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彼女がいなくなる頃に  作者: 春と芒
37/44

ep.37 *

 旧校舎を後にする足で帰路に就くと、彼も後追いするように付いてくる。しかし、距離を置いている。私と彼の歩幅は違ってくる。

 寄っては離れてを繰り返す。彼が調整しているが、どうせだったら私を抜かして先に行けばいいのにと思ってしまうが、それでも彼は先んじて歩くことはない。

 まるでストーカーにでも追いかけ回されているようで心が落ち着かない。

 私は堪忍袋の緒を切らして後ろを振り迎えった。

「行くなら先に行ってくれないかな」

 とどめの一撃を刺すようなことはしなかったが、それでも強い当たりで喋ったことには間違いなく、それに対して彼はおどついているようだった。

「話があるんだ」と突拍子に彼は私に話した。

 話と私は首を傾げると同時に疑ってかかった。今の彼と話すようなことはなかった思っていたのだが、しかし、岸峰くんは何かしらの腹中に隠していることがあるかのように、言いあぐねているようで仕方なく傾聴することにした。

 彼は小走りで私の隣へと並んで話とやらを語り始めた。

「月見里は四十川の家族関係まで引き合いにだしてきた」

「そんなことを言っていたわね」と私は肯く。

「一応、その件は僕に一任してくれないか」

 私は思わず、息を殺すように黙ってしまった。彼を侮っていたために、この発言が意外だったのかも知れない。

「一任って。あなた一人でできることなの」

 彼は頼りなく頷いてみせた。

 そこまでの自信があるなら、別には私がとやかく言う必要はないかもしれない。それに二人三人と四十川さんの家に押し寄せるよりも、一人で行ったほうが配慮といった面で良いのかも知れなと一人承知した。

「じゃあ、私はその件に口出しはしないは」と一旦区切ってから、私は念のために釘を差すように、くれぐれも粗相がないようにと念押ししておく。

「無論、僕だって四十川の死の真相を解き明かす身以前に、彼女の死に心傷ている身だ。

 邪険なことをするつもりは毛頭ないよ」

「ならいいわ」と私はどうやら彼への心配は杞憂で終わった。

 拙い会話はすぐさま終わって、彼と並行しながら歩いているということが少し気まづくなる。

「一応聞くけど、明日から本格始動でいいんだよね」と彼は突発的話題を振った。

 明日から本格始動ということはクラスメイトたちに聞き込みをすることを差しているのだろうと、察しはついてが確認のために訊き直す。

「クラスメイトの女子たちに聞き込みをすることで合ってるよね」

 彼は頷いた。

「まぁ、段取りはないけど訊く人はすでに決まってる」

「段取りはないの!」と彼は驚愕というか愕然といった感じで私を見つめている。なんとも肩すかしを食らったような表情であった。

「機会主義とでもいえばいいのかしら。とにかく隙あれば狙う」

 私は自分の腹積もりを話した。

「機会主義って、そんな功を奏すとは限らないじゃないか」

 別に、功を奏すかどうかは結果的に考えればいいのであって、それでくずついていたら進展なんてみられないじゃない。それに岸峰くんだって常に機会主義に準じていたじゃないと御託を頭の中で浮かべるが、あえて口にはしないが反論した。

「理詰めで行動していたら、対応力に欠けるわ」

「だとしても横暴が過ぎる気がする」

 それを貴様がいうか―――。あそこまで藤沢くんやらに迷惑をかけておきながらの、その言動は頭に昇るものがある。

騎虎(きこ)の勢いよ。もはや流れに乗じて攻略するのが得策。

 それにちまちまと理屈を毎回形成していくのは回り道といよりも道草を食うようなものだよ」

 そうは言われても困るといったような表情で彼は思考をを頑なに変えようとはしない。

「まぁ、見てなさい。どうせあなたは後ろで隠者みたいなものなんだから」

「そうだね」と苦汁をなめるように彼も了承した。しかし、今の彼ではそれ以外の方法はない。

 あるとすれば彼自信に変化をもたらすことが必要だろう。

 彼は話すべきことを話し終えたのか。挨拶を交わした後に、私を置き去りにするように私の下から去るように駅へと向かっていった。

 

 作戦決行といいたいところだが、私は頭よりも意志で動く人間だ。だから作戦決行ではなく、

為せば成る、―――さぁ、私の直感を信じて直情径行だと言い聞かせる。どこか足取りは軽く感じた。

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