復習
「富士市美彫、流ケ崎竜二、柱日弥舞、山井仲人、駒園美絵、っと」
新聞の最後に、部員5人の名前を入れる。これで新聞作成は終了。後は印刷して各クラスの担任に配るだけだ。
「お疲れ、弥舞」
「お疲れ様、弥舞君」
「どうも」
ちなみに紙面の文章の5割は俺が書いている。他の4人には全くと言っていいほど文才がないからだ。ひどい話だ。
「それにしても…………」
完成した原稿を見る。
「…………あれだけカオスな状況を取材したというの、によくもまあこれだけきちんと纏まったというか…………」
ぶっちゃけ紙面のほうも相当カオスになると思っていたのだが。
「私の『なんか良い感じに話を〆る才能』のおかげね」
…………否定はしない。否定はしないけれども。
「じゃあ私、とりあえず先生のところ持っていきますね」
「ああ、ありがとう駒園ちゃん」
「美絵ちゃん戻ってきたらみんなでカラオケでも行かない?」
「いいですね」
あんな一日があったというのに、何事もなかったかのようにまた始まる日常。
そのことに俺は少なからず安心していた。
だが、その日常はまた呆気なく終わる。
ドガッッッ! という音ともに部室の壁が吹き飛び、三人の生徒がおもむろに入ってくる。
「キャッ」
「何だ!?」
「誰だお前らは!?」
「「「おいおい、もう忘れたのか?」」」
思い出す。
確かに聞き覚えがある。これはあの日、戦った――――
「忘れたというのならもう一度名乗ろうか」
「『矛盾の矛のほう』鉾田研二」
「『土人形の造物主』土屋甚三」
「『万物の封印』常盤楓児」
「さあ、あの戦いをもう一度始めよう」
「あの心で心を削り合う戦いを」
「魂が滅びるまでな!」
《厨二魔術『厨二属性付加』発動》
《『一眼レフカメラ』が『邪気眼レフカメラ』に変化した》
「カハッ…………」
「馬鹿な…………一瞬で…………」
「こんな…………ことが…………」
三つの魂が滅んだ。一応手加減したので気絶する程度で済むだろう。
「能力が復活しているのか?」
「多分そうでしょうね。壁もいつの間にか戻っていますし」
「会長は…………まだ諦めていなかった?」
「腹パンしに行ってくる」
「ちょ部長、今シリアs」
〜三分後〜
「ただいま」
「…………やったんですか?」
「もちろん」
「何でまた今更こんな」
「理事長に異能学校の提案するための事情説明だって。それでも腹パンしたんだけど。46回」
「それなんてオーバーキル」
「途中で能力切られたから気絶させるのに時間がかかっちゃって」
ただの暴行だ。いや、別に能力があっても暴行であることに違いはないのだが。
…………それでも彼女がしたことを悪く思う人間は、この場に一人もいないだろうが。
「あれ? どうしたんですか皆さん」
「いや、何でもないよ」
「じゃあカラオケ行くか」
「弥舞君は何歌うの?」
「この間覚えた『モスクワ郊外の夕べ』を」
こうしてまた、何事もなく日常は過ぎていく。