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彼女がいなくなる頃に  作者: 春と芒
35/44

ep.35 *

 西日が当たっていると葉っぱに乱反射して教室にはねっ返ってくるようにして、木漏れ日の影がたうたうようにして教室の中で揺り籠のようにして揺れている。

 淡々と浪曲のように流れる教師の言葉はまるで左右に流れ出てしまうように、教師の発言が取り留めなく聞こえてしまう。

 眠い。その言葉に尽きる。

 口を開いて大きく息をした。頭の中にあったものが出ていくような喪失感とけだるさがいっぺんに押し寄せてくる。ぐったりと前のめりになってしまう。頭が机に吸い付けられるようにして、稲穂が頭を垂れる。

 いつも通りの調子でないと感ずくが、それでもこの退屈感に押しつぶされそうになってしまう。

 顔だけを動かしてあたりを見回すと、あたりにぽつぽつと授業から脱落してしまった生徒が見受けられる。

 私もそれに釣られるようにして、睡魔へといざなわれる。

 眠い。頭が回らないせいで、今の自分を否定する言葉が出てこない。むしろ、肯定的に体が項垂れ始める。―――ダメだ、寝ちゃいそう。踏ん切りが保ちそうにない。

 ―――――――――。

 ふわっとした浮遊感で私は目を覚ました。

 どれくらいだろうか。途中まできこえていた教師の声が突然プツリと切れてから、一体どれくらいたっただろうか。二度寝に入りたくなるような、半端な覚醒状態にいる私はいったん取り戻した意識で黒板を見ると、あまり話は進んでいないのか。黒板の文字は一切変化はなかった。

 安堵してしまったのか私は再び、睡魔に取り込まれるようにして―――――――――。

 チャイムが鳴った。私はようやく意識を取り留めて自分が盛大に眠りこけていたことに客観的に気づいた。

 黒板に書かれた。内容から察するに結構進んでしまったようだった。

 号令がかかって、けだるさでのしかかった上半身を持ち上げるようにして腰を上げて、教壇に向かって礼をした。

 六時間目をどうにか乗り越えた。あとは帰るだけとのんきな考えでありたいが、実際はそうはいかないだろう。なんせ岸峰くんが私に諮問(しもん)してくるからだ。

 そんなことを考えていたからこそ、私はこうやって無駄に頭を使う羽目になってしまった。

 

 蝉が鳴き始めているのか、渡り廊下にたつと蝉の鳴き声が遠くから聞こえてくる。まだ、本場の時期ではないために騒音とまではいかないが、それでもこの声を聞くと私は熱さをましたように熱が身体にこもる。

「最近、暑いな」ととなりで話す。岸峰くんは胸襟の部分をパタパタと仰いで、胸元に空気を入れている。

「本当に、暑い」

 焼けるような日中の日差しとは違って、西日の日は室内にこもって熱の残滓が充満して肌に浸透するように熱が食い込んでくる。この暑さは風がそよいでも消えそうにはなさそうだ。

「で、さっそくだけど訊いてもいい」

 私は彼の他人行儀な部分に溜息をこぼしてから、

「まぁ、一応目処はつけているわ」

「なら、是非」と私から享受されることを待ち望んでいるようであったけど、私はそうはいかなかった。

 彼のこの消極的な部分を是が非でも直してもらいたいからである。頼りきることは美徳でもないし、ずっと後ろに彼がいられることも嫌なのである。

「あなたも人頼りではなく、自力でなんとかすることを考えないわけ」

 彼はことばを詰まらせた。

「僕は頭を働かせるから」とはぐらかして逃げようとする。

「文殊の知恵にするんでしょ、なら私も手伝うからあなたも手伝いなさい」と私は彼を強迫した。

「えっと」と彼は苦笑いを浮かべて詰め寄る私から離れようとしている。

 彼は窓際まで後退してついに壁に追突した。交替する一歩はなくなり、彼は困り果ててかこの暑さでか脂汗をかいている。

「ねぇ、どうなの」と最後の一手というように最後の一歩を詰め寄る。さぁ、答えなさいな。否応を与えたのだから是非は与えたつもりはない。

「善処するよ・・・」とたどたどしく答えた。良い方向に気持ちをもっていくだけでも前進と捉えるべきか。それとも善処だけに停留することになってしまうと考えることもできなくはない。

「どちらにしろ、月見里くんの意見を訊いてからね」

 私は一、二歩彼から離れた。彼は彼を撫でおろした。振り向いて足早に旧校舎へと向かった。

 頭が熱い。体が火照っているように体の血が滾っている。それに帯同するように心拍が跳ね上がる。心の臓がバクバクと跳ね上がる。気持ちの高ぶっているわけではない。

 男の人とあんなに接近してしまったからだろうか。妙な心持である。

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