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転生魔術師令嬢は転生した未来で魔術の素晴らしさを広めたい!〜悪役令嬢になんで負けてられるか!〜  作者: 雪道 蒼細
四章 魔術を広げるために

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【4】 現在と過去と

 「フローレ!大変なことになった!!」


 シルディアルは息を荒くし、足音を大きく立てながら師匠の研究室へと駆け込んできた。シルディアルの右手にはクシャクシャにされた新聞が握られている。

 その新聞には大きく、『号外』と書かれたいた。

 

 「国王が、魔術を学ぶものに対する処罰を決めたんだ!!」

 「え!?処罰!?」


 魔術に関する悪いことが決まったのだろうくらいに思っていたが、まさか処罰だったとは。

 私は驚きのあまり、手に持っていたコップを落としてし割ってしまった。(ごめんね師匠)

 

 「あぁ。もうすでに捕まった奴もいる。ほら、前フローレと杖を買いに行った店の店主。密告されて捕まったらしい‥」

 「店主が!?」


 確か店主は魔道具を扱うだけで、魔術師ではなかったはず。なので魔術を学ぶものの対象に入らないと思っていたが、まさか捕まってしまうとは、


 「多分魔術に関係してる人なら誰彼構わず捕まえる気だ。密告をしたら賞金が貰えるからな、貧しい平民とかは多分魔術本一冊持ってるだけで密告してくるぜ」

 

 魔術本。もしなしたらビルディー家にも連絡しておいた方がいいかもしれない。

 私の部屋には百冊を超える魔術本がある。

 (流石に冤罪で家族が捕まっては嫌だ)

 

 「・・多分これから俺らが活動するのも処罰の対象なんだが・・」


 そこまで言ってシルディアルは口を止めた。

 何か可笑しなことでもあったのかと思い私はシルディアルを見る。

 なんだかシルディアルは少し気難しそうな顔をしている。

 

 「なぁ、俺、国王に何度か会ったことがあるんだが、なんでこんなことを決めたんだろ。俺が見た限りだとかなり温厚だった印象だった気がするんだが・・」


 温厚。そう聞いて私はオウム返しをする。

 確かに言われてみれば、国王陛下は急に処罰などを決める性格ではないと思った。

 まぁ素の性格は流石に分からないが・・。

 (これで腹黒だったらもう私は人間不信になってしまう)

 もう私の癒し枠であるルリアンにも安心して抱き着けなくなってしまう。

 そんなことを頭で考えていると、シルディアルが「あ」と何かを思い出したような声を上げ私を見た。

 今日のシルディアルは色々と気が付くなと思いながら私はシルディアルを再び見る。

 

 「なぁ。今思い出したんだ。ほら、魔術嫌いの黒髪の令嬢、覚えてるか?前にフローレがぶつかったって言う」


 黒髪。それなら直ぐに思い出せる。

 現王を叔父に持つ令嬢・・。それはセルフィア公爵令嬢である。

 現王の実妹が下賜され生まれた娘。

 (私の情報‥っかこれはミル情報だけど、王族やその親戚関係で魔術嫌いだったのは確かセルフィア公爵令嬢だけって言っていた気がする‥)

 

 「まさかセルフィア公爵令嬢がこれを敷くんだって言いたいの?」

 「まぁ‥」

 「んー。それはなくも無いだろうけど、セルフィア公爵令嬢ってまだ十六歳でしょ?さすがに大人の事情にはまだ口を出せないんじゃ?」

 

 (ましてや女性だし)

 この国では基本的に女性は家を。男性が仕事をという感じなので政治関係でも女性が職に就くことは珍しい。

 珍しいというのは数年前に女性の宰相が誕生したので、まったくいないわけではないからだ。


 「それはそうだが…」

 「…なら協力者がいるんじゃないか?」

 「え?協力者?」


 今まで私たちの会話を静かに聞いていた師匠がそう言った。

 協力者。そう言えば考えたことはなかったかもしれない‥。

 (でもあの悪役令嬢っぽい‥えぇい!ここは面倒くさいからもう悪役令嬢でいいや。んで悪役令嬢に私は協力者がいるとは思えないんだよな‥見た目怖いし)

 でももしかしたらいるかも?と悶々と考えていると、シルディアルは心当たりがあるのか少し決まずそうに目を逸らした。


 「…シルディアル?何か心当たりでもあるの?」

 「いや…その」


 シルディアルはモゴモゴト口を動かし師匠を見た。

 師匠に何かあるのかと思い私も師匠を見るが、特段変わったことはない。

 

 「あー。二人とも。そろそろ先生は職員会議の時間なんだ。ほら帰った帰った」

 「え!?今から?ってか急に話を切り上げないでください!!」


 私は不満を口にするが、無理やり魔術で追い出されてしまった。さすがに話を途中で終わらせるのはどうかと思うんですが。師匠?

 私は半目で研究室を睨んだ後、シルディアルを見る。

  

 「…今日は先生も忙しそうだし、解散にしようぜ?」


 シルディアルはそう言って私の額にキスを落とす。どこか悲し気な表情をしているのは気のせいだろうか…。


 「シル‥っ!」

 「じゃあな」

 「あ…」


 シルディアルは暗い廊下を歩いて行ってしまった。

 シルディアルの足音が響く。

 周りが静かなせいで余計大きく聞こえた。



 

 


 「‥‥フローレ。ごめん」

 (でもいつか‥ちゃんと向き合うから。真実を‥フローレ。いやフィステニアにちゃんと言うから。だから待っててくれ‥)


 * * * *


 シルディアルが先に寮へ帰ってしまたので、私は一人で寮へと戻る。

 (なんだか今日は色々あったな…)

 少しだけぼーっとしながら私はベッドで横になる。

 本当はゆっくりと横になりたかっただけなのだがいつのまにか瞼を閉じて寝ていた。




 

 その日私は夢を見た。





 .。o○.。o○.。o○


 『あなたのこと許さないですから。娘の腕を返してください!!』

 

 そう三十路ほどの女が私を責める。

 殴りかかりそうな勢いだったが、周りの人間が女を押さえてくれたおかげで私は殴られなかった。だけど私の心の中はぐちゃぐちゃだった。

 言葉では表せないような不安と罪悪感がこみあげてくる。

 だが逃げるわけにはいかないと思い私は女の隣にいた片腕を失った少女を見た。

 周りの人の話によれば、少女は高貴な家柄の令嬢らしい。婚約者もいたが、片腕を失ったせいか婚約を白紙にされたと聞いた。

 だがその割には少女は悲しんではいなかった。

 いや、悲しんでなくはないかもしれないが、何というか安堵したようなそんな顔をしていた。

 じっと母親の隣で私を見ている。

 たまに母親に何か言おうとしているが、母親は私にばかり視線を注ぎ、娘を見ようともしない。

 


 『ちょっと、あんた聞いてんの!?うちの娘の人生を滅茶苦茶にしてどう責任とるつもりなのよ!?答えなさいよ!!』

 「‥」


 傷が染みる。


 雨が降ってきた。


 (…あぁもしかして)

 何となくだが少女が安堵した理由が分かった気がする。

   ・・

 もう道具として見られなくなったことに安堵したのかもしれない。

 その気持ちは凄く分かる。私もそうだったから。

 私のお祖母様も私を道具のように見ていた。だけど魔術を学び始めてからは道具として見ることはなくなった。

 だってこの時代では魔術はそこまで好かれてはいなかったから。ましてや貴族社会では。

 それに女性ともなると、男より強い女性は好かれにくい。

 だからお祖母様は私を道具の対象として見るのはやめたのだ。


 きっと目の前の少女も同じだろう。

 親の道具ではなくなって安堵してる。

 

 ーーでもこれを正当化して責任から逃れるような真似はしない。

 ただただ。どう償っていこうと頭で考える。

 

 この少女のために私は…何ができるのだろうか。


 私がしてしまった罪はどう償うべきなのだろうか‥。


 


フィステニアって誰だっけと思った方もいると思います。フィステニアはフローレの前世の名前です。一話に書いてあります!

 * * * *

どうでもいいですが、今朝なろうを見たら、ブクマと評価、リアクションが増えていてとても驚きました。( ゜Д゜)

(驚きすぎてスマホを投げてしまいました)

本当に有難うございます。

体調の方も少しづつ良くなってきていて、11月には前と同じ速度で更新できると思います。

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