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「異世界に転生した俺、『完全学習』で最速無双してたら、いつの間にか最強のパーティができあがっていました。」  作者: 悠々


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ゴブリンロード討伐

セレスが去った後も、ギルド内の空気はどこかざわついたままだった。

”氷刃のセレス”に真正面から不遜な口を利いたFランクの新人。

カズマは、好奇と侮りが入り混じった周囲の視線を浴びながらも、全く意に介さずクエストボードを眺め続けていた。

”氷刃のセレス”に臆さなかったEランクの新人。

カズマは、好奇と侮りが入り混じった周囲の視線を浴びながら、クエストボードを見つめていた。


(その青銅プレートが、お前の価値の全てだ、か)


セレスの言葉が脳内で反響する。

確かに彼女の言う通り、この世界は実力が全てだ。ならば、その実力を最も分かりやすく、そして手っ取り早く証明する方法は一つしかない。

誰もが不可能だと思う依頼を、圧倒的な力で達成すること。

そうすれば、あのプライドの高そうな騎士の見方も少しは変わるかもしれない。


「カズマさん、あの…」

リリィが心配そうに声をかけるが、カズマの目は高ランク依頼が並ぶボードの一角、その中でもひときわ古びた羊皮紙に釘付けになっていた。


【緊急討伐依頼:ゴブリンロード】

・場所:ゼノン南方の廃砦

・内容:ゴブリンの大規模な集落を率いる上位種「ゴブリンロード」一体の討伐

・推奨ランク:Cランク以上のパーティ

・報酬:金貨 8 枚


依頼書の隅には「複数のCランクパーティが返り討ちに遭っている高難度依頼。死傷者多数」と赤インクで禍々しく追記されている。

報酬は破格だが、その分リスクも計り知れない。

多くのCランク冒険者がBランクへの昇格を阻まれてきた、いわくつきの依頼だった。


「これにしよう」

カズマはこともなげに言うと、その依頼書をボードから剥がした。

ベリッ、と乾いた音がやけに大きく響き、周囲の喧騒が一瞬にして静まり返る。


「ええっ!? カ、カズマさん、それは危険すぎます!」

リリィが悲鳴に近い声を上げる。


カズマが依頼書を受付に持っていくと、カウンターの職員だけでなく、周囲にいた冒険者たちも目を剥いた。


「おい、正気か? あの依頼は”鉄槌団”が半壊させられたやつだろ」

「Cランクでもトップクラスの連中ですら無理だったのに…」

「Eランクの小僧が一人で? 自殺しに行くようなもんだ。いや、死に場所を探してるとしか思えん」


嘲笑と呆れの声がギルドに響く。

受付の職員も困惑した表情でカズマを諭そうとした。

「お客様、念のため申し上げますが、この依頼で命を落とした冒険者は一人や二人ではありません。Eランクの貴方が単独で受注するのは、自殺行為に等しい。ギルドとしては、強く再考をお勧めしますが…それでもよろしいのですか?」


その騒ぎを聞きつけ、依頼書を選んでいたセレスが再び姿を現した。

彼女はカズマが手にしている依頼書を見ると、その氷のような瞳に明確な怒りの色を宿した。


「貴様、やはりただの馬鹿だったか」

セレスはカズマの前に立ち塞がる。

「その依頼がどういうものか分かっているのか。それは、Cランクの猛者たちが誇りをかけて挑み、そして散っていった戦場だ。お前のような実力もない者が無様に死ぬことで、その戦場を汚されるのは見るに堪えない。迷惑だ、失せろ」


それは彼女なりの忠告であり、強者の戦場を弱者に荒らされることへの純粋な不快感の表明だった。


「忠告ありがとう。でも、大丈夫だから」

カズマは悪戯っぽく笑った。

「リリィ、君は宿で…」

カズマがそう言いかけた時、リリィは彼の服を強く掴み、決意に満ちた瞳で首を横に振った。

「いえ、私も行きます! カズマさんの仲間になったのですから。足手まといにはなりません。それに…カズマさんが作ったこの杖の力を、私も試したいんです」

その瞳の強さを見て、カズマは優しく微笑んだ。

「わかった。一緒に行こう。大丈夫、君に指一本触れさせたりしないさ」


カズマはリリィの頭を優しく撫でると、懇願するような目で見つめる受付嬢に青銅のプレートを提示し、正式に依頼を受理させた。

そして、騒然とするギルドを後に、リリィを連れて悠然と出口へ向かっていく。


「待て…! 貴様ッ!」

セレスの制止の声も、カズマには届いていなかった。


残されたギルドは、呆気にとられた沈黙の後、爆発的な喧騒に包まれた。

「おい、あの嬢ちゃんも連れて行きやがったぞ…」

「ああ、死んだな。間違いなく。明日の朝には死体が森の入り口に転がってるさ」

「賭けてもいいぜ。俺はゴブリンの餌になる方に銅貨10枚だ」


セレスは、カズマたちが消えていった扉を睨みつけ、唇を噛み締めた。

苛立ちと、理解できない何かに対する焦燥感。

そして、心の奥底でかすかに芽生えた、ありえないはずの興味。


(あの男…あの自信は一体どこから来る? ただの虚勢か、それとも…)

(私の忠告を、あのギルドの空気を、全てを理解した上で、あの笑みを浮かべていたというのか? そんなはずはない。だが…)


彼女は数秒間葛藤した後、決意を固めた。

自分の剣士としての魂が、あの男の正体を見極めろと叫んでいる。あの不遜な態度の裏にあるものを、この目で見届けなければ、前に進めない。


「…無様な死に様を晒すくらいなら、私がこの手で斬り捨てる」


誰に言うでもなくそう吐き捨てると、セレスもまた、カズマたちの後を追うようにギルドを飛び出していった。

その行動が、彼女自身の剣士としての誇りを、そして運命を大きく揺るがすことになるとは、まだ知る由もなかった。

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