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彼女がいなくなる頃に  作者: 春と芒
36/44

ep.36 ep.35の続き

 月見里くんはいつものように自室のように広々と使っている部屋で一人キャンパスと向き合っている。

「まだ、できないのね」

「そうだね。これを完成するのにはもしかしたら、卒業後になるかもしれない」と彼は明後日の方向をむきながら話した。

 卒業後もこの真っ白なキャンパスと向き合うという意気は、彼は芸術系の方を専攻とするのだろうか。

「大学は決まってるの」と私は話的に少し飛躍したことを訊いた。

「まだだよ。学校選びには余念をかけるつもりはないけど、それでも自分が行きたい大学は決まってないよ」

 そうと私は小さくつぶやいた。彼も未だ定まっていないことにどこか安心感を覚えた。

「西原はそんな、せっかちだったっか」

 あとを追うようにして、岸峰くんが登場した。

 別にとそっぽを向いた。

「やぁ、岸峰」と月見里くんは彼を名指しした。私のことは呼ばなかったくせに、同性同士は藹々としいるのが少し気に食わなかった。

「毎度のごとく経過報告をしにきた」

「そうか。いい加減、君たちのために席を用意してあげないとこちらが不義理みたいで、面目がたたないな」など彼は独り言のようにぼやいた。が、それの言葉を掬いあげるように岸峰くんが言葉を足した。

「別に、構わないよ。長話ってわけでもないんだ」 

 岸峰くんは気を使うなと宥めた。

「で、話は戻るんだが――――」と彼は一連の経過報告を行った。

 滔々と続く会話から結構親密な関係へと進展していることが伺えた。まさに仲良しこよしで取り組んでいるように思えるほど、彼らは共存関係は定着化している。

「最後に西原が復活しました」と岸峰くんが報告をするが、それだとまるで私が一旦死んでしまったみたいで、少し気に障る表現であったが言葉の綾というものだろう。

「そこにいるのは西原さん、その人ってことだね」

「そうよ」と私はようやく埋もれた中から声を上げるようにして、彼らの会話に介入した。

「そうか。それは何よりだよ。岸峰くんが結構心配しているようすだったからね」

 月見里くんのその言葉に動揺するように、岸峰くんが慌てて否定した。彼のその行動は月見里くんの言葉が不本意であるかのように示すようだが、実際は隠していたことをバラされて恥ずかしいといったところだろう。

 そうと頭のなかで内容が定まらず、口から漏らしていた。私も少しその言葉には恍惚としてしまっていたようだ。

「男子は攻め切ったということなら、次はやはり女子の視点かな」などと前もって作っておいたチャートに沿ったようなことを言う。

「そうだな。あとはクラスメイトの女子だな」と岸峰くんは軽口をたたくが、臆病風を吹かしていた分、彼のその言葉が虚勢であることは分かっていた。それに加えて彼はどこか他人事のように簡単に言ってくれる。

「かなり息巻いてるわね」と私が野次を飛ばすと、彼は少しひっこんだようにして、

「そうだね」と縮小した感じになって話した。

 やはり、上っ面だけだったようだ。

「それでクラスの聞き込みを終えたら、次は決めているのかい」と月見里くんが振り出した質問には悪戦苦闘するように、岸峰くんは押し黙ってしまった。

 彼はこの後のことを考えていないのだから、仕方がないだろう。それに月見里くんはそのために強力してもらっている関係に近い。

「あとは教師陣から攻めてみるか、四十川さんの知り合いを渡ってみるほかないかな」と私はかれに代わって述べた。

「それとできれば、家族に聞き込めたら言うことなしだけど・・・」と月見里くんは懸念するようにして話す。

 確かにそこまでやれば、情報収集の相手をコンプリートする形となって、刑事顔負けの捜査力といってもいいかもしれない。しかし、家族ともなると学校がいすぎて我々のような一学生が手に及んでいいのか分からなくもなく、月見里くんが懸念事項として捉えるのも納得がいく。

「とりあえず、直近の問題から片づけていこうか」とやはり、月見里くんの頭の構想ではしっかりとしたロードマッピングがなされていて、その手順通りにことをはこばせようとしているようだった。

「教師陣からも情報を貰うために前もって作戦を練る必要があるから、今後はそれと一緒に信仰させていく」と月見里くんがやっていることはある種、アドバイザーでありコンサルタントのような仕事のようで、実際私たちが動かされているだけで彼は事柄の整理をしているにすぎない。

 しかし、三人寄れば文殊だというのだから、今のこの協力関係はこれが終わるまで壊れることはないだろう。

「じゃあ、今回の報告会は終了」と最後の締めだけに岸峰くんが声を上げた。

 さっきまで静かだった分、少しやかましく思えた。

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