間話 2 シルディアルは寂しい
とある日の昼休み。俺はは食堂でご飯をじっと見つめながら唸っていた。
「むむむ」
「何してるんですか?シルディアル?」
そう俺の目の前の席に座っているロルフは尋ねてきた。
「フローレが足りない」
「はぁ?」
ロルフが何言ってんだコイツ。と言う顔をしているが気にしない。
事実フローレが足りないのだから。
最近のフローレは特待生になり、忙しくなったせいで俺に遭遇する確率が格段に減った。
今までは廊下や、食堂で会えていたのだが今では魔術の授業ぐらいでしか会えない。
これは俺の生命に関わる深刻な事態だ。この状況が続けば俺は『フローレ不足死』を引き起こしてしまう!!
「なんとかしなければ!」
「・・あんた、フローレ様のことになると頭のネジが外れるよな。普段は王子様キャラなんて女子生徒の間で話題なのに」
「おうじさまきゃら?」
俺は聞きなれない単語に首を傾げた。
俺は王族ではないし、何を根拠に王子様キャラなんて呼ばれているのだろうか。
「よく分からないが、俺は王子様キャラなんかじゃないからな?」
「…まぁ本人が自覚ナシならそれでいいですけど‥。…で?フローレ様が足りないんでしたっけ?なら何かフローレ様からプレゼントを貰えばいいじゃないですか」
「貰う?」
「そうですよ。よくシルディアルはフローレ様にプレゼントを贈ってるじゃないですか。それの逆です。ぎゃーく」
俺がフローレからプレゼントを貰う、今までにそのようなことは会っただろうか?いや無い。
(そうか…俺がフローレから何か貰えばいいのか…。でもプレゼントくれって言うのも変だし…)
俺はご飯を食べるのを中断し、真剣にどうしたらプレゼントをフローレから貰うことができるのかを考えていた。
* * * *
その間、ロルフは真剣に考えるシルディアルを見てこう思っていた。
(この人、フローレ様からのプレゼントなら、ゴミにラッピングしても喜びそうだな‥)
と。
※シルディアルの名誉のために言いますがシルディアルは別に変態ではないです。ストーカーでもないです。ただただフローレが好きで、今現在フローレに構ってもらえなくて寂しいと感じているだけです。さすがにゴミでは喜びません。
* * * *
そして放課後。シルディアルは学園中を走り回りフローレを探していた。
(やっぱり闇雲に探すだけじゃ会えないか‥)
魔術の研究室へ行けば会えると踏んだのだが、いなかった。逆にカルヴァス先生に未提出の課題についての文句を言われて終わった。
(あの課題出したはずだったんだが無くなってたんだよな。あーあもう一度書かなきゃいけねぇのか‥)
そう。魔術のレポートが俺のだけ消えていたのだ。フローレに愚痴ったら「あんたがそう言うのちゃんと管理しないからでしょう」とお説教されてしまった。
だがそれに関しては俺もフローレに対して言いたいことがある。
「お前の場合は専属侍女がやってくれてるだけだろう」と。俺の場合ロルフも整理整頓が苦手なので、お互いにカバーするということができない。
フローレと専属侍女は苦手な部分をお互いの得意分野で補えるが、俺とロルフは系統が似ているため、苦手分野は一緒で得意分野も似たような感じなのだ。
おかげでロルフの整理までたまに俺がやる。
(俺も苦手なのにな‥)
愚痴りたいが、今はフローレを探すのに全集中しなければ。
よしっ探すぞ。と意気込んだ時、聞きなれた声が後ろから聞こえた。
「あ!シルディアル見つけた」
「フローレ!?」
まさかのフローレから声を掛けられるとは。俺は驚いてその場で固まってしまった。
固まっていると目の前までフローレが走ってきて、俺の目の前に何かを突き付けた。
「…?ナニコレ」
俺の手のひらにはよく分からない水色の物体が置かれていた。それに動いているような‥?
(今完全に動いたよな‥えっ動いたよな!?)
「ん!私の力作だよ!もう行かなくちゃいけないから詳しくは話せないんだけど‥まぁとりあえずプレゼント!」
「あ。ちょっフローレ!」
フローレは嵐のように去ってってしまった。
俺の手のひらに残されたのはウニョウニョと動く謎の物体だ。
スライム‥とはまた違うのだが、例えれば教科書を丸めた感じの細長くて丸い物体が動いているという感じだ。
よく分からないが‥。
「フローレからの贈り物を貰えただけでいっか」
そう結論付けて俺は考えるのをやめた。
それ以来シルディアルの部屋には謎の置物があるとかないとか‥・
明日から三章に入ります。
新たなキャラを二人ほど登場させる予定です。
(悪役令嬢系と無気力な男系)




