第零稿
能力系ですがバトルらしいバトルはありません。
少しずつ書いては投稿していく予定ですのでよろしくお願いします。
一九九九年七の月――世界は滅亡する事は無かったが人類にとって大きな転機となったのは事実だ。
世界全体を覆った彗星の光によって、一部の人間達が超常的な力に目覚めたのだから。
例えばサイコキネシスのような物に触れずに動かす力、単純な怪力、他の動物や昆虫の特徴を持った者も居た。
しかも、そんなとんでも無い力に目覚めたのは揃いも揃って小学校に上がるか上がらないかくらいの子供ばかり。
可能性を拡張された世代(Extendet Generation)と呼ばれた子供たちは、世界中で様々な形で育てられていった。
ある国ではその能力が戦争の為の道具となり、兵士として戦場に送られた。
ある国では選ばれた者として、国のトップとなるべくエリート教育を施された。
ある国では化け物として迫害され、殺されるか捨てられるかという選択肢しか与えられなかった。
ある国では貴重な実験動物として、過酷な実験の果てに人としての尊厳を全て奪われた。
幸い、俺の生まれた日本と言う国は出来る限り手厚く、他の子供と差別せず育てるという比較的穏便な方針だった。
どちらにしても、大人達の都合と考えに振り回されたという意味では――どの国も大差は無かった。
そして十年が経ち、子供たちが成長すると大人達はとんでもない誤算を味わう事になった。
――子供たちが拡張されたのは『可能性』だけではなかったのだ。
ある国では戦場で目覚めた子供たちだけの部隊がクーデターを起こし、革命軍と化した。
ある国ではエリートとして育てられた子供たちが政府を相手に“遊ぶ”ようになった。
ある国では迫害された子供たちが大人達を皆殺しにして国内の平均年齢を大幅に下げた。
ある国では科学者と実験動物の立場が入れ換わり、自分たちの『可能性』を人体実験という形で試し続けている。
子供たちが最も拡張されたのは可能性ではなく、自意識。
即ち、“エゴ”だ。
彗星の飛来から十年の時を経て、成長した子供たちは『Extendet Generation』ではなく『E-Go』と呼ばれるようになった。
さてさて、こうして長々と文字を打ちこんでる俺もそのE-Goの一人だ。
まぁ日本で自分がどういう扱いをされたかってのを十行くらい前にタイプしたのでバレバレだとは思うけどね。
そう、俺は今、現在進行形でスマートブックのワープロソフトにタイピングしている。
俺は言葉を話さない。
正確に言えば話す事が出来ないのだ。俺の目覚めた力の反動による代償的なものらしい。
そんな俺が目覚めた『可能性』は非常に分かりやすい。
それは『五感強化』だ。
良く見えるし良く聞こえる。
鼻は利くし舌も鋭敏。
触覚の強化は今のところ役に立ってないがシンプルで素敵な能力だ。
……実は他にもあるんだけども、それはとっておきなので黙っておく事にする。
黙っておくも何も、俺喋れないんだけどさ。
それじゃあ最後に自己紹介をしておこう。
本名は内緒だ。ペンネームとか通り名、渾名みたいなもんだが勘弁してほしい。
……俺の名前は『サイレンス』だ。
喋れない俺にぴったりの名前だろ?
さて、俺のレポートにしばしお付き合い願おうか。