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「異世界に転生した俺、『完全学習』で最速無双してたら、いつの間にか最強のパーティができあがっていました。」  作者: 悠々


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異種族の街ミコト

グリフォンとの戦いから数日後。

一行の旅は驚くほど順調だった。

セレスとリリィの連携は日を追うごとに洗練され、道中の魔物など敵ではなかった。

セレスはリリィの補助魔法の重要性を理解し、リリィはセレスという頼れる前衛がいることで、安心して魔法に集中できる。

二人の間には、以前とは比べ物にならないほどの信頼関係が生まれていた。カズマが何も言わなくても、セレスの動きに合わせてリリィが的確な補助魔法をかける。そんな光景も珍しくなくなっていた。


そんなある日、街道の先に大きな街が見えてきた。

ゼノンとはまた違う、どこか異国情緒の漂う街並み。

建物の素材も、ゼノンのような画一的な石造りではなく、木やレンガ、土壁など様々で、それが独特の景観を生み出している。

西の交易都市「ミコト」だ。


「わあ、なんだか賑やかそうな街ですね!」

リリィが嬉しそうに声を上げる。


城門をくぐると、その活気は想像以上だった。

様々な地方から来た商人たちの威勢のいい声。香辛料や珍しい果物の匂い。

そして何より、この街の特徴は、行き交う人々の半数以上が獣人であることだった。

しなやかな尻尾を揺らす猫獣人、忠誠心の厚そうな犬獣人、大きな耳を持つ兎獣人や、ずる賢そうな狐獣人。多様な種族が、人間と共存して暮らしている。

少なくとも、表向きはそう見えた。


「なんだか…少し、変な感じがしますね」

セレスが眉をひそめて呟いた。


彼女の言う通り、街は活気に満ちている一方で、どこか張り詰めた空気が漂っていた。

大通りを歩いていても、人間は人間同士、獣人は獣人同士で自然と固まって歩いている。露店で品物を買うにも、人間と獣人が同じ列に並ぶことはほとんどない。

ふと、カズマたちの前で、獣人の子供が駆けてきて人間の商人にぶつかった。商人は舌打ちをすると、汚いものでも払うかのように服の埃を払い、子供を睨みつける。子供の親らしき獣人が、慌てて駆け寄り、深々と頭を下げていた。

まるで水と油のように、見えない壁が両者の間に存在しているかのようだった。


一行が広場に出ると、人だかりができていた。

その中心で、一人の男が声を張り上げている。


「我々人間は、神に選ばれた種族である! この街の富は、我々人間の手によって築かれたものだ! それを獣人どもに分け与える必要などない!」

「奴らは我々の仕事を奪い、街を汚すだけの存在だ! 獣人どもは獣人街から出てくるな!」


人間至上主義を掲げる男の演説に、一部の人間たちが喝采を送る。

その光景を、少し離れた場所から獣人たちが苦々しい表情で睨みつけていた。

中には、怒りに牙を剥き、拳を握りしめている者もいる。

今にも飛びかかりそうな若者を、年長者らしき獣人が必死に抑えている。

一触即発。そんな言葉がぴったりの、危険な雰囲気が広場を支配していた。


「…面倒なことになってるな」

カズマはため息をついた。

スローライフを求める彼にとって、こういういざこざは最も避けたいものだ。


「ひどいです…。同じ街に住んでいるのに…」

リリィが悲しそうに呟く。孤児院で育った彼女にとって、理由なく誰かが排斥される光景は、他人事とは思えなかった。

「どちらにも言い分はあるのだろう。だが、これでは何も解決しない」

セレスもまた、厳しい表情でその光景を見つめていた。秩序を重んじる彼女にとって、このような剥き出しの対立は醜悪なものに映った。


仲間たちの顔を見て、カズマは「見て見ぬふり」という選択肢が消えたことを悟る。

リリィもセレスも、この状況を許せないと感じている。そして、そんな仲間たちの気持ちを無視して、自分だけが安楽な生活を送ることは、カズマにはできなかった。


「よし、まずは情報収集だ。腹も減ったし、どこか美味いものが食える店を探そう」

カズマは努めて明るい声で言った。

「どうせなら、獣人たちがやってる店がいいな。そっちの方が面白い話が聞けるかもしれない」


カズマの提案に、リリィとセレスは頷いた。


一行は、人間たちの居住区を抜け、獣人たちが多く暮らす「獣人街」へと足を踏み入れる。

人間街の整然とした雰囲気とは違い、建物は少し古びているが、道端で子供たちが駆け回り、どこからともなく陽気な音楽が聞こえてくる。より野性的で、生命力に満ちた活気がそこにはあった。


カズマは鼻をくんと鳴らし、一番うまそうな匂いが漂ってくる一軒の食堂に目星をつけた。

肉の焼ける香ばしい匂いと、スパイスの複雑な香り。食欲をそそるその匂いの元をたどると、「しっぽ亭」と書かれた木製の看板が見えた。

「よし、あの店にしよう」


扉を開けた先で、新たな出会いと、そして新たな騒動が待ち受けていることを、この時の彼らはまだ知らなかった。



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