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「異世界に転生した俺、『完全学習』で最速無双してたら、いつの間にか最強のパーティができあがっていました。」  作者: 悠々


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猫獣人の格闘家ティナ

カズマたちが選んだのは、「しっぽ亭」という名の活気ある食堂だった。

扉を開けると、香ばしい肉の焼ける匂いと、獣人たちの陽気な笑い声が一行を迎える。

屈強な犬獣人のグループが酒を酌み交わし、兎獣人の家族が和やかに食事をしている。人間街とは違う、生命力に満ちた空気がそこにはあった。


三人がテーブルにつくと、ぴょこんと立った猫耳を揺らしながら、元気のいい少女が注文を取りに来た。

「へい、いらっしゃい! ご注文は?」

腰まで伸ばした黒髪をポニーテールに結び、動きやすそうな格闘着にエプロンをかけている。大きな瞳は好奇心に満ち、口元には快活な笑みが浮かんでいた。


カズマがおすすめの肉料理を注文していると、店の入り口で騒ぎが起きた。

「この肉が硬えって言ってんだよ! 金払えるか!」

泥酔した熊獣人の客が、店員の胸ぐらを掴んで怒鳴りつけている。


その瞬間、注文を取っていた猫耳の少女が動いた。

「ちょっと、あんた。他のお客さんの迷惑だろ!」


彼女はテーブルの間をすり抜け、あっという間に熊獣人の前に立つ。

「ああん? なんだ小娘、お前もやられたいのか!」

熊獣人が巨大な腕を振り上げた。


だが、その腕が振り下ろされることはなかった。

少女はしなやかな動きでその腕を潜り抜けると、熊獣人の脇腹に鋭い蹴りを叩き込む。

「ぐふっ…!」

巨体がくの字に折れ曲がる。さらに彼女は流れるような動きで相手の背後に回り込み、首筋に的確な手刀を打ち込んだ。

熊獣人は白目を剥き、巨体を揺らしながらその場に崩れ落ちた。


「はい、おしまいっと。誰か、こいつを裏に運んでおいてー!」

少女はパンパンと手を叩き、何事もなかったかのようにカズマたちのテーブルに戻ってきた。


「ごめんごめん、お待たせ! で、注文の続きだっけ?」


リリィとセレスが呆気にとられている中、カズマだけが感心したように彼女を見ていた。

(今の動き…無駄がない。かなりの手練れだな)


少女はそこで初めて、カズマの視線に気づいた。

彼女の猫のような瞳が、カズマの全身を舐めるように見る。

「……あんた、何者だ? 見かけによらず、とんでもない強さの匂いがプンプンするぜ」

獣人ならではの鋭い直感か、彼女はカズマの実力の一端を正確に見抜いていた。


「俺はティナ。この店の看板娘で、最強の傭兵団を作るのが夢なんだ! あんた、私の仲間になれ!」

彼女はビシッとカズマを指差して言った。


「悪いけど、傭兵団に入る気はないよ」

カズマが苦笑しながら断ると、ティナはむっとした顔で腕を組んだ。

「ちぇっ、つれないね。じゃあ、勝負だ! 私が勝ったら、あんたは私の傭兵団に入れ! あんたが勝ったら、今日の食事代はタダにしてやる!」


あまりにも一方的な提案だったが、カズマはその挑戦を受けることにした。


店の裏にある広場で、カズマとティナは向かい合っていた。

「いくぜ!」

ティナは猫のように低い姿勢から、爆発的な瞬発力でカズマに襲いかかった。

鋭い爪を立てた手刀が、嵐のようにカズマを襲う。

その動きは、セレスの剣とはまた違う、予測不能な軌道を描いていた。


カズマは、その全てを最小限の動きでかわしていく。

ティナの動き、呼吸、重心移動。その全てが、カズマの脳にインプットされていく。


――ピロン。

【スキル『格闘術 Lv.MAX』を習得しました】


「なっ…!?」

自分の攻撃が全く当たらないことに、ティナの顔に焦りの色が浮かぶ。


「お返しだ」

カズマは呟くと、今度はティナが使っていた格闘術そのもので反撃に出た。

だが、その一撃一撃は、ティナのそれよりも遥かに速く、重く、そして洗練されていた。


「うそ…!? なんであんたが、あたしの技を…!」


ティナは完全に自分の動きを読まれ、防戦一方に追い込まれる。

最後は、カズマが放った軽やかな回し蹴りで体勢を崩され、尻餅をついてしまった。

カズマのつま先が、彼女の喉元でぴたりと止まる。


「…あたしの、負けだ」

ティナは悔しそうに、しかしどこか晴れやかな顔で降参を認めた。


「約束通り、食事代はタダにしてやるよ。…でも、諦めないからな!」

ティナは立ち上がると、再びカズマを指差した。

「あんたみたいな強いやつ、絶対に逃がすもんか! 何度でもスカウトしてやるから、覚悟しとけよ!」


彼女はそう言い放つと、さっさと店の中に戻っていった。


「なんだか、嵐みたいな人でしたね…」

リリィが苦笑する。

「だが、腕は確かだ。面白い奴ではあるな」

セレスも、ティナの実力を認めているようだった。


カズマは、これから始まるであろう騒がしい日々に少しだけ頭を痛めながらも、どこか楽しんでいる自分に気づいていた。


食堂に戻ると、ティナが山盛りの肉料理をテーブルに並べて待っていた。

「さあ、食え食え! 負けはしたけど、サービスだ!」


その屈託のない笑顔に、カズマたちもつられて笑った。

この街での滞在は、どうやら退屈せずに済みそうだった。

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