最強パーティ、始動
学園都市ライブラリアを出て数日が経った。
どこまでも青い空が続く。
緑豊かな街道を俺たちの馬車は進む。
俺、カズマ。リリィ、セレス、ティナ、そしてルーナ。
総勢五名となった俺のパーティは、次なる目的地も定めず、街道をのんびりと進んでいた。
目的は、安住の地の確保。
俺と、この最高の仲間たちが、平和に、そして豊かに暮らせる場所を見つけることだ。
「よし、少し休憩がてら訓練をしよう」
馬車を止める。
見渡す限りの広大な平原に出た。
俺はみんなに提案した。
これまでの旅で、みんな個々の能力は飛躍的に向上した。
だが、ルーナという最強の頭脳が加わった今。このパーティのポテンシャルを最大限に引き出すための「完成形」を試しておく必要があった。
「訓練、ですか?」
リリィがこてんと首を傾げる。
「ああ。前衛はセレスとティナ。後衛はリリィとルーナ。俺は中衛で全体の指揮を執る。この布陣での連携を完璧にしたい」
俺の言葉に、四人の顔が引き締まった。
昨夜、彼女たちの間で何があったのか。
その瞳には、ライバルとして、そしてチームとしての新たな結束と、確かな闘志が宿っていた。
前衛は、洗練された剣技を持つセレスと、野性的で変幻自在な格闘術を操るティナ。
二人が互いの動きを補い、敵を攪乱し、殲滅する。
後衛は、仲間を癒し、その能力を底上げする補助魔法のスペシャリストであるリリィと、戦況を冷静に分析し、強力な攻撃魔術で敵を穿つルーナ。
二人が戦線を支え、勝利への道筋を描く。
そして、俺がそのすべてを繋ぎ合わせる。
訓練は熾烈を極めた。
俺が『完全学習』で得た知識から召喚した魔物のゴーレム部隊を相手に、四人は何度も連携を試す。
「ティナ、一歩右だ! セレスの踏み込みと重なっている!」
「うっさいな! こいつの次の動きが読めねえんだよ!」
「感覚で動くからだ。敵の重心と力の流れを読め」
最初はぎこちなかった動き。
それが俺の指示と彼女たちの努力によって変わっていく。
次第に一つの生き物のように滑らかに。そして有機的に連動していく。
セレスの剣が敵の体勢を崩し、ティナの蹴りがその隙を正確に捉える。
リリィの補助魔法が二人の速度と破壊力を増幅させ、ルーナの魔術が敵の逃げ道を的確に塞ぐ。
「うん、いい感じだ。これならどんな敵が来ても…」
俺がその成果に満足しかけた、その時だった。
―――グォオオオオオオオッ!
地平線の彼方から、空気を震わす凄まじい咆哮が轟いた。
見上げる。
巨大な影が太陽を遮っていた。急速にこちらへ接近してくる。
硬質な鱗に覆われた巨体、鋭い爪と牙、そして翼を持つ、空の王者。
「エンシェント・ワイバーン…! A ランク級の魔物よ!」
ルーナが即座に敵の正体を看破し、緊張の声を上げる。
その威圧感は、これまで遭遇したどの魔物とも比較にならない。
普通なら、A ランクパーティでも死闘を覚悟する相手だ。
だが、俺たちの間には、不思議なほどの焦りはなかった。むしろ、高揚感すらあった。
「最高の腕試しだな。訓練の総仕上げだ!」
俺が不敵に笑って叫ぶと、四人は力強く頷いた。その瞳には恐怖ではなく、信頼と闘志が燃え盛っていた。
「ルーナ、分析を!」
「了解! あの個体は左翼に古い傷があるわ。飛行時の旋回に癖が出るはず!」
「リリィ、全員に身体強化を!」
「はいっ! 皆さんの力、最大限に引き出します!」
「ティナは攪乱! セレスは俺の合図で突っ込め!」
「おうさ! いっちょう揉んでやるぜ!」
「承知した! 我が剣のすべてを懸ける!」
戦いの火蓋が切って落とされた。
ティナが獣のような俊敏さで地を駆ける。
ワイバーンの巨躯を翻弄するように注意を引きつける。
巨体が苛立ち紛れにティナを追って旋回する。
その瞬間。ルーナの予測通り、動きが一瞬鈍った。
「今だ、セレス!」
リリィの強化魔法で黄金のオーラをまとったセレスが閃光となって駆ける。
彼女の放った一閃が、ワイバーンの左翼の付け根を正確に切り裂いた。
苦痛の咆哮を上げ、墜落するワイバーン。
体勢を崩しながらも、その口から灼熱のブレスが放たれる。
俺たちを薙ぎ払うように。
「させん!」
俺は即座に多重防御魔術を展開し、ブレスを完全に相殺する。
その隙を見逃す仲間たちではない。
ルーナの最大火力魔術『エクスプロージョン』が墜落したワイバーンの頭上で炸裂する。
ティナの嵐のような連撃が傷口に叩き込まれる。
そして、体勢を立て直したセレスが渾身の力で心臓を貫いた。
A ランク級の魔物が、わずか数分の連携で見事に沈黙した。
「…やった」
誰かが、ぽつりと呟いた。
リリィ、セレス、ティナ、ルーナ。
そして、俺。
五人は互いの顔を見合わせる。
そして確かな手応えに満ちた笑みを浮かべた。
個々の力が、才能が、想いが見事に噛み合い、一つの意志として昇華された完璧な勝利。
この瞬間、俺たちのパーティは、ただの冒険者の集まりではない、「最強」の領域へと足を踏み入れたのだと、誰もが実感していた。




