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Episode1. しがらみ

本作品は、重めのテーマを扱っています。

苦手な方はご注意下さい。

怪我の描写はありません。

「ねぇ、あの子また本読んでるよ」


一人の生徒が窓際で本を読んでいる少女を指さす。


すると、それに同調するように複数の生徒が声を挙げる。


「ほんとだ、それしかすることないんじゃない?(笑)」


「やめときなって、可哀想だよ(笑)」


「あの子と仲良くしてる天原さんも相当変わってるよね~」


今日も教室は騒がしく、各々の青春が広がっている。




           ◇




「なあ、お前アイツに告って来いよ(笑)」


一人の生徒が冗談でそう言う。


「え〜!絶対ヤダよ〜(笑)」


すると、一人の生徒がこう提案する。


「じゃん負けで!じゃん負け!負けたヤツ告白な!(笑)」


「うわ〜、絶対負けたくねぇ(笑)」


今日も教室は騒がしく、各々の青春が広がっている。




           ◆




この世界は腐っている。


少し変わってるから。失敗しちゃったから。友達がいないから。

この世界では、そんなちょっとした理由で腫れ物扱いをされてしまう。


「こんな世界……なくなればいいのに……。」


私がそう呟いたそのとき、後ろから親友の声が聞こえる。


「一緒に遠くに逃げちゃおっか」


「……え?」


私はその言葉の意味が理解出来ないでいた。


「全部捨てて、二人でどこか遠くの知らない場所に行かない?見たことない世界が広がってると思うんだ。」


「でも、そんなこと……」


「だって辛いじゃん……行こうよ……知らない世界で食べたことないものを食べてみたり、見たことないものを見てみたりしてさ……ずっと一緒に……」



意外だった。


彼女は……天原百合という人間は……私よりも明るくて、いつも私を励ましてくれる存在だった。


そんな彼女の暗い瞳に私は胸が痛んだ。


そして、私は正直その提案に乗りたい気持ちがあった。


でも、


「いきなり消えたら大騒ぎになるのではないか」


「今まで育ててくれた親に申し訳ない」


などの理性がそれを妨げていた。


けれど、彼女の目は真剣だった。


悩みに悩み抜いた結果、そうしたいと考えたのだろう。


「……考えておいて。私、本気だから。」


「……うん。」


この提案に乗るべきか……乗らないべきか……

そして、これから私たちはどうなのだろうか……


様々な不安と、もしかしたら現状よりいい方向に進むかもしれないという淡い期待。


そして、百合も辛かったのに今までずっと気が付かなかったことに対する自己嫌悪が混ざり合い、感情がぐちゃぐちゃになっていた。




           ◇




その日の夜、私は一人ベッドに突っ伏して今日言われたことについて考えていた。


「百合……」


私が行かなかったら、百合は一人でどこかへ行ってしまうのだろうか。


「嫌だなぁ……」


私は、ゆっくりと立ち上がりリビングに向かった。


もう夜中だしお母さんは寝ているだろう。

だけど、そろそろお父さんが帰ってくる頃だと思った。



           ◇



リビングに行くと、お父さんはソファーに座って仕事をしていた。


「今日も一日頑張ったんでしょ?もう寝たほうがいいんじゃない?」


私がそう言うと、お父さんはこう言った。


「期限が近いからそういうわけにもいかなくてな……。でも、ありがとう梨々花。お前と母さんがいるから、お父さんは仕事を頑張れるよ。」


あぁ……もう……そんなこと言われたら余計迷っちゃうじゃん……


私はそっとソファーに乗っかり、お父さんの隣まで行き、両肩に手を置いた。


すると、


「おっ、梨々花……肩もみしてくれるのか?ありがとうなぁ……。でも、夜も遅いから梨々花はもう寝なさい。」


「……疲れてるんでしょ?いつもお疲れ様。あと、ありがとう。」


私はお父さんにそう感謝を伝えた。

声が震えていたのが自分でもよくわかる。


「……わかった、じゃあ今はお願いしようかな。」


「うん……」


そこで、私は肩もみをしながら……聞いた。


「ねぇ……嫌なことも大切なものも全部捨てて……自分の知らない何かを手に入れようとすることって……どう思う?」


「………。」


私は慌てて


「ごめんっ!やっぱり忘れ――」


「梨々花、」


私は真面目なトーンで名前を呼ばれてビクッとしてしまう。


「……お父さんはな、人生に正解はないと思ってる。ただ、あれはやめときゃよかった……あの時こうすればよかったという後悔が残ることが人生では山程ある。」


「うん...」


そこでお父さんはいつもの声色に戻って


「だけど、若いうちは好きに生きなさい。たくさん後悔して、たくさん学ぶ。色々な世界を見ていくことで、人は成長するからな。」


「梨々花も、自分がこうしたいと思うように生きなさい!頑張れ!」


「……お父さん。」


「……うん。ありがとう。」


「さ、そろそろもう寝なさい。夜更かしは肌に良くないぞ〜」


そんないつも通りの冗談に安心して、泣きそうになりながら肩から手を離す。



「うん、おやすみ……お父さん。」



           ◇



ベッドに戻り、布団を被る。


梨々花……私決めたよ。


明日……伝えるから。


待っててね……


おやすみ。

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