ep.40 ep.39の続き
岸峰くんを同伴させて、鞘本さんと三本さんに臨んだ。
「よりにもよって」と傍らで岸峰くんが呟いた。
「別に会話するならって、鞘本さんが言うのよ」と私はことの経緯を話した。
「会話するねぇ・・・」と彼は呆れ紛れに答える。
確かにファミレスでするような内容ではなかったと思う。
岸峰くんを奥へと追いやった。たんに彼が気まずくなって逃げないようにするためだ。さすがに一対二では分が悪い。だからといって形勢が悪くなるわけではないのだ。
先に入店してた二人は早速とばかりに飲み放題のソフトドリンクを注文して手元にはすでに色づいたジュースがおいてある。
「さきにいただいます」と鞘本さんはあのときの剣幕は消えておしとやかに喋った。
「別に、飲み物くらいは頼んでいいだろう」となぜか岸峰くんは私にいちいち許可をとったが、それに私は拒否する権限がないわけで、趣向すると彼もすかさず呼び出し音を鳴らした。
まるで子供みたいと内心ほくそ笑んだ。
三本といえば、ひとり通路席でストーロに口つけてジュースを飲むばかりでまさに、居座りが悪そうだった。彼女自身もいやいや来たのだろうから心底帰りたいと思っているだろう。
「岸峰くんって、あんが子供ね」と鞘本さんは自分のジュースを他所にそう話した。
「僕は子供じゃないよ。ただ喉が乾いただけ」と少し外れた答えに鞘本さんはその的外れを看破するように笑った。
その笑顔に岸峰くんは憮然とした。
ウェイトレスの人に彼は一通りの注文を押せると、ウェイトレスはそそくさと別の場所へと移動していった。
「すまん、ジュース取ってくる」と私があえて通路側を占領したにもかかわらず、彼の一言で席を退いてしまった。その時はしまったと思ったが、彼もこの状況には馴れているようだったし、下手に邪魔して怪しまれるよりかはマシかと割り切った。
「さて、西原さん続きをしましょうか」とスイッチを切り替えたように鞘本さんはジュースのように冷たくなった。
「じゃあ、さっそく単刀直入に訊くのだけれど、三本さんあなたはなぜ鞘本さんに固執するの?」
彼女は肩を震わせて驚いたようだった。
「ごめんなさい」と私は反射的に謝った。それと同時に少し目線を反らして鞘本さんを見たが、これはセーフだったようだ。
「だ、大丈夫」と言質をえると話の続きを始めた。
「それって話さないと駄目なの?」と真っ向からの正論に私は唇を噛んだ。まさか三本さんからそんなことを言われるとは思って見なかった。たぶん、鞘本さんに吹き込まれたのだろうけど、私は意を決して肯いた。
これで理詰めに質問されていったらたぶん、明確に負ける。それに今の彼女は横に鞘本さんを置くことで安定している状態だろう。そうなると荒ぶることは考えづらい。つい口から漏らすようなこともなくなるだろう。
「それって四十川さんの件とどんな関係があるの?」とやはり、的確弱点をついてくる。
「そ、それは」と私がむしろ言葉が出なくなってしまう。
切り崩された。簡単に瓦解してしまった。私の名目は四十川さんの事件の真相であって、彼女たちの関係にメスを入れれる立場ではない。
「それって、やっぱ話さなくていいよね」と完全な攻防の取れた叙述であった。
お手上げですと、思った頃に運良く岸峰くんが再来した。
再び、席についてグラスに口をつけて一杯で盛大に飲み干した。
「で、なんの話をしているの」と岸峰くんは私の耳許でささやいて、私は話の斯々然々と話した。
「そんなことだったのか」と岸峰くんはまるで肩透かしのようにあっけらかんと言ってしまった。そんなことと片付けられる内容ではないだろう。彼が二人の間柄をそこまで熟知しているとも思えない。
「岸峰くん少なくともそういったナーバスのことをそんなことと矮小みたく言うのは止した方が良いわ」と説教を垂れると、嗚呼と単調な言葉が返ってきた。
「なぁ、鞘本。話していいか」となぜか彼は知っている前提で、私を置き去りにするように話を勧めていった。
ちょっとまってと仲裁するまえに、鞘本さんはお手並み拝見といったように承知してしまった。
「確か、鞘本と三本は幼馴染で前から仲がいいんだよな」
「そうね。私たちは旧知の仲ってやつね」と鞘本のその言葉によって、彼の泰然とした様子が確かであったことを証明した。
「それで鞘本は三本を助けたんだよな」
そうねと鞘本さんは思い出を回顧するように感慨深かそうに笑った。
「えっ、助けたって何を」と私は訊き返すと岸峰くんは少しばかり考えた素振りをとって、再び話し始めた。
「三本の部活であったいじめの件だよ」とまるで私がそれを知っていたかのように話すが、私は三本さんが何部に入っていたのかも知らないし、彼女がいじめられていたことも知らない。それにそれをかばったのが鞘本さんだったということは知る由もないというものだ。
「そうね。あの先輩をボコしたのは私」と彼女はこの年にして落ち着いているように見えるが、昔は結構やんちゃをしていたのだろうか。少しすごみを感じた。
「やっぱそうだったのか。クラスでめっちゃ話題になってからな」と岸峰くんも笑い草にして嘲笑しているが、当の本にである鞘本さんも機嫌が悪そうではないが、笑っている表情ではなかった。それに被害者であった三本さんはより一層この場から逃げ出したいのか身体は通路側へと向いている。
「先輩に向かってどなり散らしたらしいじゃん」
「そんなこともしたかもしれない」と彼女は他人事のように述べた。
「俺も噂半分で知ってるだけだから、確証はないんだけど。どちらにしろ一年生が上級生に向かって反抗するんだから、そうとうな勇気だよ」と岸峰くんは称賛した。
それにしても私は置物用に話が進んでいくが、実際その話がまるで作り話のようで私は唖然とするほかなかった。
「って、わけで鞘本と三本はずっと一緒にいるイメージだった」と最後に岸峰くんは締めた。
そうと私も呆然とキョトンとしてしまった。
「若気の至りってやつね」と鞘本さんは再びジュースを口にした。
「どうだい?」と岸峰くんが訊ねてきたから、
「そうだったの。三本さん再三にはなるけど悪かったわ」
落ち度は私にあった。そこまで深堀りして考えなかった私の安直さが彼女を傷つけてしまった結果となった。それに加えて、鞘本さんが彼女に変わってあそこまで激昂する理由もなっとくだ。
「だ、大丈夫」と彼女はそうはいったが、心許ない返事であった。
「これは終わり」と私は総括して締めた。
岸峰くんが頼んだ。杏仁豆腐が届くと、彼は一息で飲むようにこちらも食べ終えてしまった。
「時間を取らせてしまったお詫びではないけど、お金は私が払うから」と大見得を切る。
「じゃあ、お言葉に甘えて先に帰らせてもらわね」と三本さんをつれて鞘本さんたちは帰っていった。
彼女たちの関係は歪だと思っていたが、決して歪ではなかった。しかし、鞘本さんが依然として彼女のもとを離れないのは単に仲がいいのか。過保護なのか。考えても愚論だ。早々に忘れてしまおう。
「なぁ、僕の分も払ってくれるのか」と彼は調子のいいことをいって私に奢らせようとするが、今回は情報を教えてくれた面からして、奢ってあげなくもなかったが、彼のその調子のいいことが癇に障ったの拒否した。
帰り際、彼に最後質問をした。
「ねぇ、岸峰くんと鞘本さんたちは同じ中学校なの?」と単純な質問だった。
話の流れ的にもたぶん同じ卒業生だといことが分かるが、一応聞いておく。
「あぁ、そうだよ。僕と彼女たちは同じさ」と彼は普通に話した。




