俺以外
掲載日:2026/10/13
こうして筆を取る(もとい、スマホの画面を叩く)と、必ず詰まるポイントがある。
それは他人がどう思っているかを書こうとする時だ。
自分の体験を元に、客観的な情報を並べていくと、必ずここで詰まる。
結局、俺は普段相手の顔色を常に伺っておきながら、何一つ理解できていないということ。
客観的な情報を元に、相手の気持ちを汲み取る。
これは実の所、自分が相手だったらどう考えるかを辿っているだけなのだ。
部屋の真ん中で横になりながら、孤独な夜の時間を物書きに充てる。ふとした閃きは、この孤独感をより一層強めただけだった。
思えば、今の物書きというのは情景の描写に苦労することだろう。俺が慕う作家や哲学者たちの生きる時代は、さぞ物珍しい機械に溢れ、雑音に事欠かなかったことだろう。
それが今や、携帯を触る音などあるはずもなく、扇風機くらいしか部屋を描写するアイデアがない。しかしそれを書かねば、俺の頭の中をぶちまけただけの「純文学」が完成してしまう。
あの時計は、部屋の隅のギターは、ドアの脇に置いてある護身用のバットは、何を考えてるか分からない友人と変わらない。俺以外でしかないのだ。
そろそろ寝る時間だ。俺が唯一詰まらずに描写できるこの意識を手放そう。
明日は仕事だ。俺は俺以外のことは書けない。つまり、明日は物書きは閉業ということだ。




