二時限目
「じゃあ、二人には今の学校の状況を取材してもらいます」
「喜んで」
「いや、いいの? 僕は絶対防御あるから平気だけど」
この可憐なる部長の要求を断るなどという選択を俺がするわけがない。部長たんマジ天使。
「キャラ崩壊してるけどいいの?」
「えーっと、今はみんな忙しいと思うから写真撮るだけでいいよ。カメラ壊さないように気をつけてね? ボールとか火の玉とか爆弾とか飛んできてもまずカメラを守ること! OK?」
「イエスマム」
「死ぬよ? いいの?」
※※※※※
とりあえず、グラウンドへと向かう。
「今思ったんだが……」
「何?」
「グダグダだな。前回から」
「そういうのやめよう?」
やはり無理に文字数を少なくするとクオリティーが落ちるのか…………。
そんなことを話しているうちにグラウンドに到着した。
部室に来るとき見たドラゴンとゴーレムが未だに殴り合いをしている。ドラゴンは腕が短いので劣勢なようだ。なぜ殴る。
「じゃあお前ゴーレム側から。俺はドラゴン側からな」
「了解。尻尾に気をつけてね」
「ああ」
ドラゴンの後ろに回り、ゴーレムの拳が当たる瞬間を狙って何枚か撮る。後で両者の顔が見える構図でも撮ろう。
そういえばこのゴーレムとドラゴンをあやつっている術者はどこにいるのだろう。そう遠くはないと思うのだが――――――――いた。ゴーレムの術者はその目の部分に空いている穴。ドラゴンの方は肩の上に乗っかっている。危ないぞそんなところにいたら。
十五枚ほど写真を撮ったところで、ゴーレムに拳をくり出した、ドラゴンの尻尾が襲いかかった。
「おーい弥舞、こっちはそれなりに撮れたから、校舎側に回るね。弥舞はそれ終わったら道路側から――――ぐはぁ!」
仲人に向かって。
くるくると回転しながら飛んでいく仲人。頭から地面に突っ込んだように見えたが、すぐに立ち上がり、写真を撮りだした。あの落差でカメラを壊さないとはさすが絶対防御。
ちょうど仲人が校舎側に飛んでいったので、道路側から写真を撮る。
戦いの爆音にまぎれて、カメラのシャッター音がなる。
パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ……。
…………ドラゴンが未だ劣勢だ。いつの間にかクロスカウンターの打ち合いになっていたが、ドラゴンの短い腕では威力が低い。あのままではやられるだろう。っていうか火吐いたり、尻尾叩きつけるなりしろよ。なぜ殴る。
…………ふむ。
《厨二魔術『厨二属性付加』発動》
《『カメラのバッテリー』が『雷封じる天の鎚』へと変化した》
休み時間の間に、部室で試した厨二属性の一つ。その中でも最高の威力を誇るこの技を放つ準備をする。
「仲人! ISOと露出を下げろ!」
「え!? わ、わかった!」
巨大な鎚に変わった元カメラのバッテリーを、ゴーレムに向けて振る。
狙うのは、次のクロスカウンターが决まる瞬間。
ドラゴンの打撃とともに、まばゆい光が瞬き、ゴーレムの体が吹き飛んだ。
その瞬間を撮影した大迫力の写真は、一面に掲載され、多くの生徒達からの新聞部の評価を上げることに貢献するのだが、それはまた別の話。
※※※※※
「いや待て! そこ、いい話っぽく締めない! 何やってんだよ弥舞!?」
「ちょっとインパクトがほしくなっちゃった。てへ」
「無表情で片目閉じながらおでこコツンすんな! 気持ち悪い以前に怖い! あとキャラ崩壊してる!」
「いやお前もだろ」