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彼女がいなくなる頃に  作者: 春と芒
41/44

ep.41 *

 私によるクラスメイトからの聴取はあらかた終わってしまった。

 残すところは篠山グループだけだ。しかし、悠長に待っていることは出来そうになさそうだ。 

 というのも残す所、期末考査を迎える頃合いであるからである。期末というのだから、数週間の内に一学期も終わろうとしているのだ。

「で、どう対処するんだ」と横で歩いている岸峰くんが私に丸投げするように喋りかけてきた。

「別に、どうもしないわ」

 いままで通りにやっていくつもりだ。変にことを起こそうならば、また彼女たちの反感を買いかねない。

「無論、僕も手伝うよ」

「左様ですか」と呆れ紛れにいうのも、彼があまり役立ったことなどなかった。

 二人でいるとむしろ訝しく思われて、早速にしてクラスメイトの彼女たちからも距離感を感じさせるほどであった。私が言い出しっぺっていうこともあって断りづらいが、一人のほうがやりやすいと思うこともある。

「まぁ、頼りにさせてもらうは」といって私達は分かれた。


 結局私は大した発展がなく、テストを終えてしまった。

 残すところはわずかだ。エアコンの音が静まった教室の中で響き渡っていた。

 そして、迎えた。終業式―――。

 就学に専念できていたとは思えない。それに四十川さんの事件との進捗も芳しいとは思えない。それなのに、私はこうやって毎日学校に来ていることが馬鹿馬鹿しく思えてきた。

 体育館に集められた全校生徒はしばしば長い話を聞かされて殺到するように体育館から一斉に立ち退いた。それはまるで排水溝に水が流れ込むかのように人流が一極に集中していたが、吸い込まれるように人は流れていった。

 放課後、岸峰くんを誘って月見里くんもいい加減使えるコマとして夏休みについて話そうと思っていたところだったのが、彼はいつの間に消えてしまっていた。

 今朝は彼の出席しているのはつつがなく出席名簿を読み上げていたことからも推測して分かる。

 そうなると先んじて月見里くんの下へといったのかといったらそうではなかった。

 月見里くんに訊ねてたが、彼は首を振るだけで来ていないというのだ。

 とうなると先に帰ったそういうことになりそうだ。

 私は携帯にメールを送るが、返信も既読もつかない。苛立ちで、電話も掛けてみたのだが、こちらもかからず、一体彼は一人で何を考えているのだろうかと思いながらも、月見里くんがいる教室へと戻った。


「夏休み。あなたにも手伝ってもらうから」

「嫌だよ。僕はそんな足を動かすような仕事はしない」と彼は断固として拒否した。

「あなた、頭を使うと言う割にはあまり役に立ってないわ」

「そりゃそうだよ。主軸は君たちであくまで僕は補佐に徹しているのだから」と彼は自分の正当性を主張しながらも、それを裏付ける行動をしていないのだから、私にとっては戯言にしか思えないのだ。

「駄目よ。先生たちにも呼びかけて改善していく」

 彼はやれやれと言うように首を振った。

「もう遅いよ。そこに行き着く必要性はないさ」

「はぁ!?」と私は思わずこみ上げた思いを口にした。

「だから、教師を丸め込む必要はもはやないよ」と再度いい直した。

「何、あなた真相が分かってるみたいじゃない」

「僕じゃない。彼は着実に今回の事件の外堀を埋め始めている」

「彼って―――」

 月見里くんがその名前を上げるよりもはやく、なんとなくである察しはついていた。そして、彼の一言で確信的なものへとなった。

「君の相棒。岸峰くんだよ」

 彼を相棒と呼ぶのはいささかいただけないが、やはり彼は独自で当たるには当たっていたようだ。

「秘密にするなんて、信頼関係もありゃしないんだから、相棒と言わないわよ」 

 私は表立って非難した。きっと岸峰くんへの八つ当たりと相まって、軽口を叩いたのだ。

「そう無下に言うなよ。かれこれこの四半期を一緒にした相棒だろう」とやらたと彼は相棒の二文字に固執しているようだった。

「別に、もはや裏切れた今となってしまっては関係わよ」とふてくれされてそう去勢をはるように(うすぶ)いた。

「まぁ、どちらにしろ。競争なら君は二歩程度遅れを取っているよ」と彼は嘲笑った。

「なら、頭を使うんでしょ。情報を渡しにも頂戴よ」

「君とはまだ、等価交換の話をしていなかったね、それをしてから吟味させてもらおうか」と彼は憎ったらしくもそうは言ったが苦々しく私は岸峰くんに追いつくためにその提案に乗るしかなかった。

「篠山さんを当たるといい。彼女が重要人物だからね」と言ったために私は急いで、彼女が教室にいることを願いながら教室へと向かった。

 幸運にも教室間を移動する際は教師に怒られずにこれたが、祝福を施してくれたのはそこまでで走った甲斐もなく、篠山さんは教室を去った後だった。

 当然か。大抵の学生は受験とかを控えている二年の夏となると実質最後の夏休みといっても過言ではない。篠山さんのような人間ならば持て余すことなく有意義に使いそうなものだ。それが今日から始まっていてもおかしくはなかった。

 チッと思わず、私は舌打ちをしていた。

「どうしたの。西原さん」と声をかけたのはいつぞやにお世話になった鞘本さんとその後ろにひそひそと隠れる三本さんであった。

 一応暖簾に腕押しかも知れないが、彼女たちに篠山さんの所在を訊ねた。

 しかし、案の定返ってくるのは分からないという解りきっていた言葉だった。

「そう」と私は落胆するように言葉を漏らすと、鞘本さんが前々から岸峰くんと一緒にいることを認知しているだけあって、今日彼が横にいなかったことが不思議なのか。今度は彼女が訪ねてきた。

「いつもみたく岸峰くんを侍らせているわけではないのね」

 侍らせるとはまた、淫猥みたいな言葉を使うと思いながらも、

「先に帰られたの」と素直に答えた。

 まずもって、彼がいればこんなに息を上げることもなかったというものだ。

「そう、可愛そうね」と彼女は私をいじるように言ったが、私はその言葉に感化されることなく素通しした。

「そういえば、あなた達は岸峰くんと同じ卒業らしいじゃない」

「えぇ、そうね」

 鞘本さんは私と躍起になっていたために忘れされていた三本さんを回顧してか振り返って、彼女にも目配りした。

「この学校以外と知り合いが多くてさ」と彼女は話を続けた。彼女は数人の名前を列挙し始めた。最初は岸峰くんから始まって、三本さんと続いたが、その後はあっちの話であって私だけ置いてけぼりになった。

 私は話を遮ろうかと思ったが、三本さんから思わない一言で私は黙り込んでしまった。

「四十川さんも同じだった」と三本さんが付け加えて、私は身震いをした。

「じゃあ、あなた達。四人は―――」

「そうね、同じ中学出だよ」と私の言葉を遮るような形でそう述べた。

 そうと私は呆然と心ここにあらずといった感じであった。

 本当になにもかもが、バカバカしい。まるで岸峰くんに踊らされていたようで、こっちがついに操り人形が操られていたことに気づいた。

「ありがとう」と私彼女たちに礼をいって、月見里の下へと戻った。

 彼は相変わらず、面妖に白いキャンバスを眺めているだけであった。

「で、どうだった。急いでみて結果は間に合ったかい」

 つくづく腹立たしい男だ。彼はすでに教室にいないことまで考え通したうえで、私を弄ぶように煽り立てたに違いない。

「駄目」と答えた。なんとか怒りを押し殺すにの精一杯だった。

「そうか。それは残念だ」と白々しい言葉もこれまた腹立たしい。

「知っているなら、教えなさいよ。どうせ、岸峰くんから聴いているのでしょ」

「鋭いねぇ」と彼は私を称賛したような口ぶりだが、嘲ているのが目に見えて分かる。

「御託はいいの。さっさと白状しなさい」

 彼は腹を抱えて笑った。まさに噴飯ものだと私の怒りを一蹴した。それに私はついぞ抑えられなくなった感情を押し止めることがなできなくなってか。堤防が瓦解するように怒りを顕にした。

「いい加減、教えろ」

「やれやれ、暴力沙汰は君にとっても僕にとっても困る」と変わらず泰然自若としている。「愚かな犬を飼いならすも苦労がかかる」

 彼の誹謗は止まるところを知らず、つい私は手をあげて頬を殴った。

「やったね。君」と彼の双眸から凝視される視線はまさに熱いものだった。

 私も一発殴ったことに酔って冷静さを取り戻して、自分の過ちに気づいたが、彼の扇動的な発言にも罪がある。私は半歩として動じずにこと構えたが、案外彼は平然としていた。

 男の子って私みたいな非力だと殴っても対して痛くはないのだろうかと、別の方向へと思考のベクトルを変えていた。

「まぁ、そこまで強情な手段に出たんだ。教えてやるさ」

 そういうなら自分の身のためにもさっさと白状すればよかったのにと、自分の過ちを咎めることもなく彼に罪をなすりつけた。

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