赤ん坊ライフって大変だ
俺はいつものように筋トレを開始した。
筋肉痛って感覚はないけど、毎日手をグーパーしたり今では寝返りも出来るし、ハイハイも出来る。
あとは立ち上がるのを待つばかり、そんな話はいつでも出来るから話を少し前に戻そうか赤ん坊を乗っ取った次の日の話をしよう。
俺は一眠りして起きた時やっぱり目が見えない。
体も生まれて半年くらいか、寝返りが出来そうで出来ない筋力しかないようだ。
早い子供はもう出来るらしいが今の俺にはまだ出来ない。
ドアを開けて誰かが出て行く音がした。
今気づいたが、誰かが近くに居たようだ。
出て行ったってことは最初に居たって事か目が見えないのはやはり弊害だな。
もう一度ドアが開く音がしたので声を出して機嫌を取るか。
「ア゛ー」
俺の声ひどっ。
赤ん坊の声ってこんなに嗄れてたっけ。
「なんということだ、昨日のが夢だと思いたかったがやはり夢ではないのだな。」
男の声が聴こえてくる。父親か?
「執事長様、これはやはりあのメイドが毒を盛ったという事ですか。」
父親じゃなかった。
「あぁ、毒の影響で喉が爛れているので、声があのように変わってしまっているし、目を見てみなさい。
あれでは物を見ることももうないでしょう。
一体私は王になんて報告すればいいのだ。」
王ってここ確か城だったな王の息子だったんだっけ。
「死ななんかっただけでも、幸いと思うしかないですね。」
「死ななかったからこそ不幸なのだろう。
喉は治ったとしてもあの目は治らないのだぞ、王位は元々三男ですから可能性は少ないが、今回の件でどちらかの王子の一派が仕掛けた可能性は否めない。
生まれてすぐの赤子になんて仕打ちをしてくれたんだ」
執事長は怒りに震えているのだろう。
姿は見えないが感情が見えるような気がするそれに何喋ってるかよくわからない。
この執事長意外と若いのかもな。
ん?俺、目が見えないのに、感情が見るような気がするってなんだ?
あそこに気配というか熱を感じる。
これが執事長か、そうか俺の魔法に熱感知があったな他にも暗闇でも昼間に見えるように光感知とか色々あったのを思い出した。
目が見えない状態でも戦えるってかっこいいと思って、魔法沢山買った時に感知系ばっかりにしたんだったな、色はわからないけど。
全ての魔法使った、魔力感知、熱感知、光感知、音波感知、気配感知、索敵、嗅覚強化、聴覚強化、周囲を探るのに必要なのはこのくらいだろう。
千里眼の魔法もあるが目が見えない状態で使えないかもしれないのが怖いので今は使わないでおこう。
俺は目が見えないが見えること以上の感覚を魔法で補ってしまったかもしれない。
索敵では俺によくない感情の者がわかる。
執事長は問題ないが、メイドが索敵に引っかかってる。
俺は心の中で「マジか」と驚いたがどうすることも出来ない。
この際魔法で潰すか。
場所は感知の魔法でわかっているし索敵にも引っかかってる。
しかもこの世界の魔法は無詠唱も可能だ。
俺は怒りに震えている執事長に知らせようと魔法を使うことにした。
私は腸が煮えくり返って居た。
目の前の赤ん坊は王子でそれを守るのが執事長たる自分の役目だというのに毒を盛られるという失態を犯した。
しかもそのせいで王子は目が見えなくなってしまった。
死なないというだけでもこの子が特別だというのはわかる。
毒を持ったメイドは同じ毒で自殺していたのだから。
「きゃあああああ」
イキナリ隣に居るメイドの顔から煙が上がっていた。
私が考え事をしている間になにが
「大丈夫か。」
私が駆け寄ろうとすると空中に氷でも文字が書かれていた。
〝その者はこの子の敵、この子を害する者はこれからも目が焼かれるであろう。夢々忘れるでない。この子は私の可愛い御子だということを〟
私には理解出来なかった。
だがこれは王に伝えねばならない事だと、一字一句間違えることなくこの字を覚えてからメイドを縛り上げた。
メイドは既に気絶していたので縛り上げるのは問題無かったが、メイドの眼球が蒸発して居て、可哀想な有様だった。
その直後それは起こった。
城中の至るところで叫び声が上がっていたのだ。
阿鼻叫喚の地獄絵図とはこういうことをいうのではないだろうか。
「なんということだ。」
城中を走り回り確認しながら私は玉座の間を目指した。
城の全員ではないが100人以上は目が蒸発して居た。
これほどまでに王子の敵が居たのか。
「ご報告がございます。中に入らせて頂きます。」
私は玉座の間にたどり着きドアを明ける前に声を掛ける。
普段は返事を待ってから入るのだが、ドアの奥からも悲痛な声が聴こえてくるので返事を待たずに開けた。
「何事だ」
宰相は無事のようだ。
王も無事か、私はこの二人の安否が一番気になっていたのだ。
安心の為かその場に崩れ落ちてしまった。
「ご報告申し上げます。」
崩れた体を跪く形にごまかして、報告することにした。
「今、城で起こってるこの事態は第三王子ネフェル様暗殺が原因で引き起こったものです。」
「ネフェルが暗殺だと、ネフェルは死んだのか。」
王は取り乱していた。
まだ生まれて半年の赤子だ。
これから立ったり話したりを楽しみにしていた我が子が死んだと思ったらこうなるのかもしれないが、王だからだろう顔の動揺は隠せてないが声は冷静な声にしか聞こえなかった。
「いえ、ネフェル様はご存命にございます。
しかし先ほどネフェル様に近づいたメイドの目がいきなり蒸発をして。
私の目の前に氷の文字が現れました。」
「その文字はなんと書かれていたのですか。」
宰相が聞いてきた。
「〝その者はこの子の敵、この子を害する者はこれからも目が焼かれるであろう。夢々忘れるでない。この子は私の可愛い御子だということを〟
と書かれて居ました。
私にはネフェル様を守る何かがいるのではないかと推察します。
現に大人でも一瞬で死ぬほどの毒を盛られたネフェル様は今もご存命なのです。
そしてネフェル様は毒のせいで目を失いました。
今のこの惨状はネフェル様の目が見えなくなった事を怒っている何者かが起こしたのではないかと考えます。」
私は私の言うべき事を言い終えると、緊張やら恐怖やらでそのまま気を失ってしまった。
いや~やりすぎたかな、俺は反省して居た。
目の前のメイドが敵だったし索敵で敵だらけだっし俺の魔法じゃなくて誰かが俺を守ってるって見せたかったんだけど、如何せんやりすぎたな。
ピンポイントで目の中の水分を沸騰させるなんてしちゃったんだろうな。
それも城の中に居る索敵に引っかかった全員にやっちゃったよ。
これだけ多くの盲目の人を世に出したら、この国混乱するかもやっちゃったものはしょうがないか。
それにしてもこの魔法は便利だな覚えて正解だった。
この城内、眼球蒸発事件に使った魔法は索敵、熱感知、超感覚、熱操作、並行作業、並列操作、遠隔発動、この7個だ。
索敵で敵の位置情報を確認して、熱感知で体の全体像を見て超感覚にてピンポイントで目を見つける。
そこに遠隔発動と熱操作で眼球の熱を上昇させていく。
もちろん遠隔発動とは離れたところから魔法が出る魔法だ。
例えば普通にやろうとしたら目の前に火の玉とかが出てくるだけなのだが。
相手の目の前で火の魔法を出すことが出来る。
魔法は切り離す直前に発動させる仕組みだが遠隔魔法は魔力事態をゴムのように伸ばして、そこで発動と同時に魔力を切り離すそんな仕組みになっている。
魔力が見える人間や魔力感知が使える人間には、この魔法は効かないかもしれないがとても便利な魔法だ。
こっそり伸ばして発動すれば、人の眼球だけを蒸発させることも出来る。
並列作業、並列操作で同じように眼球蒸発が量産されていく。
因みにこの魔法を実行するには膨大な魔力が必要でこの魔法だけで俺の魔力の半分を使っている。
遠隔操作で遠くまで魔力を伸ばすための魔力が必要なこととそれを大量に量産したため膨大な魔力になってしまった。
こんなこと出来るならなんで死ぬ前にやらなかったんだって思われそうだが、考えてみよう。
平和な世界で生きてきた俺が争いごとで冷静でいられるだろうか。
俺は死んでから各地で争いごとを見て、巨人と人間の戦争も見た。
いろいろな経験の末、漸くこの悪辣な魔法の使い方を覚えたんだ。
馬鹿は死んでも治らないというが、経験が人を成長させるのだと俺は実感した。
死後の経験は大事だ、それが今の現状だからな。
人の叫び声が城中に響いている。
俺はその声を子守唄に寝るのだが起きたあともこの地獄のせいで俺には飯が来ない。
乳母的なものでも哺乳瓶でもいいから何か欲しい物だ。
普通の赤ん坊なら虐待レベルで食事制限されてるぞ。
なぜなら昨日の晩から一切何も摂取してない。
赤ん坊って3時間置きくらいで食事するんじゃなかったっけ?
俺は子育ての経験ないからわからないけど、流石に15時間くらいなにも食事してないぞ。
「ア゛ヴア゛ヴア゛」
声を出して見たが、喉がやられてるせいでひどい声だ。
まあ次の日には平穏な俺の日常が始まってたんだよな。
乳母も居て、索敵に引っかからないメイドもいて執事長も傍に控えていて。
まあ聴覚強化で色々な噂は聞こえてくるんだけど。
超感覚のおかげで設置型の盗聴器とかとは違うが指向性マイクみたいに一点の方向にのみ聴覚強化が働いて他の音は聞こえない感じに出来るのが面白い。
原理がわからない超感覚は五感を使い、勘がよくなるとかそういう魔法のはずなんだけどなんか俺が使うとピンポイントなことが可能になる。
魔法って面白いな。
今俺がしていることがある。
索敵の範囲を30mにして、その範囲に入った敵は遠隔発動の魔法でのピンポイント眼球蒸発。
いくつかの魔法を使って俺なりのイージスシステムを作り上げ。
専守防衛ではなく、範囲内では攻撃こそ最大の防御という恐ろしい迎撃システムだ。
そのおかげで俺の周りには誰も来なくなったというか、俺自体が片田舎の豪邸に押し込まれたのだった。
俺が王子じゃなくただの平民なら山に捨てられてただろうな。
俺はあの日城にいた長男とその母親の目も蒸発させていたようで、次男はちょうど母親と貴族街で買い物をしていて助かったそうだ。
次男が敵かどうかわからないが長男は完全に敵だったんだろう母親もろともな。
兄の目を蒸発させるような三男は危険だから隔離させるのも当たり前だし。
あの脅しが聞いたのだろう。
殺すことも危険と判断されて今俺は片田舎で立つ練習をしている。
因みに肉体活性や身体強化で立てるのだが肉体活性は新陳代謝が上がるので食事が少ないと餓死してしまうし。
身体強化をして立てても通常で立てないなら自分のためにならないのでしていない。
俺はこの体でのんびり成長していくしかないんだよね。
目が見えないってのは不便にならないこの世界は素晴らしいね。
筋トレに疲れた俺はそのまま眠った。
次の話から会話を増やそうと思います
読んでいただいてありがとうございます