直談判はしてみるものだな
俺は逃げ出して目的の場所に居た。
「すみません、お時間いただけますか。」
「勝手に入ってきて、最初に言う言葉がそれかい、時間がないから手短に聞こうか。」
おっ、断られるかと思ったが案外行動してみるもんだな。
「はい、実践魔術科の今年最初のクラス分けの模擬戦を見ましたが、子供の遊びのようでした。
しかも一年たって育たなかった者と言うのが居たのですが、新入生にすら手も足も出ずに負けていました。
この学園は勝手に成長する生徒だけを育てたということにするのですか?
それとも優秀な生徒だけしか育てず、下の者には金を授業料と吐き出させて自主的に辞めるのを待ってるのですか?」
「どういうことだい?少し話が見えてこないな、そんなにひどいのか。」
偉そうに話をしようとしてたんだろうか。
最初と話し方が変わったすごく話し方が大分若くなった。
「そうですね、実践魔術と言うからには魔法を実践する。
授業内容ではなくクラス分けでの模擬戦風景だけなのでなんとも言えませんが、発動させたりして成長していくのでしょう?」
俺は授業内容までは把握してないので学院長に確認を取る。
ああ、話し相手は学院長だ。
「そうだな、その考えで間違ってない。」
大体合ってたか、それならいいやと話を続ける。
「でも魔法学科は座学です、実践魔術科に入ってから魔法を覚えるのでしょう?
その魔法学科卒業すぐの新入生に負ける。
留年した人たちは何を教わってきたんですかね。
むしろ駄目だろ放置してきたんじゃないんですか?
誰かが指導してたなら火魔法を飛ばすだけで精一杯だったりはしないでしょう?」
俺の見た目では、適当にやってろ、とでも言われたくらいに何も出来てないように見えたからこの話を持ち出したかったんだ。
「確かにそれはひどいな、火魔法を飛ばすだけで精一杯か。
学園という殻の中で腐敗してしまったのかもしれんな。」
学院長も俺の考えを少しわかってもらえたかもな。
そんな教師達が居る実践魔術科なんて行きたく無くなるのは仕方ないだろう。
「そこで新入生に負けるような留年生いや二年生も作る教師には、やめて頂くか減給を進言いたします。
そして来年までに俺が魔法学科の生徒の午後の時間を使って生徒全員を育てて、実践魔術科の教師の無能を曝け出してみせます。」
俺はここに来る事を決めた時からこの事を学院長に言おうと思っていた。
俺が教育すれば留年生全員倒せるかもしれない事と、その結果次第であの教師供に無能のレッテルを貼り付けてやろうと。
「それは面白いな、それでネル君だったかな君が負けた場合はどうなるのかな?」
そうか、負けた場合ねぇ何をすると負けなのかな。
負けなんて俺にはないだろう、俺は生徒の成長を助けるだけで、賭けとかをしてるわけではないな。
「負けとはどのような事を言うのですか、誰か一人でも負けたらと言うのであれば俺はそんな賭けには乗りませんよ。
それに学院は生徒の質、向上を一生徒の力によって得られる、と考えるのではなく勝ち負けと言うことは俺に何らかの報酬をくれる、と言うことですか?
無償の上ペナルティとかおっしゃってませんよね」
考えた結果、只で人を育てて勝ち負けって、俺に損しかないんだが何気にひどいね学院長。
「そうか、報酬が必要かじゃあ9割以上の生徒が勝ったら実践魔術科の教師全員から給料を1年分君に譲渡にしよう。
それと君の育てた生徒が3割負けてしまった場合、何らかのペナルティーを与えるというのはどうだい?」
「俺は構いませんがその条件を教師に話してくださいね。
俺としては教師を学院長が大分下に見ていると考えて裏工作や妨害。
もしくは俺自身に危害を加えるかもしれませんね、面白そうです。」
俺は本当に面白くなりそうだと思っていたが学院長は顔が青くなってきて。
「君にペナルティーの条件を付けるのはやめようだが新入生の勝ちの数によって報酬は考えておこう。
教師は負けるとは思ってないだろう。
負けたら減給とだけ伝えておく、因みに午後にネル君が魔法学科の生徒に魔法を教える許可はしよう。
それでいいかい?それと明日から始めてくれていい。」
報酬を用意してくれるのか。
やる気は少しは出そうだな、それにしてもどうやって指導しようかな。
「はい、ありがとうございます、わかりました、それでは失礼いたします。」
「はぁ、今日は緊急職員会議だな。」
と学院長が漏らしていたが気にせず部屋を後にして教室に向かった。
教室に帰ると皆も居た、気づけばもう授業の時間が終わっていたようだ。
「ただいま、皆まだ残ってたのか。」
俺は残ってる4人と見て扉を開けつつ話しかけた。
そうグレゴリーも残っていた・。
「まだ残ってたのかじゃない、お前こそ何処に行っていた。」
なんかグレゴリーにめっちゃ睨まれてる、皆も頷いてるし仕方ないな。
「学院長に、実践魔術科の教師が無能だから来年までに改革して欲しいという直談判をしてきた。
それと明日から午後の空き時間に、俺が魔法学科の生徒に魔法を教える許可をもらってきた。」
「本当に、じゃあ明日から魔法を教えてもらえるのね。」
ノーマは目を輝かせながら言ったが、他の奴らは学院長に直談判とか教師が無能とかって言葉を反芻しているのだろうか固まっていた。
「ああ、ノーマその通りだから今日は教えられるだけ、ノルに魔法の知識を詰め込んでやってくれ。
明日から皆で魔法を覚える、グレゴリーは魔法を使えるのだから一緒に手伝ってくれると助かるんだが。」
「なんで俺がそんなことをしなくてはならない。」
「来年、あんな留年生が居る実践魔術科で勉強したいのか?流石に嫌だろう?
火の魔法を飛ばせるのが精一杯なんだぞ一年魔法を習った奴がだ。
俺はそんなの我慢できないね。」
「言いたい事はわかるが、才能がないんだからしょうがないんじゃないのか。」
「ほう?その才能が無い人間でも魔法を使えるようにしたのが賢者の努力なのに。
それを否定するのか?
今までの賢者批判とは俺には出来ないことをサラっと言うんだな。
これから魔道士や賢者を目指す者の発言とは思えないんだが。」
俺の言葉にグレゴリーは言葉を発することが出来なくなっていた。
そう才能なんてくだらないと言わんばかりに先人たちは魂に刻むという方法を編み出したと言うのに。
才能がないからと諦める、育てない、そんなのは間違っているんだ。
「グレゴリーわかったか、才能なんて物は魔法を使うもの魔法を極めていく者にとってはある意味では意味のないことなんだよ。
どれだけ才能の無い者の助けになる事が出来るかなんだよ。
教師がそれを出来てないことは理解出来たか。
魔法の才能が有ろうと無かろうと構わないが教師として無能なのは学生にとっては迷惑以外の何者でもないんだ。」
俺はグレゴリーのレベルはわからないが特Aクラスだしそれなりだと思っていたんだが、実際はどうなんだろう。
「グレゴリー、明日魔法学科の生徒皆に教えるにあたって俺たち二人が教えるに値するかを見せないといけない。
今日の模擬戦を見てわかってると思うけどあれと同じことをやろうと思う。
これから外に出て模擬戦してみないか?」
「ああ、いいぞ、やろうお前と俺が教師役をするというのならまずはどちらが上か決めよう。」
グレゴリーはなんなく挑発に乗ってくれた。
なんか違う気もするけど、教師に上とか下とか無いんじゃないか?
よくわからないけど。
「わかった、じゃあ外に行こう、皆は俺たちを見てくれ。
今日の模擬戦が如何に酷いかがわかるよ。」
そうして外に出て軽く準備運動をしてから。
「グレゴリー好きに魔法を射っていいぞ任せる。」
そう言って俺はグレゴリーの魔法を待つことにした。
「舐めるな、行くぞ、火の魔法『火矢』」
グレゴリーが詠唱して火が飛んできた。
グレゴリーの魔法は時速80km位で飛んできているそれなりに早いが。
「グレゴリー、何とか防御するか避けろよ」
俺は魔法が来てるのにグレゴリーに声を掛けて避けることなく。
無詠唱の風の魔法で火矢を曲げる、しかも大きく弧を描いてグレゴリーに戻っていった。
「なんだそれは、くそ、うわ~」
グレゴリーがテンパってるので。
俺はやれやれと思って風の魔法で火矢を消した。
「グレゴリー、俺が上でいいな明日もこんな感じにやるから。
グレゴリーは俺を本気で倒すつもりで魔法を頼むぞ。」
俺はグレゴリーから離れて皆の所に向かう。
「明日もこんな感じで魔法を見せるからよろしくな、ノル勉強頑張れよ。
俺は今日は帰るから、また明日な。」
俺はそのまま家に帰って、寝ることにした。
残された特Aクラスの4人はというと。
グレゴリーは
「くそ、なんであんなに差があるんだ、くそ、明日はもっとうまくやってやる。」
やる気はあるようだ。
ノルは
「はぁ~勉強か~」
ノーマは
「は~勉強かじゃないわよ、さっさと教室戻るわよ、死ぬ気で覚えなさい。
あんたのせいで明日魔法をネルから教えてもらえなかったら。
グレゴリーのさっきの火矢で燃やしてやるわ。」
ローズは
「私は明日の授業後にノルをテストしてあげる、テスト範囲は魔法の属性の種類にしておくからノーマ頼むわ。」
そんな感じでそれぞれの放課後が始まった。
読んでいただきありがとうございます