疾風ウルフ
「では、ここにサインしてくれ」
俺達はギルマスの部屋に呼ばれ、守護獣との契約書に名前を書いた。
契約が成立した瞬間、冒険者カードが淡く光る。
それを見届けたギルマスは、満足そうに頷いた。
「これで正式に銅クラス冒険者だ。……もっとも、普通の銅クラスとは事情が違うがな」
そう言って苦笑する。
部屋の中には、ギルマス以外にも数人の冒険者がいた。
全員、ただ者ではない。
装備の質も、漂う空気も、酒場にいた連中とは明らかに違っていた。
「俺達はゴールドクラスの『疾風ウルフ』だ。よろしく。」
先頭に立っていた男が、腕を組みながら名乗る。
短く刈った銀髪に鋭い目。
腰には無数の傷が刻まれた双剣。
歴戦の冒険者――そんな言葉がぴったりだった。
何故、彼らがここにいるのか。
それは酒場で話し合いが行われた結果、俺たちを仲間にする交渉権を『疾風ウルフ』が勝ち取ったかららしい。
昔はルールもなく、守護獣を引いた新人が無理やり高ランクパーティーに連れて行かれ、そのまま命を落とす事件が後を絶たなかったという。
特に強力な守護獣持ちは、“戦力”としてしか見られなかった。
だから今では、ギルドが厳格な規則を定めている。
「君達にはもちろん断る権利もある。だが、仲間になってくれた場合は、Sレアクラスの武器と防具を俺たちが用意する」
男は真剣な目でそう言った。
守護獣持ちの新人を勧誘する場合、守護獣と同格クラスの装備を契約金代わりに準備する。
さらに契約期間は最初の一ヶ月のみ。
その間に双方が納得しなければ、自由に解散できる。
新人を守るための制度だった。
「話は分かったけど、俺たち二人分の武器と防具を与えてくれるのが条件だ」
俺がそう言うと、男は即答した。
「もちろん、そのつもりだ」
少しも迷いがない。
つまり、それだけワイバーンの価値が大きいということだ。
普通なら、一生手に入らないような高級装備。
それを即決で二人分用意すると言うのだから、『疾風ウルフ』がどれほど本気なのかが分かった。
俺はユーコと視線を合わせた。
ユーコも小さく頷く。
「分かった。じゃあ、こちらからもお願いする」
その瞬間、部屋の空気が少し和らいだ。
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人生の前半では、家族以外にも、なんの見返りを求めることなく、いろいろと世話をしてくれる人に合う機会がある。
「俺がリーダーで盾使いのチェンだ。」
「俺は剣使いのケサギだ。」
「私は攻撃魔法使いのメイ。」
「最後に私は回復魔法使いのサラよ。」
『疾風ウルフ』のメンバーたちも、俺の守護獣のことがあるにしても、俺達のことを珠玉のように扱ってくれた。
装備もすでに一通り揃えて貰った。
「まずは簡単なクエでもこなすか?」
チェンが、俺達を心配して提案してきたが、
「構わない。俺達はいきなり本番でも大丈夫だ。」
俺はそう答えた。
『疾風ウルフ』はランクアップをするために、オークキングの討伐をしないといけないのだが、そのオークキングが群れを作ってしまっていて、難易度が上がってしまっているらしい。
「俺達がオークキングを1頭倒す間だけ、ワイバーンでほかの奴らを引きつけて貰えれば助かる。」
「分かった。倒す必要はないということだな。」
「ああ、くれぐれも無理はしないでくれよ。」
討伐には往復1週間かかるらしく、準備もあるので、出発は明日に決まった。荷物持ちも別に雇うということなので、俺達は明日に備えて宿で休むことにした。




