暗い夜の土手で
月夜の土手で二人の男女が話していた。二人の話し声以外に聞こえる音はなく、静かな時間が流れていた。
「レイ、今日は付き合ってくれてありがとうな。」
「そうね。あなたに付き合わなければ今頃寝ているはずだわ。」
レイと呼ばれた少女が冷たい口調で、それでいて親しみを込めて答えた。
「で今日はなんのために私をこんな所に?まさか私と夜空をみるためだけとは言わないわよね。」
「いや~ほっほら今日は月とか綺麗だし星もあんまり見えないけど、普段はきれいだから。」
レイは男に鋭い目線を浴びせた。
男はしばらく沈黙をしたあと口を開く。
「ほ…ほんとに今日は月が綺麗だなこんなきれいなら他の星も見えなくなっちゃうな。レイを見てるとーそのー」
「なるほどね、でも月は太陽の代わりだから。あなたは私に誰の代わりを務めてほしいか分からない、でも私は誰かの代わりにはなりたくはない。私はあなたの星になりたいどんなに明るい太陽があっても、朝も夜もいつでもあなたの隣りにいて明るく照らす星に」
そう言うとレイは立ち上がり逃げるようにその場を去った。去り際
「また明日」
一言そう告げた。
レイが帰ったあと一人残った男が星を眺めた。
「星か~………俺も帰るか」
男も立ち去り月明かりが照らす音のない夜が始まった。