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「異世界に転生した俺、『完全学習』で最速無双してたら、いつの間にか最強のパーティができあがっていました。」  作者: 悠々


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商業都市ゼノンへ

アークスの東門をくぐり、二人は街道を歩き始めた。

目指すは東の大都市、商業都市ゼノン。アークスから馬車で三日ほどの距離だという。

朝日が、これから始まる新しい旅を祝福するようにキラキラと輝いている。


「カズマさん、本当にありがとうございます。私、なんだか夢みたいです」

隣を歩くリリィが、宝物のように抱えた新しい杖を見つめながら呟いた。

その横顔は、数日前の絶望が嘘のように希望に満ち溢れている。


「夢じゃないさ。ここからが本当の始まりだ」

カズマは優しく微笑んだ。


道中は穏やかだった。

街道は広く整備されており、時折すれ違う商人たちの護衛らしき冒険者たちが、カズマとリリィの軽装を見て訝しげな視線を向けてくる。

だが、そんな視線も今のリリィにとっては気にならなかった。カズマが隣にいてくれる。それだけで、彼女は世界最強の鎧をまとっているような気分だった。


「リリィ、少し休憩しようか。ここで大事なことを教えておく」

カズマは街道から少し外れた開けた場所で足を止めた。


「君は治癒師だけど、いつまでも俺が守れるとは限らない。自分の身は、最低限自分で守れないと」

カズマはチンピラとの戦闘を思い出し、リリィに護身術を教えることにした。

彼はリリィの小柄な体格と、治癒師という役割を考慮する。

必要なのは相手を打ち負かすことじゃない。不意の攻撃をいなし、距離を取って治癒魔法や補助魔法をかける時間を稼ぐための技術だ。


カズマは『体術』スキルで得た知識を元に、相手の力を利用する受け流しの技術を丁寧に教え込む。

「力で対抗しようとするな。相手の力の流れを読んで、受け流すんだ」


リリィは真剣な眼差しでカズマの動きを追う。

最初はぎこちなかった彼女の動きも、カズマの的確な指導と、彼女自身の真面目さで驚くべき速さで上達していった。

自分のために真剣になってくれるカズマの姿に、リリィは再び胸を熱くするのを感じていた。


数時間後、街道を歩いていると、森の茂みからガサガサと音がした。

「グルル…」

現れたのは、緑色の肌に醜悪な顔をした小鬼――ゴブリンが三体。錆びた棍棒を手に、涎を垂らしながらこちらを見ている。


「ひっ…!」

リリィが息を呑む。だが、その瞳に以前のような絶望はない。カズマから教わった動きを反芻し、杖を強く握りしめた。


「リリィ、落ち着いて。一体だけ引きつけて、教えた通りにやってごらん」

「は、はい!」


カズマが一体のゴブリンの足元に石を投げつけ、注意を引く。

ゴブリンは奇声を上げながらリリィに殴りかかった。

リリィは恐怖をこらえ、カズマの教え通りに半身になって棍棒の軌道を受け流す。

ゴブリンは勢い余って体勢を崩した。

その隙をカズマは見逃さない。一瞬でゴブリンの背後に回り込み、手刀で首筋を打ち据える。ゴブリンは悲鳴を上げる間もなく地面に崩れ落ちた。


残りの二体は、仲間が一瞬でやられたことに怯みながらも、同時にカズマに襲いかかった。

だが、カズマは木の枝を拾うと、達人のごとき剣さばきで二体の棍棒を弾き飛ばし、あっという間に無力化してしまった。


「すごい…! 私にも、できた…!」

自分の力で危機を乗り越えたことに、リリィは興奮して頬を紅潮させた。

「ああ、見事だった。筋がいいな」

カズマに褒められ、リリィは花が咲くように笑った。


日が暮れ、二人は森のそばで野営の準備を始めた。

カズマが作った携帯魔道具のランタンが、周囲を魔法の光で優しく照らす。


「さて、晩飯にするか」

カズマは『鑑定』スキルを使い、森の中で食べられるキノコや香りの良い山菜をいくつか見つけ出した。

食材は、それらの山菜と、街で買っておいた干し肉と硬いパン。お世辞にもご馳走とは言えない。


カズマはそれらの食材を一瞥した。

次の瞬間、彼の頭の中に無数のレシピと調理技術が流れ込む。


――ピロン。

【スキル『料理 Lv.MAX』を習得しました】


「ちょっと待ってて」

カズマはナイフを手に取ると、驚くべき手際で野菜を刻み始めた。

干し肉は一度お湯で戻し、柔らかくしてから山菜と共に炒める。採れたてのキノコはスープにし、硬いパンは薄切りにして肉汁を吸わせながらカリカリに焼き上げた。


あっという間に、質素な食材が食欲をそそる香りを放つ絶品料理へと姿を変える。


「ど、どうしてこんなお料理が作れるんですか…!?」

リリィは目を丸くして、出来上がった料理を恐る恐る口に運んだ。


「おいしい…! こんなに美味しいもの、生まれて初めて食べました…!」

頬をいっぱいに膨らませ、涙目になりながら夢中で料理を頬張るリリィ。

その幸せそうな顔を見ているだけで、カズマの心も温かくなった。


誰かのために自分の力を使う。

その喜びを、彼はこの世界に来て、リリィと出会って初めて知った。


夜が更け、二人は焚き火を囲んでいた。

パチパチと薪がはぜる音だけが静かに響く。


「カズマさんは、本当に魔法使いみたいですね」

リリィがぽつりと呟いた。


「そう見えるか?」

「はい。私の夢を助けてくれて、悪い人たちから守ってくれて、美味しいご飯まで作ってくれて…。私、カズマさんと出会えて、本当に幸せです」


焚き火の光に照らされた彼女の笑顔は、どんな宝石よりも輝いて見えた。

カズマは少し照れくさそうに鼻を掻きながら、夜空を見上げた。

満天の星が、まるで彼らの未来を祝福するように瞬いている。


スローライフもいい。

だが、こうして誰かと笑い合う時間も、悪くない。


ゼノンまでは、あと数日の道のりだ。

カズマは、これから始まる新しい日々に、確かな手応えと期待を感じていた。


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