになっている。
まあ色が濃いから濃紺か黒とかそういう色なのだろう。
周りの視線を目が見えないが為に、余計に感じやすいのだが気にしないようにしていると、部屋に誰か入ってきた。
「これから試験を始める全員席には着いている様だな。
受け取ったものから試験を開始して良い。
まあそんなに早く受け取らなくても試験時間は3時間あるから気にするな。
それと早めに終わったものは実技に言っていいぞ3時間ちょうどで行くと実技の試験場が一杯になってるからな。」
試験官が説明をしながら試験用紙を配り始めた。
試験用紙は木板で試験問題は焼き付けてあった毎年きっと同じなのだろう。
そこから考えられる答えは、この試験は点を取らせるものじゃない事と、試験結果で合否が左右されることが少ないことだ。
字が書けないとかは論外だが、知らない字とか出てきて回答出来ないとかで知識レベルの確認なのだろう。
解答用紙はそれなりの紙が使われていた。
板を置かれた時に置いた試験官の感情が揺れたのがわかったが気にしないでおく。俺を見て何も思わないほうがすごいからな。
試験用紙の内容は予想通りだった。
戦争や英雄の名前や年代が穴抜きにされた問題や算術、文章問題や魔法の知識の問題だ。
魔法の知識は魔法は詠唱しないと発動しない。
正解なら何も手を加えず、不正解なら正解を書け、とかそんな問題だ。
正解を書かせた時に知識の深さが見れる。
例えば詠唱無しに発動できるとだけ書いた場合は普通の知識、詠唱は発動キーにしか過ぎず、魂に魔法が刻まれているので。
経験を経て頭の中でのイメージをキーとして詠唱をしなくても発動は可能などの少し深く説明をつけると知識の評価が変わるのだろう。
これを考えると魔法の知識レベルは重点的に計ろうとしてるな。
最後の問題にはいや問題じゃないか希望か、希望学科を書けと書いてあるしな。
学科は聖騎士科、上騎士科、騎士科、準騎士科、侍従科、従士科、料理科、医術科、魔法学科、実践魔術科、魔道科、賢者従士科。
なんか学科が色々あった。
ちなみに聖騎士科は貴族が準騎士科の過程を経て受けられる学科で、上騎士は従士科から騎士科を経て平民でもなれる学科で。
貴族にとっての上級騎士は実力が足らず聖騎士になれなかった為に入る場所だ。
上騎士になれなかった平民は従士科から騎士科に行くか学園を卒業する。
ちなみに従士科卒で学園を辞めると軍では従士長からはじめることが出来るがもちろん人気はない。
騎士が花形だからだろう。
侍従科や料理科は2年。
医術科は6年学び卒業すると例え王城や貴族の城で人数が足りてても採用されるからと金のある平民には人気の高い学科だ。
平民には高い学費だが拘束年数も侍従科と料理科は、2年と一番早く卒業出来るし卒業さえしてしまえば一生安泰だ。
最後に魔法学科、実践魔術科、魔道科、賢者従士科だ。
魔法学科は最初に知識を詰め込む、それが終わると実践魔術科でその次が魔道科でその魔道科で認められると魔術科で勉強を受けながら賢者従士科も受けられる。
なぜなら魔道科で教えてるのは大体が賢者だからだ。
そのまま賢者の付き人をすることで賢者従士科の勉強だからだ。
学科の説明はこのくらいで
俺は希望の欄に準騎士を経て上騎士と実践魔術科を経て魔道科と書いた。
俺は名前しか書いてないし貴族とも書いてないので、たぶん面接で聞かれるだろうがその時はその時だ。
聖騎士ではなく上騎士書いたのも従士と書かないのも俺が兄に会う可能性を絶つためだ。
兄は確か6歳上なので王宮で勉強してなければここに入学しているはずだからだ。
出来た弟だね俺って
こんな感じで筆記試験を1時間半で終わらせて、問題用紙の木板と解答用紙を渡して実技試験会場へ向かった。
読んで頂きありがとうございます
魔法は魂に刻み込んで覚えますが神聖魔法は魂に刻み込んで覚えないので違いが有ります、学園での勉強に神聖魔法はありません