朝礼
説明回的な何か。
次の日。
俺が始業時間十分前に登校すると、学校は戦場と化していた。
炎が飛び、火柱が舞い、火炎が踊り、火花が駆ける。やたらと火特化だ。
まあ、とりあえず教室――――2-1に入った。
教室の中で、クラスメートが必殺技の撃ち合いをしているのを横目に見ながら、自分の席に座る。
さて、
「何があったか三行で」
「異能
もらって
みんなヒャッハー」
「ごめんもうちょっと詳しく」
隣の席に座るこいつは山井仲仁。やればできるアホな男子中学生だ。ちなみに友人であるが、クラスメートではない。なぜここに居る。
「随分とひどい友人紹介だね。初対面の人の評価だだ下がりじゃないか」
「登場人物が地の文を読むな。で、何があった」
やれやれと仲仁が肩をすくめる。現実にそんな仕草する奴初めて見た。
「昨日脳内で変なアナウンスが流れなかった?」
「流れたな。厨二魔術が何とかって。それでその後変な魔術が使えるようになった」
「ふうん、君のは魔術だったのか。まあ他の人も似たような感じ。この学校の生徒ほぼ全員が厨二能力とか厨二武器とかそんなアナウンスを聞いて、それが使えるようになったらしいよ」
まあ、それはだいたい予想していた通りだ。
「で、なんでそれだけでこうなる。普通異能とかもらっても、それ使ってバトろうとか思わんだろ」
「人のテンションを上げる結界でこの学校全体が囲まれているらしい」
どうやって検証した。
「授業とかはどうなるんだ?」
「さっき先生が来て全時限自習って言って帰った。ちなみに昼は、職員室に弁当がおいてあるからそれ食べろだって」
おい、いいのかそれで。
俺がしばらく教師という職業のあり方について考えていると、必殺技の撃ち合いをしていたクラスメートの片方が吹っ飛び、窓を突き破って外に飛んでいった。
…………。
「死人とか出てないのか?」
「戦闘不能になると怪我とかが全部治った状態で家に戻されるみたいだよ。ちなみに壊れた物は自動で修復する」
その言葉の通り、突き破られた窓のガラス片が元の場所に戻って、一瞬光って新品状態に戻った。
「じゃあ帰るか。わざわざ戦闘不能になるまで頑張る義理も義務もないだろ」
「ちなみに『生き残った時限数×10点』、次のテストの各教科に加点されるんだって」
「まあ一応中学校は義務教育だからな。いくら全時限自習だからって勝手に帰るのはまずいよな」
全く……一度学校に来たからには戦闘不能になるまで帰宅したらダメだろう。誰だ戦闘不能になるまで頑張る義理も義務もないなんて言う奴は。
仲仁はケラケラとひとしきり笑い、俺に話しかけた。
「で、どうする? 何か生き残る策はあるのかい?」
「とりあえず部室に行くか。あそこなら色々と物があるから俺の力も使いやすい」
満身創痍で倒れているクラスメートをどかし、椅子を引いて立ち上がり、我らが新聞部部室へと向かう。
キーンコーンカーンコーンと一限目の始まりを報せるチャイムが鳴った。
今日だけは、このチャイムが戦いの始まりを告げる号砲となるのだろう。
厨二病学園の一日が今、始まる。
※※※※※
「ちなみにお前の能力って何なんだ?」
「え? 『矛盾の盾のほう』。全自動全方位絶対防御」
「お前絶対生き残るじゃねえか」