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第三稿

黒のウインドブレーカー、表情を隠すようにフードを深く被り、その背中には青い焔の中に所属部隊を表すアルファベットと数字。

関西を根城にした日本最大級のカラーギャング集団『煉獄同盟』のトレードマーク。

それを身に付けた人間が、今ここに二人いる。


「兎に角逃げろ!お前ら死んだり怪我したら次の放送の時人手が足りなくなる!」


上白さんの切実な叫びに呼応してか、『シロカミ放送局』の面々が恐ろしく早い速度で撤収作業を開始。

俺を含めた『ルーニーズルーム』はどうやら彼らの撤退まで時間稼ぎをするのが緊急ミッションってところだろう。

視覚と聴覚の強化レベルを上げて上白さんの傍へと移動する。それを見たレオがこちらに来て、護衛は二人になった。

俺自身の戦闘力は著しく低いから実質レオ任せなんだけども――それでも“一人半”分の力には出来る。


「ハッ、逃げ足が速いのは中立ラインのお家芸だな。手始めにここに居る連中は全員潰す。話はそれからだな」

「雑魚ばかり潰しても意味が無いが……精々撒き餌になってもらう」


煉獄のお二人さんは随分と余裕なご様子。なるほどね、上白さんを狙った理由は“それ”か。

さて、ここで周囲の様子を改めて確認しておこう。


現状の中心になるのは煉獄のお二人だ。その正面が上白さんと俺とレオ。

俺達の直線状、煉獄を挟み撃ちに出来る位置に立っているのがシュラクとカナエ。

ママとユイはシロカミ放送局の撤退を手伝っている。

こちらに背中を見せているS-10の方は背も高いし体の厚みもある。

恐らく接近戦を得意としている、あるいはそういう能力を持っていると考えた方がよさそうだ。

こいつの相手はシュラク・カナエのコンビに任せたいところだ。

カナエの超常能力は早い話が“凶悪なレベルの怪力”なので接近戦ドンと来いなので大丈夫だろう。ついでに言うと胸も凶悪なレベルのサイズなので色仕掛けのチャンスもある。まぁ、S-10が貧乳派だった場合、あまり利点にならないのだが。

シュラクに関しては相手の超常能力次第だ。シュラクの超常能力は自分の体の一部を樹木に変化させる「樹化」なのだが、汎用性が高く使用者も多い火と冷気を相手にするとどうしようもないという致命的な弱点がある。

とはいえ、シュラクのリーチの長さは俺達LRの中でもトップだ。簡単に負けるとは思えない。

向こうも対E-Goの戦闘に慣れているのか、安易な攻撃はしてこない。


一方で俺達と正面切って相対しているS-14は中肉中背といった所の体格。しかし雷撃という速度と威力に優れた超常能力を持っているのはコイツだ。

これで連射が可能だったりしたら俺とレオが負ける可能性は極めて大きくなる。

何せ俺の能力は単純に戦闘に使えるタイプではないし、体格的にも煉獄の二人に大きく劣る。

早い話、俺はチビでガリなのだ。

レオは体格こそゴリゴリのガテン系だが上背はそれほどでもない。

オマケにレオの超常能力は「獣化」――獣人へと変身する力。身体能力は跳ね上がるが雷撃相手にするにはリーチが足りない。

幸いだったのはS-14が強気な発言とは裏腹に速攻で攻め立てては来なかった事だ。その冷静さが逆に恐ろしい。



しばらくの睨み合いとジリジリとした牽制合戦。結局先に仕掛けたのは煉獄の二人からだった。






リアルタイムで戦闘中にキーボードを叩くなんていう器用な真似は俺には出来ない。

なので出来る限り時系列を追って、その戦闘を振り返ってみようと思う。


「爆ぜろ塵共!!」


青い電光を浮かばせたS-14が両手をこちらに向けてくると同時に、俺は視覚と聴覚を五段階引き上げる。

俺の盾になる位置に居たレオの背を叩いて合図し、おんぶの要領で背に乗っかった。

既に超常能力発動の準備をしているレオにとって俺一人分の重さは全く苦にならないようだった。むしろ俺が振り落とされないように必死だった。

最初の一撃を避けたタイミングで、俺はレオの両耳を手で塞ぐ。次に両目を手で塞ぐ。


(感覚共有――リンク開始)


「獣化発動――!」


同時に超常能力を発動する。尤も俺自身は声を発する事は出来ないし、見た目にわかるタイプの力ではないからS-14からすれば超常能力を使ったのは獅子の頭と手足に変化したレオだけに見えるだろう。

ファンタジー風に言うならばワーライオン。名は体を表すという言葉の通り、レオは獅子へと体を変化させる超常能力持ちだ。

身体能力の爆発的向上と鋭い爪と牙。そして見た目から発する迫力も相まって、強そうに見える具合で言ったらうちの連中の中ではレオがトップだろう。

いや、実際強いんだけども。単純な肉弾戦で言えば、中立ラインの中では十本……いや、二十本の指には入ると思う。

それを更に強化するのが俺のもう一つの超常能力。


それは「五感共有」だ。


相手の目・耳・鼻・皮膚・舌に直接手で触れることでお互いの感覚を分かち合う。

さっきレオに背負われた時、耳と目を塞いだのはこの力を発動させるためだ。

俺はいま自分の目で見ている視界と、レオが見る視界をそれぞれ視る事が出来る。

頭の中でチャンネルを切り替えるような要領だ。聴覚も同様に切り替え可能になっている。

この力を上手く使えば、敵対者の視覚と聴覚をこっそり共有して、能力を使われた事に気付かなければ一生見破れない監視カメラと盗聴器が完成する。

相手との接触が絶対条件にはなるものの、無自覚なスパイをいくらでも生み出せるという訳だ。

もちろん、今現在のように味方と感覚を共有する事も出来るがそれ自体にメリットは少ない。


しかし俺には「五感強化」がある。


十倍以上に増幅したを共有することで本人の超常能力だけでは補えない感覚部分を強化する。

例えば飛び道具の能力持ちに視覚を預ければ、スコープ要らずのスナイパーになる。

つまり、俺の味方であれば本人の能力+五感強化の能力も同時に得る事になる。


「超常能力は一人一つ」という原則を無視したE-Goは「ダブル」だの「トリプル」だのと呼ばれる。

俺自身もそのダブルではあるのだが、俺と感覚共有を行う事で疑似的なダブルを大量生産出来るのだ。

他力本願と笑いたければ笑え。俺はこれのお陰で随分と助けられてるから笑いが止まらないくらいだ。


実際にレオとS-14はほぼ互角の戦いを繰り広げていた。さっきよりも威力を抑えた雷撃を放つが、レオはその軌道を視認してから回避する。

レオが接近して攻撃を仕掛けようとすると、広範囲に雷撃をばら撒いて接近を防ぐ。

「一撃喰らって相手の強さを確かめる」なんて事を煉獄同盟の構成員は絶対にしない。

悪党集団の癖に、こと戦闘に関しての慎重さは徹底的だ。決して焦らず、何十分、何時間掛かろうと完全に相手を封じ込めて潰すのが彼らのやり方だ。


S-10もその方針を叩き込まれているようで、両腕を樹木に変化させたシュラクの攻撃を避けながら機を伺っているように見えた。

それを捕えようとカナエが放送機材を置く為に使っていた折り畳みテーブルを両手に一つずつ持って接近をするが、あっさりと対応する。

カナエの攻撃は一撃こそ重い物のかなり大雑把だ。戦闘慣れしている煉獄同盟の数字持ちには御しやすい相手なのだろう。

二対一の不利を物ともしない上に超常能力を使っている様子も無い。素人目に見てもS-10の実力が極めて高い事が理解できる。


「ぐおっ!?」


そうこうしている内にレオが押され始めてきた。カウンター気味に放たれた雷撃が直撃、大きく吹き飛ばされてこちらへと転がって来た。

ここで喜び勇んで突撃してこないのがまた面倒くさい。レオや俺だけでなく、S-10と対峙しているシュラクやカナエ、撤退の手伝いをしているママとユイ、そして上白やシロカミ放送局の面々の動きにも気を配り、油断や慢心が全く無い。


これが煉獄同盟か――内心で、俺は感服していた。例え犯罪組織であろうと、西日本の殆どの地域を支配下に置ける実力は末端まで行き届いている。

レオが立ちあがると同時に車のエンジン音が響き、上白を置いてシロカミ放送局のメンバーを乗せた車数台が発進して戦場から去って行く。

これは上白の指示であり、決して見捨てたとかいう訳ではない。むしろ、煉獄の二人の目的こそが上白であるため、彼が車に乗って逃げようとすれば、奴らは必ず車を追うだろう。LR程度の実力では時間稼ぎも大して出来ない――というか、時間を稼ごうと動いた頃には車を既に追い始めている筈だ。

残された上白の様子を伺うと、手にスマートフォンを持ってニヤニヤと笑っている。余裕面だ。


で、レオ。大丈夫?


「あ、ああ何とか大丈夫だけど――やべぇ、アイツ超強ぇ」


何を今更。時間稼ぎ程度にしかならないが、それでも何とかなってるのはあいつらが煉獄同盟で、なおかつ連中の本命が上白さんとその背後だからだ。

これが『秩序の剣』の正式団員だったら俺達なんざ五分で潰されてるはずだ。


「でももう大丈夫みたいだな。俺に聞こえるって事は、サイレンスにも聞こえてるだろ?」


ああ、聞こえてるさ。

それに気付いたのは俺とレオだけじゃない。ここに居る連中、全員がもう気付いているはずだ。

この公園に向かってくる、凄い人数の足音が。


「S-10!来たぞ!!」

「ああ、そのようだな。ここからが本番だ、気を抜くなよS-14」

「ケッ、お前に言われるまでもねぇよ……!」


そして、グラウンドの四方八方から近寄ってくる百人以上の人、人、人。

統一感の無いその軍勢は、全員がギラついた、好戦的な目をしている。

あっという間に、グラウンドに残っていた俺達を取り囲み――その中から一人の男がゆっくりと前に出てくる。


この街をホームグラウンドにするプロ野球チームのレプリカユニフォームとTシャツ、カーゴパンツ姿の優男。

大人しそうな表情だが、一切油断出来ない空気を身に纏い――男は煉獄同盟の二人へと声を掛ける。



「俺達の根城たる中立ラインに正々堂々と攻め入ってくるとは、煉獄同盟もとうとうヤキが回った?いや、そうじゃないよね。勝てる自信があるから仕掛けてきたんだろう?わかってるわかってる。君らはそんなに馬鹿じゃないのは、君らとも『剣』とも殺り合ってる俺達が一番よーく分かってるんだから大丈夫。だから俺達も正々堂々と立ち向かう事にさせてもらうからね。ああ、でもこの人数でボコるとかじゃないから。ただ、俺達の総意ってのをアピールするための人数だし、上白クンと残ってるその子らを逃がすために人手は多い方が良いと思っただけだから。勘違いしないでね、俺達そんなに卑怯じゃないんだから」


突然のマシンガントーク。相手に口を挟ませる余地すらない。煉獄同盟の二人が改めて優男の方へと向き直って、俺達とやり合ってた時と比べ物にならないくらいの殺気を放っていた。しかし、その殺気を何て事の無い様に受け止めて優男は笑って頷くのだ。


「うん、良いね。その『今すぐぶっ殺す』みたいな感じ。でも、ちょっと待ってよ。君らはシロカミ放送局の中継を通してカッコよく宣戦布告したんだから、俺たちだって同じことしていいよね?いや、するべきだと思うからやるね。これはもう義務だよ義務。組織の上に立つ人物としての義務」


俺達がすっかり蚊帳の外になったのを察してか、ママとユイ、シュラクとカナエがこちらへとやってきた。

無論、この後行われる戦闘に巻き込まれる前に全力で逃げるためだ。

優男は両手を広げて笑みを浮かべながら、高らかに宣言する。



「中立ラインへようこそ煉獄同盟!我々、『撃団・神鬼籠げきだん・しんきろう』は君達の宣戦布告を受け取ろう!愛知・岐阜・富山の中立ラインの支配者が誰か決めるべく、明るく楽しく激しく殺し合おうじゃないか!!」

遅くなって申し訳ありません。

今後は週刊連載に近い形で、細々と続けていこうと思っております。

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