【10】 二人の目的
「‥で?この話を聞いた私は何をすればいいの?」
さすがにこの話を聞いただけでは、師匠が私に何を伝えたいのかは分からない。師匠が悪いやつを見つけるという話は理解できたが…。
「あぁ‥この『魔術師を悪に仕立てた人物』を探すのを手伝ってほしいんだ」
「手伝ってって言われてもねぇ‥」
「ハイ分かりました!」と言えるものか。それに私の目的は悪人を探すことじゃない。魔術を世界に広めるためだ。
だから人探しに使っている時間は‥。
「どうせお前は魔術を世界に広めたいというのだろう」
「うぐっ」
心の声を読んだの?と言いたくなるほど正確な問いに私は言葉を詰まらせる。そう言えばよく前世でも「お前の考えていることは分かりやすい」って言われてたっけ。六歳の時に弟子入りしたから、最後に会ったのを引けば約六・七年の付き合いだ。まぁここまで一緒に居れば私の考えてることなんてバレバレか。
「まぁそうですけど…」
「ならついでの用だ。良いだろう?それに私はあまり自由には動けないんだ」
(ついでって‥。ただでさえ魔術を広めるのに苦労しているんだが?)
「…というと?」
「仲間の協力があったとしても魔王を倒すほどの力がある、魔術師だ。英雄から転げ落ちたとしてもこの脅威ともなりうる力を国が放っておくわけがない。そん中、用意されたのがこの学園さ。俺にはこの研究室にいるとき以外は監視が付いている。好き勝手に外出することもできないから探すことは不可能なのさ」
そうまで言われてしまえば「ハイ」としか言えなくなってしまう。それに監視が付いていたなんて知らなかった。あれ?でも普通の人間に師匠が捕まるわけないし…監視の目をくぐって外へ行けるのでは?
「ねぇ師匠。監視をまくことってできないの?」
「無理だ。こっちは人質を取られている。監視の目から外れた瞬間そいつが殺される決まりになってんだ」
人質。おそらく勇者パーティーのメンバーを人質にされているのだろう。師匠は自分の都合で人が死ぬのを誰よりも嫌う。そして曲がっていることも大っ嫌いでなんでも正々堂々とやりたがる人物でもある。でもだからって弟子の私をパシリにするとは。解せぬ。
だがまた師匠に頼られることは嬉しいと思う自分もいる。
ぐぬぬここは師匠の一番弟子として師匠の頼みを聞くべきか?それに早くしないと弟弟子に役目をかっさらわれる可能性もある。
「‥‥分かりました。その役目引き受けます」
それに魔術師を悪人に仕立て上げている人物がいる限り、私がどんなに魔術を広めようと努力しても、それが無になるんだもんね。あーあ。私の生きているうちに私の目的は達成できるのだろうか。
「そうか…ではその見返りとして、学園内でのサポートはなんでも引き受けよう。一応魔術師だが先生だしな。人脈以外ならどうにかなる」
まぁ見返りで学園内のサポートをしえ貰えるのは有り難いが、その人脈が一番大事だたりするんじゃないの?と思ったが私は何も言わない。サポートをしてくれるって言うんだからここはツッコまないの。
「ありがとうございます。‥あそうだ。私、師匠に頼みたいことがあって、部活のことなんですけど」
「部活‥?あぁ作りたいのか」
そうである。というかこれが一番の目的だったはずなのに、師匠と再会できたり色々あって忘れていた。
「そうなんです!私の目的を師匠も知っているでしょう?部活をすれば文化祭の日に展示やショーなどもすることが可能ですし‥。師匠のお願いを聞くんですから許可くらいください!」
少し強引だが、前世からの仲だ多少のことは許されるだろう。
師匠も「まぁ、部活くらいなら…」という感じで、魔術を使い部活設立申請の紙を出しサインを書いた。
「…!ありがとうございます、師匠」
私は師匠に礼を言い、早速部活担当の先生にこの紙を提出しに行こうと教室を出ようしたが私はその足を止めた。そう言えば一つ物凄く気になっていたことがあったのだ。
「そう言えば師匠なんで私って分かったんですか?」
そう私が疑問を投げかけると、師匠は一瞬驚いたように目を丸くさせた後、笑ってこう言った。
「お前の魔術陣を俺が間違うはずないだろう」
と。やっぱり私の師匠はすごいなと思った。でもこれだけは去る前に言わせてほしい。
「そうですね。でもいい歳したおじさんが、若い子だけの勇者パーティーに加わったのはどうかと思います。では」
そう言って私は師匠の研究室を去った。後ろで「お前だって、いい歳して学園生活を楽しんでるではないか」と叫ばれたが、そんなことは気にしない。
だって師匠は五十代。私は二十代。まだまだ若い‥はずだ。
フローレの師匠は魔術で体の時を戻して、勇者パーティーに加わりました。(本来これは禁術です)
フローレと違い一度死んだわけではありません。
実年齢は五十三です。
後、カルヴァスの年齢は見た目年齢であり※()で書いた年齢は見た目!まだ本当の年齢は後公開しておりません。




