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彼女がいなくなる頃に  作者: 春と芒
34/44

ep.34 *

 教室に着くと、いつものように私は一人にも言葉を交わさずに席に着いた。

 一通りの支度を終えて、辺りを見回すとまだに岸峰くんはクラスに到着していないようすだ。

 彼が来る前に誰から情報を取りに行くか横目で見回している。あまりにも挙動がおかしいとそれはそれで彼女たちに怪しまれて後々面倒になるために、こっそりと行うのが定石となった。

 しかし、どこもみんな固まるようにして会話をしている。その境界は男子よりも明確に分かれている。境界が戦中の国境間というように、目に見えてピリピリとしているわけでもないが、どこかここからここまでと子供じみたようにして自分たちが関わり合わないようにしている。

 それの線を行き来するものもいるが、それはこのクラスでは滅多にない存在だ。

「よう!西原」と声を掛けられて後ろを振り向くと、岸峰くんがカバンを背負いながら私に手を挙げていた。

「馴れ合いは不要よ」

「冷めてるなぁ」と平坦な声音でいうが、口調はどこか藤沢くんみたいというか岸峰くんは彼に影響を及ぼしたのだろうか。けれどそれは彼も同様のように体裁的な行為だったようだということは分かっている。

「それでどうするの」

 私は一瞥して辺りを見回すが、なんとも言えないというのが私の視界で捉えた情報だった。

「女子をひとりで狙うのは難しそうね」と話していると、会話に介入してくるふらちな輩が迫ってくる。

「何を話してるの。お二人で」とにやついた笑み。私はこういった見るからに薄情そうな男は好けない。むしろ、変なものがつかない内に縁を断つほどでもある。

 それに名前は西園寺といっただろうか。西園寺亮、地元の中学の時では何かと優秀だったと聞くが彼を見てみるにそう思い当たるような雰囲気ではない。凡俗な人間。ある種、岸峰くんと同様にも思えるが、それを口にしてしまったら彼は怒るだろうか。

「変人タック結成?」などとひょうきんな口調に、変人扱い。私は血相をかきそうになる。

「たんなる世間話さ」と岸峰くんは扱いなれているのか。さらりと応えた。

 こんな彼が女子におびえているのだから変なものだ。

 そういえば、西園寺も少しこちらに興味を示しているところ協力してもらうのも手かもしれないともったが、こんな上辺だけの人間を身近に置いておくのは忌避感を覚えることだろう。

「そうか、世間話ねぇ。楽しそうだけど」

 世間話がまるで楽しそうであってはいけないみたいな言いぶりだが、それは個人の勝手であろう。

「政治とか経済なんてニュース見てるっきりで、対して詳しくもないんだからそんなこと話しても面白くないでしょ」と私は言葉を足すが少し的外れだったかもしれない。だとしても場繋ぎの言葉にしては十分だろう。

「僕もニュースとかあんま見ないから当然といえば当然か」と一人でに得心してしてそっぽを向いて去ってしまった。まるで嵐のようにやってきたけど、嵐ほど荒らすことはしていかなかった。 

 西園寺くんが一体何をやりたいのか分かりかねる。

「それで話は戻るんだけど」と彼は話の内容を回帰させるが、

「分かってる。今日中には決めておく」と私は彼の言葉を遮るようにして喋った。

「そう・・・」と少しあっけにとられたようだったが、すぐに平然となって「分かった決まったら教えてくれ」と言ってから彼はカバンを背負い直すように肩を挙げてから自席へと移った。

 とはいったものの時間の制限を設けてしまった以上、それの範疇でことを決めなければならない。墓穴を掘ったといってもいい。しかし、どちらにしろことは早くやったほうが良さそうだから、むしろいいプレッシャーになったかもしれない。 

 相変わらずクラスメイトたちはトイレに行くにしたって、集団で動く。本当に学校にいるときに一人というのは私みたいに相手にされないような人か。それとも自閉的にしている人だ。

 しかし、後者はだいたい蜘蛛の糸のように救いの一手があったりするが、私みたいな人間にも最初はそれはあったが、拒めばそれは自ずと人は避けていく。いわば私は後者の後転型ということだ。

 それでも岸峰くんのような利害関係がある人間とはなんだかんだで付き合っているのだから、あながち私も一人ぼっちではないのかもれない。

「で、それで叛旗の工合はどれくらいなんの」とその声は聞こ覚えが合った。

 伏せていた目を上げると、再び私の目の前には西園寺が現れた。

「何?あなた構ってちゃんだったの?」と喧嘩腰に訊ねるが、彼は意にも介さず飄々としている。

「別に・・・」と憮然とした表情で応えた。「単に、あそこまで大胆なことをしたんだから大層なことをしてるんだろうなって思って・・・」

「別に、あなたが思っているほど大義なんってもなはなかったわ」 

 あっそうと彼は愛想をつかしたように冷たい返事した。

「ねぇ、あなたも手伝ってくれるの?」

「いやいや」と彼は手と首を振った。 

 私は大仰な否定の素振りに少し怪しんでしまった。

「面倒事は俺としても困るからな。できることなら他人でいたいところだけど」

「あなたが、それを望むなら私達に介入しないこと。それに尽きるわ」と助言を言い渡すと、

「左様ですか。なら僕は傍らで眺めることにするよ」と彼は座っていた席を立ち上がって、廊下へと颯爽と消えてしまった。

 その背を眺めていると、変人の汚名は返上という形でなすりつけてしまいたい。

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